巡る、
【43】-奈side-
輝と無事に会話ができるようになって
ホッとした私。
その時私の携帯が震えた
出てみると俊哉で
『元気か』と聞かれたので素直に
「元気だよ。それに楽しいし」と答えた
少しぎこちない会話が続き
数秒の間が空いたあと
『また連絡する』
そう言って
電話はきれた
私は携帯を閉じて
輝に視線を戻そうとした
「あれ…?」
いつの間にか
輝はそこからいなくなっていた
それに私は
これでもかという位の不安を覚えた
「………輝」
―――――――――――――――――――――
そのあとお屋敷の人が昼食を持ってきてくれ
私達はそれを食べた
華は昼食を食べたあとに
また海で遊ぼうと言った
深井君も輝もそれに笑顔で答え
私も小さく頷いた
―――――――――――――――――――――
空はもう茜色だ
昼間の鮮やかだった海も
空と同じ茜色
私達はお屋敷につき
今日の話をしていた
「楽しかったなぁ!」
「そうだね」
「でも美倉サン海ばっか眺めてあんま遊んでなかったよね?」
「え!?そんなこと…」
嘘。
そのとうりだ
皆が海で遊んでいるとき
私はずっと海の向こう側をずっと見続けていた
水着を忘れた
それも理由の一つだけど
本当の理由は…
「あれ?そういや輝は?」
「ん?そういやおれへんなぁ?」
「私、見てくるね」
「頼むよ。美倉サン」
そうして
私は大広間をでて
長い階段を3つ上がり
一番奥から二番目の扉をノックした
「…輝?」
具合でも悪くなったのだろうか。
…返事がないと焦ったが
そのあとすぐに返事がきこえてきた
「カノン…?」
「輝、大丈夫?」
「ん?…うん」
「よかった…もうお風呂入れるって」
「あ、うん。分かった」
扉ごしの会話
一瞬ドアノブに手を掛けようとしたが
何故かその手は動かない
扉ごしの会話は変わらない
輝がでてくる様子もない
いつもの笑顔が見たい
見たい…のに、
目の前の扉は開かない
それはまるで
輝に
「入ってくるな」
そう言われているようで
怖かったんだ
「じゃ、じゃぁまた後でね」
「………うん」
私はもしかしたら扉が開くかもしれない
そう思って開かない扉の前で立ち尽くしていた
一つ小さなため息を漏らして
また長い廊下を歩きだした
振り向いても
やはり誰もいなくて
寂しくなる
私は、走った
結局
1日目の夜に
輝を見かけることはなかった
――――――――――――――――――――――――――――――――
-notside-
三上輝は部屋から出ようとしなかった
あの時、あの瞬間
輝は何を思ったのだろうか
携帯が鳴り、
彼女の目線は彼になく
その目に自分は映っていなかった
それがどのような感覚なのか
それは彼にしか分からないだろう
彼が逃げ出したのは
無意識だった
彼が気がついた時
その眺めは鮮やかな海でも、彼女の横顔でもなく
見慣れない、高級そうな天井
「……なにしてんだろ…俺」
いつもの自分を取り戻せていた
そんなことはほんの一瞬で
すぐに心が乱されてしまった
彼女の口から「俊哉」と
その一言が漏れるだけで
逃げ出したくなる
「しかも、あれはないよなー…」
彼女が輝の部屋に来たのだ
しかも輝を心配して
しかし輝は顔も出さずに返事をした
それは
きっと扉を開けたら
なにかが壊れてしまう
そんな気がしたのだろう
「カノン…」
―手を、繋ぎたい
―抱きしめたい
―誰にも、渡したくない
そんな独占欲が輝の身体を巡っていく
グルグルグルグル
止まる気配のないその想いは
一体どこに向かっているのだろうか
【next】
お久しぶりです
どもです。ホントどもです。
テストが近いですよ―。
え?あ、ハイ
月曜日からです(←死
それさえ終われば…
それさえ…!
では、またお会いしましょう
Sana