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キミがくれた  作者: 紗渚
52/57

準備室で、Ⅰ

.



朝は

意外と爽やかに迎えた




【52】





.




「奈乃、遅刻するわよ」



「はーい」




鏡の前で入念にチェックした前髪は完璧

制服にシワは見当たらない


鞄を持ち

部屋の扉を開けた




「あ…行ってきます、お兄ちゃん」




――――――パタン




新学期から一週間が過ぎた


あれからは私は普通に輝と話せるようになった

話す、といっても

少し挨拶を交わす程度


軽く頭を下げて

「おはよう」

「じゃあね」

そう言うだけ


言うだけなんだ

私は決して目を見なかった


きっと輝もそうだろう

でも、それを確めることはできない


理由なんて

考えたくもない




「奈〜乃香!!」


「華!おはよう、熱下がったんだね、よかった」




そう言って笑うと

華は不思議そうに首を傾げている

私もそれに首を傾げる




「…華?」



「奈乃香、」




そうして開きかけた言葉

しかし、華は

首を横にふって

なんでもないと

笑って言った




「遅刻するで!!」



「あ、うん!待って」




――――――――

――――――

―――


授業も残り半分になった

次の時間は国語だ

いつものように

国語準備室にむかう


そのために

立ち上がった




「奈乃香、どっか行くん?もうあと10分で授業始まるで?」



「私、係だし、さっき集めた宿題も出さなきゃ」



「…………宿題?」




その顔は…

華は急いで自分の席に戻ってノートを取り出している


完全にわすれていたようだ

「頑張って」と一言残して

教室をでた




――コンコン




「失礼しまぁす…」




古く重い扉を開けて

ゆっくりと頭だけ入れる

少し埃っぽい準備室は

古い本や資料が沢山


またこの中に先生は埋もれているのだろう




「先生?どこですか?」




キョロキョロと探す

すると足元から

『ガサ…』

と小さな音がした


今日はここかと

目の前の本の山を見た

明らかに下の方がモソモソと動いている




「大丈夫ですか?」



一つずつ本をどけていく

すると中からでてきた

その人物は予想外の人で




「ぶはっ!」



「み、海晴!?」



急いで他の本もどけた



「あー死ぬかと思った…」



「どうしてこんな所…」




海晴は立ち上がると

制服についた埃を払う

そして私を見た




「え?…あぁ、越後先生が出張でいないからって準備室の整理頼まれたのよ。まったく…そのせいでボロボロよ…最悪だわ」




「はぁ…」と

ため息をついた


越後先生が出張…って




「えぇ!?」



「な、なによ」



「私…国語係で…」



「あら、つまり無駄足だったってこと?」




こくりと頷くと

頭上から鼻で笑っている

海晴の声がした




「じゃぁ…自習かなぁ…帰って皆に伝えないと…」



「じゃぁ、早くいった方がいいわよ。ほら」




そう言って

腕時計をみせてきた

それを覗くと

残り3分




「あ、じゃぁ行くね。海晴は?授業」



「いいのよ、ここにいるって伝えてあるから」




ふふ、と静かに笑う

そんな海晴は同い年であることが何かの間違えなんじゃないかと思えた




「じゃね、」




また古く重い扉に手をかけ

ゆっくりと開けた


静かに閉めて

廊下を走った




「奈乃香ちゃんは、いい娘だね…」




――――――――――

―――――――

――――


教室に帰って

自習の事を伝えると

皆、飛んで跳ねて喜んだ




「自習か…奈乃香!じゃぁ喋って…」



「華は宿題をおわらせるんでしょ?」



「………はい」




宿題を教えていると

俊哉が近くに寄ってきた




「なんやの俊哉?」



「奈乃香」



「おい無視か私は無視か」



「…なに?」




俊哉はニッコリと笑った

そして一言




「デート、しない?」










.









【next】


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