決め付ける、
【23】
「奈乃香が…好きだ」
真っ直ぐな瞳で俊哉は輝に言う
すると、輝は口元を少し上げ、ニヤリと笑い
「…言うと思った」
何もかも知っていたような顔
でも、
その表情は少し悲しげで
まるで、違う答えを期待していたような顔だった
「じゃぁ頑張れよ」
「三上は…いいのか?」
「何が?」
まるで自分の気持ちを抑えて消そうとするような返事
「奈乃香のこと…」
「言っただろ?俺、カノンを護りたいんだ」
「そりゃ、一番近くにいて護れるならいい」
「お前…」
私は輝の言葉に耳を集中させた
「でも、カノンの心に、俺はいないよ」
今日、何度目かの悲しげな笑顔を浮かべ
黙りこむ俊哉のもとを離れる
「あ、…」
近付いてくる
私はとっさに隠れる
でも
「で、華サンはいつまで隠れてるのかな」
「…………」
気付かれてた…
「聞いてたんだろ?」
「…ごめん」
私が謝ると輝は少し驚いて
「別に謝らなくても」
「…ごめんなさい」
再び謝ると輝は耐えられないかのように肩を震わせ笑っていた
「なっ…!?」
「ごめん、ごめん!」
笑いながら謝ってくる
「じゃぁ、俺のこと応援してよ。そしたら許す」
「は?でも、輝は諦めるんとちゃうんか?」
さっきの会話からして
明らかに輝は奈乃香のことを諦める、ということになるはず。
輝は悪戯っぽく笑って
「諦める、なんて一言も言ってないけど?」
「アンタって奴は…」
でも、その後すぐに輝の表情は少し悲しげになる
「カノンが、幸せになるには俺はいらない」
「輝…」
「悔しいけど、できるのは俊哉なんだ」
輝は俯き、拳を握りしめ
そして、その拳を胸にあて
「ただ、少しでも俺のことをみてほしい」
その言葉はまっすぐで
心から彼女のことを想っていることが伝わる
「協力…か」
「あぁ」
輝に奈乃香を幸せにすることはできない?
…そんなこと誰にもわからないのに
何故、決め付ける
【next】
Sana