濡れた、
【45】―輝side―
.
「ハァ…ハァ…」
どれ位走っただろうか
既に太陽は沈み
あたりは暗く
月明かりに照らされている
そんな中
どこに行ったか
分からない彼女を探す
今日、この日は
彼女にとって
そして俺にとっても大切な日なんだ
なのに、
その事を俺は忘れていて
いつも必ず
2人でいたこの日に
ずっと
彼女を一人にしていた
それが
どれだけ
彼女にとって辛かったか
分かるんだ
分かっているんだ
分かっているのに
「カノン…どこだ…ッ」
どこにいる?
彼女ならどこに行く?
何故、分からない
「……あ…!」
そうだ、海だ
カノンはずっと
海を眺めていた
どこまでもつづく青を
ずっと見つめていた
―――ザッ
走る足の向きを変え、
さっきよりも速く走る
速く、もっと速く
―――彼女のもとへ
たどり着いた
その場所は
夜の海だ
真っ暗な辺りに
それに負けじと
月の光に反映した海は
キラキラと光っていた
俺は息を整えてから
ゆっくりと
砂浜におりていった
―――ザッ、ザッ
彼女はどこにいる?
もしかしたら俺の勘違いだったのだろうか
…いや
勘違いなどではなかった
彼女は昨日と同じ場所で
同じように座り
同じように海を眺めていた
「…………」
俺は
話しかけることができず
暫く彼女を
遠目で見つめていた
それを遮ったのは
俺ではなく
誰でもない彼女だった
「……輝?」
「…カノン」
暗い中でもよくわかる
まっすぐな瞳で俺を見る
俺はつい
それから目をそらした
そしてゆっくりと
彼女の横に座る
「…ごめん、俺…」
「…?」
わからない
というような顔の彼女に
「今日…」と言えば
気にしてないと
小さく微笑み返して
「いいの、…」
「でも…俺が…」
「輝のせいじゃないよ」
「…カノン…違うよ…」
思い出すのも
辛いはずなのに
彼女は…
ずっと俺に微笑みかける
しかしその顔は
俺には辛いだけで…
―やめてくれ
―そんな顔は見たくない
―いつだって
―本物の笑顔で
―いてくれよ
気がつけば俺は
彼女を引き寄せ
肩に顔を押しつけるように
抱きしめていた
それに彼女は
驚いたように動かなくなり
やがて肩を震わせた
肩が濡れていく
感触がした
「お兄ちゃん…ッ」
【next】
お久し振りですね
本当に
お久し振りですね
何週間経ったんでしょうか
二週位ですかね?
スイマセン…
でも今度は期末が近いです
殺す気ですよね
でわまた
次回
Sana