拒絶して、
【48】―奈side-
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心地よい風
漆黒に染まる
海と、空
静かに音をたてる波
…今、何が起きている?
ただ、唇に暖かい感触
抱きしめられた温もり
目の前には
幼なじみの顔
…理解した時
”イヤだ”
…そうは思わなくて
ただ、この温もりを
もっと感じていたくて
背中に腕をまわして
ゆっくりと目を閉じた
「…ん…」
離れた唇は
まだその感触が残っている
そっと指で触れて
とたんに顔が熱くなる
目の前にあった彼の顔は
暗く、沈んでいた
―何故、
―そんな顔をするの?
「…ごめん…」
離れた身体
彼はゆっくりと歩き出した
―何故、謝るの?
―悪いことをしたから?
―悪い事って?
―私に触れたこと?
頭の中で交差する
ぐるぐると旋回する
分からないことが多すぎて
訳が分からなくなる
いつの間にか
彼はどこにもいなくて
それがとてつもなく
私を不安にさせて
ぐちゃぐちゃになって
泣いた
「…わかんない…ッ、わかん、ないよ…ッ」
泣いたら
また彼が来てくれる
気がしたから
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―輝side―
「ハァッ…」
―――――ザッ
自然と足が進む
段々と速くなる
「訳わかんねぇ…」
自分の行動が、
彼女の行動が、
自分で自分が
わからなかった
あんな事をすれば
拒絶されると
分かっていた筈だ
なら何故?
彼女は拒絶しなかった
俺を受け止めた
それはどうしてだ
こんなグズグズとした
感情を捨てたかったから、
だから
拒絶されるようなことを
したのに…
なのに彼女は、
俺を受け止め、た
それはどうしてなんだよ
余計に分からなくなる
彼女が好きなのは
俺じゃない
アイツなのに、
なのに、
もしかしたら
なんて自惚れている
ダメだ
俺じゃ、
ダメなんだ
いっその事
拒絶してほしかった
いっその事
嫌ってほしかった
そうすれば
こんな感情捨てられた
余計に膨らむ
"好き"という感情は、
どうやっても
俺の中から
出ていくことは
ないんだ
決して
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