夕日の、
【26】
「輝…?」
そこにいたのは
私の幼なじみ
輝は私に右手を差し出し笑顔で言った
「一緒に帰ろう」
私が深井君に視線を戻すと
「バイバイ」の意味で少し微笑みながら小さく手をふっていた
「…うん」
少し戸惑いながらも
私は輝の右手に自分の左手を重ね、立ち上がった
「じゃぁまた明日ね」
「じゃね、美倉サン」
深井君に手を振りながら
図書館の扉をくぐる
輝の右手を握りながら
…握りながら?
「あっ……」
「え?どした?…」
手を握っていたのを忘れていた。
私は少し赤くなりながら輝にそれを教えると
また輝も赤くなって
「え…あっ…ごめんっ//」
照れたように頭を掻く
すると髪で隠れていた耳が真っ赤になり見えてきた
それを見たらなんだか私まで恥ずかしくなって
顔が熱くなっていくのを感じていた
多分、今
私達は誰が見ても顔が赤いとわかるほど真っ赤だろう
「ううん…大丈夫///」
二人共、一言も発しない、沈黙のまま歩く
「…………」
私は輝の少し後ろを歩く
でもこの距離感は何か心地好いような…
でも何か足りないような
絶妙な距離感だった
「カノン」
名前を呼ばれ
俯いていた顔をあげると、そこに輝の姿はなく
いつの間にか輝は隣にいた
「寂しいから」
「…うん」
彼が隣にいると
妙に安心して心地好い
さっきの距離感とは違う
夕方の太陽は眩しく朱色に世界を染める
その朱色は隣にいる彼をも朱色に染めていく
その朱色な横顔をじっと見つめていた
「あ……」
「…どうした?」
ふと思い出した
私の親友と…想い人
「華と…俊哉は…?」
「あぁ…俊哉くん…」
輝は俊哉の名前を口にだすと切なそうな顔をして
「帰ったよ…少し前」
「…そっか」
輝は前を向いていた顔を私に向け、やはり切なげな顔で私に聞いた
「やっぱり寂しい…?」
「え……?」
彼からの意外な言葉
「迎えに来たのが…俊哉くんじゃなくて俺で…」
「なんで…」
「だって…カノンは」
「…………」
その言葉の先は何故か彼の口からは聞きたくなかった
「俊哉が好きなんだろ?」
「………ぁ…」
彼は私の返事を聞かずに笑顔で私の前に立ち
そして
「三上輝!全力でカノンを応援します!!」
「…………ハイッ」
「……ハハッ…ダッセェ」
小さな声で何かを呟いた
大声での宣言のあと輝は私の隣に戻る
また心地好い沈黙に戻る
時よりぶつかる自分の左手と輝の右手がなんだかじれったい
(…あー…もう!!)
じれったくて勢いで繋いだ手は意外に冷たくて
小さいころよく手を繋いだ帰り道を思い出す
「…あのさ…」
「?」
ふと声がしたほうを見てみれば真っ赤になった顔
「輝…顔…赤い…」
「!!………夕日のせい」
夕日の光で朱色になった先程の顔よりも明らかに赤くなっている
そして、繋いだ手もなんだか熱くなってきている
それについ笑ってしまった
「なんで笑うんだよ!?」
「ごめッ…」
輝といるとさっきまで泣いていた事などすっかり忘れられた
照れた横顔は何も変わらず
その性格も昔のままだった
故に頼りたくなってくる
(頼ってもいいかな…?)
すると聞こえていたかのように輝は返事をした
「いーよ」
「…ありがとう」
俊哉への気持ちに揺らぎはまだあるけれど
輝がいたらなにがあっても大丈夫な気がする
そう
彼さえ居てくれれば
【next】
まるで死亡フラグッ!!
Sana