64.ウバの挑発
ウバはクリスタルの足台に乗ったまま、黒い電球が嵌め込まれている古代カルニクスを翳して、詠唱を綴る。
するとネオン大阪全体のラディアントオアの光源の粒は黒い電球に吸い込まれる。
現実は色褪せている。
灰色の街の住み人の思想力も薄らぐ
「ルチア! ルチア! クセーソだよ、ルチアあああ!」。
クセーソティアソは狂気に堕ちている。幼馴染の女の子は光の檻に閉じ込まれている。意識がないようだ。
「あなたはクセソーティアソくんじゃないですか、結構怖い顔ですね、
せっかく来地球したお客さまにこんな扱いでよろしいすか」
ウバは悲しそうな顔をして、一旦白鉛鉱の古代カルニクスを下す。
「人間はもっと繊細な生き物と思って、まあいいっなああ。もう少し詳細を帯びた自己紹介しましょうか。
我がはあなた達、繊維獣と呼称している個体の一体、ウバと言います。正確にいうと、暗黒偵察調査員のリーダー、地球担当としています。
それでは、ご覧の通り、今取り込み中ですので、再開してもうよろしいでしょうか」
ウバは横柄にいびつとなった表情筋で相手を小ばかにしている。
「は?ふざけているなあお前、武器を下げろう!なんの答えにならない君の戯言、彼女を自由にして!」。
ソーラルは犬歯を向ける。
ライターズの応戦兵士のフォーメーションは引き締まる。
「ほらほら、頭が暑いやつ、ソーラル君だよね。ダメでしょう。我が確かに繊維獣の仲間ですよ。同じく概念を頂こうと!でも攻撃なんて、こんな蛮行するつもりがないですよ。だってこれは自然淘汰ですよ。勝手に自滅すればいいです。残りも少ないから」。
「さてネオンライト、お友達に聞かないのか? もスラムに戻れないのよおかわいそうに。でもあなたは会いたかったでしょう。持って来ましたもよおふふふ。あれ嬉しくない?帰しますか?スラムに?ふふ。」
「うばあああああ貴様ああああ!」
クセーソティアソはPartenona Fosを胸から抜け出す。
「クセーソ、挑発に乗るん。。!」
「 Parthenona Fos;杖、 Corona Australis , 電波の型:閃光流動柱!!!!!]
戦士から放つ光はウバに囲むバリアに吸収され、無となる。
「 やれやれ言葉より行動というのは霊長類としてきっともないじゃないですかあ? ふふ。
一つの質問です。蜂の巣はあなた達の住むところに自然に生えたら、どうしますか、素直に答えましょうよ、害虫を除去するでしょう。
それは当たり前、あなた達の生息領域だんもん。ただ火で一箇所を駆逐するより生存に必要なリソースを奪ったら。。そうそもそもその領域に生えないじゃ。同じ理論ですよお。だからラディアントエネルギー、我がたち想像できなかった変数を取り消して貰うよ。
残りの光をクレ。」
魔物の眼でウバはうんざりするような仕草でカルニクスをいじる。
空の紫は濃くなる。
「 きゃああああああああああ」
ルチアのうねり声が響く。
「やめろおおおおおお何をやってくれてるんだお前えええ」
ソーラルは飛び出る。
「 Parthenona Fos ;エンジン剣、Sagitta、紫外線の型、陽子風爆破!!!」
「止まれ、猿!]
反射の衝撃がひどい。
「嗚呼ああああ」
苦悶のルチアから黒い光のかけらが蒸発する。
「さてさて、ネオンライトはこの光の回路の中心部だよね。。
どう好きな人はどうなっているのか気になるうう?」
歪んだ空笑でウバは淡々と話す。
その後何もなかったように、空っぽな目で古代カルニクスを空に伸し上げて、作業に戻る。
「二人よ、挑発に乗らないで! アレは言葉を通じる相手ではない、戦略を立てるのよ)
ラックーサは男子に向かう。
「ライターズ、この、この生き物についてデータ一つもありません……」
クォーツリナはおろおろとした様子でアブレイズクロックのホログラムスクリーンをフールに広げててんてこ舞い指の動きをこなしている。
「クォーツリナさん、アダマンティヌースさん、一般兵、言うまでもなくここは危ないよ、それより遠隔のサポートの方が助かります、どうか避難を」
クセソーティアソの目に決意の炎が瞬く。
「頼む、ライターズ、俺たちはアブレイズクロックを通じて情報共有と援助させていただく。ただあの繊維獣はクセーソティアソくんを狙ってるのよ。ネオンライトの戦士、ルチアさん、助かる方法を考えるから絶対あの繊維獣の挑発に乗らないで」
アダマンティヌースは狼狽えたクォーツリナを無理やり連れていく。SUB地上兵はウバに銃口を向け、二人を護衛する。
「絶対許せないルチアの未来が奪われたんだよ!!!!」
クセーソティアソは歯軋りをする。
空中に跳躍するネオンライトの戦士は地面から離脱と着陸を繰り返す。
「ちくしょう、弱点ある、きっと」
「ソーラル危ないよ、みな、ひとまず、あの黒い玉、退けるわ」
「なんだよおお、これ、なぜ一般攻撃もろくに使えないんだあ」
砂利の庭に突き落とされた少年はぶつぶつ言う。
「あの宇宙人は残りの光を奪いたい目的あるのです、まず防御体勢を奪いましょう。クセーソくん、まず軽率な行動に移れず観察した方がいいと思います」
ラックーサは仲間が立ち上がるように手を貸す。
ウバは両手を古代カルニクスを上に翳したまま、無言不動だ。
黒い電球から放出された紫光が逆行する落雷のように空を走る。
紫光は直径何キロの円を描いている。百万馬力を牛耳る剛健さを要するのにウバは泰然自若だ。
うねり声を上げながら、ソーラルは立ち直れない。
「何やってるんだ、ソーラル、早く皆守るのだ」
クセソーティアソは手を握ったままその手の振動で仲間に激励を送ろうとする。
「だってあれは途方もない力に備えているでしょう、どうせ負けるんだったら、戦う意味はないよ……」
ソーラルは精神力を消耗しているようだ。
「何を言っているお前、さっきの闘気はどこのいったの、しっかりしろう!!」
バーシャン、ガシャン、パリンッ。
ネオン大阪公園に施されていたラディアントオアランプは次から次へと砕け散っている。
点状の光源でも、その数の多さもあり、市民の生活を許る薄暗い光は消え去る。
現場の光度は大幅に減じる。
「なんだこれ、、、これ以上視野不良になったら、攻撃されたまま抗うさえできないじゃない?」
ネオンライトは仲間の方に振り返ると、もの恐ろしさを語る二人の少女の顔面と遭遇する。
「も終わりだ、そもそもあたしたちは勝ち目がなかったんだ」
「そうスフェアリーちゃん、あの女の子も助けないし、私たちは何のため戦士なの……みっともない」
自信のなさと劣等感に襲われている二人は Parthenona Fosのグリップを緩くしている。
彼女たちを慰めたいが、言葉が普段より浮かばない。
ネオンの戦士は胸にポッカリ穴が空いた感覚に歯向う。
「皆、何を言っているんだ、あの宇宙人の言葉に信じるじゃないよ、私たちライターズはこの星の最後の光だよ、抗うのだ」
(だけどルチアは寝食の印もくらっているし、彼女にも家族から離れる未来しかないんだ)
薄々漂う断念のスピリット。
(光源が更に蝕まれている……だけど、ラディアントのエネルギーが本当であれば、物理的に攻撃しても俺たちの中に存在し続けるだろう、光って)
(埒が開かない)
「大分憮然たる顔していますね、ネオンライト?どうした? どうした?仲間さえ訝しむの?あなたたちの美徳は信じ切るふりするじゃなかったの?妄信するほどがないのかな?」
「黙れ、ウバ!!、君は何を知っているの?この惑星について?人類の感情について、少なくとも私たちはわざわざ別の惑星に穏便に暮らす種を侵略しようとしているわけない!!!、光が奪われたのに、今度何??思い通りにさせるもんか!!!」
「修繕光玲!!!!!!!」
「電波の型:閃光流動柱」
「くらええ」
(ちくしょう,なぜ光芒が詠唱に従わないのかよ)
詠唱を綴っても、鮮少の光芒はファノースに集まるが、発射する勢いがないようだ。