嫉妬、
【31】-奈side-
今日もいつもの道を歩き学校に向かう
昨日ハッキリと見えていた月。それが今の雲一つない青空を物語っていた
「いい天気だな…」
夏とは思えない穏やかな暖かさが眠気を覚えさせる
欠伸を一つして時計に目をやると、
「ヤバイ…」
遅刻まで、残り5分
――――――――
「おはようッ!」
――キーンコーン…
「美倉サンおはよ」
「ギリギリセーフやん」
ほぼチャイムと同時に扉を開けた
そこに先生の姿はまだなくホッと胸を撫でおろす
「でも、残念やったなぁ奈乃香。」
「へ?なんで?」
鞄を机の横にかけ、華に聞いた。残念というよりも、今の私はラッキーすぎると思う
「今からみんなで下校だよ。美倉サン」
「……………え?」
まだ一時間目も始まってないのに下校?
「なんか、まぁ色々あったらしいよ」
「色々?」
「そこが微妙やねん。色々って何やねん」
華がハッキリとしない理由にイライラし始めている
すると深井くんがポツリと言った
「ま、アイツの事情でしょ?理由が曖昧なのは」
「アイツ?」
「あぁ、アイツか…」
「ねぇ、アイツって誰?」
疑問に思った私が聞くと
深井くんはニッコリとわらって
「美倉サンはわからなくていいんだよ。」
そう言った。
(………………?)
―――――――――
――――――
――
(あんなに走った意味は…なんだったの…)
そんな事を考えながら下駄箱に向かう
「奈乃香」
ふと声をかけられ振り向いてみればそこには俊哉の顔があった
「……俊哉、どしたの?」
彼が口にした言葉は意外で意外すぎた
「一緒に帰ろう」
「え……」
夢でも見てるんじゃないか
本気でそう思うほど信じられなかった
―輝side
「もう帰ったかな…」
俺は今日も一緒に帰ろうと彼女を探していた
すぐに教室に向かおうとしたが
それはかなわず、流石に帰ってしまったかと諦めかけていた
(流石に二日連続はないかぁ…)
腕を頭の後ろに回して階段を降りていると、先輩に話しかけられた。
「輝君、今帰り?」
「あ、そッス」
「じゃぁ一緒に帰りましょうよ」
「え…」
返事に困った
いくら奈乃香がいなかったからと言って先輩と帰ってしまっていいのだろうか
(俺的には浮気に…イヤ別に付き合っている訳じゃねぇし浮気には…イヤでも)
少し考えた結果
やっぱり奈乃香の代わりで先輩と帰るなんて駄目だという結果に至った
「あのッ!」
意を決して先輩に断ろうとしたところで
フイと下駄箱に目をやった
するとそこには奈乃香が…俊哉といた
一瞬、奈乃香と目が合った気がしたが直ぐに外れ
奈乃香は俊哉と下駄箱の扉をくぐり抜けた
柔らかい笑顔を浮かべて
「輝君?」
「…いいッスよ」
「え?」
「帰りましょ、先輩」
つくりものの笑顔を先輩に向けて言うと先輩は少し頬を紅くした
こういう時、いつもの自分なら罪悪感を感じていた
それが、今はどうだろうか
罪悪感など全く感じず
それとは違ったものが胸の中で渦巻いている
切ないような自重のような
自分では抑えられない気持ちがモヤモヤと渦巻く
「結局、俺はアイツに勝てないのか…」
「え?何か言った?」
「いえ。なんでも」
隣に先輩が一緒にいるというのに何かがポッカリと空いた気分だ。
さっきから先輩がなにかを話している
俺はそれに笑顔を浮かべ相槌を打つが話はなにも聞こえないし入ってこない
「あ、あれ宮城くん?」
「………!」
公園の横を通る時、先輩がふと言った
俺は小さく肩をゆらしたが冷静に横目で見た
「…………」
そこには楽しそうに仲睦まじく会話をしている奈乃香とアイツ。
(なんだ…もう、俺はいらないんだ)
その場から早く逃げ出したくて早歩きをする
なにか先輩が言っていた気がするが流しておいた
やがて先輩送り。一人になる。
思い出すのは先程の二人
―何を話していた?
―何をしていた?
―彼女は笑顔だった?
―俺がいなくても?
―彼女にはアイツなのか?
―俺じゃ駄目なのか?
(………なんだこれ)
彼女が幸せなら自分はいいと言ったのは誰だ
むしろ彼女が笑顔なのが何故か嫌だった
俺は彼女の幸せを願えていないのか?
いや、そうじゃない
彼女を笑顔にしていたのがアイツだったからだ
(あぁ…これが)
―――嫉妬
―――独占欲
自分への嫌悪感を感じる
【next】
(結局、俺は、)
(彼女の幸せが)
(一番じゃないって事か?)
Sana