ガチャン、
【19】
「三上…」
「こんにちは。俊哉くん」
まるで挑発するかのように輝は俊哉に挨拶する
「なんで…名前…」
そんな俊哉を無視して
越後先生に話をする
「こんにちは。忠サン」
「輝か。先生、だろ」
「気にすんなよ〜」
まだ私は輝の腕のなか
暖かい
触れてる部分が
妙に熱いのは…何故?
「それにしても美倉…」
先生が何かを言おうとして私の方をみる、
しかし次に聞こえた声は、
先生とは違う方向から聞こえた。
「三上と…付き合ってたんだな…」
「…俊、哉…?」
何か、
思い詰めた様な表情
何故、
そんな顔をするの
何故、
そんなに悲しそうなの
ヤメテ、
嫌な期待をしてしまう
ヤメテ、
もう叶わないと
自分に、
言い聞かせて来たのに
「俺…帰る…」
私から離れていく
その愛しかった背中
それを見たら
何かが壊れる
―――――ガチャン
音がする
決意が壊れていく
音がする
―――――ガチャン
―――――ガチャン
輝の腕から
その場に崩れる
「カノ………!?」
驚く彼が抱き寄せる
何かを必死に話す
彼の声は聞こえない
何も聞こえずに
ただ溢れる気持ちを
「好きッ………」
「カノン………」
溢れていく気持ち
止まらない、止まらない
「俊哉…」
輝は俊哉を追いかける様に走っていく
それまであった
彼の温もりさえもなくなってしまい、
余計に涙が溢れてくる
「俊哉………………
…………………輝ッ」
何故、
今、彼の名前もでた?
わからない
わからない
自分のことがわからない
「タスケテッ…」
また、何かが、壊れる
――――――ガチャン
【next】
Sana