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神様のボートの上で  作者: shiori


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第十三話「夜を駆ける」2

 隙を見せるわけにはいかない、何度も何度も勢いよく木刀を振り上げ男に向かってぶつかっていく。


 だが、何度仕掛けても突破できない、力量の差を見せつけられながら、確実に体力だけが奪われていく。


 限界が来る前に決着をつけないと・・・、段々と息が上がっていく。ここしばらくの特訓だけでは基礎体力の差まではどうにもできない。

    

 こちらは苦しい状況だが、男の方はまだまだ余裕があるようだった。


「段々と速度が落ちてきたなぁ!! そろそろ俺に歯向かったことを後悔させてやろうか!!」


 そういって男は私が怯んだところで脇腹のあたりに木刀で叩きつけた。


「うわぁぁぁぁ!!」


 鋭い痛みが脇腹を襲う、衝撃で倒れ掛かったところで男は静止するわけもなく背中に木刀を二度三度、勢いよく叩きつける。


「あああああっぁぁぁ!!! あぁああぁ・・・」


 私はたまらず大きな悲鳴を上げた。たまらず私は木刀を地面に落とす。猛烈な痛みのあまり立ち上がれない私の首根っこを男は掴んで身体を持ち上げる。

 抵抗しようにも、身体が付いて行かなかった。



「もうやめてっ!!!」



 裕子の悲鳴がフロアに木霊する。


「はっはっは!! やめてやんねぇよ!!!」


 男は歓喜の表情で左腕を木刀で思い切り叩いた。



「ぃああああっっ!!!!」



 あまりの激痛に悲鳴を上げて、私はそのままその場に倒れこんだ。左腕が腫れ上がり、そこから血が流れだす。意識を一瞬のうちに失いそうなほどの、今まで感じた事のない壮絶な痛みだった。


「もうやめて・・・、このままじゃちづるが死んじゃう・・・」


 裕子が泣きじゃくる、私は痛みで声も出せない、視界がぼやけていって、意識が朦朧としてくる。

 こんなところで倒れているわけにはいかないのに、身体がいうことを聞かない。


「もう終わりか・・・、やはり呆気なかったな」


 男が木刀で軽く倒れた体を叩きながら冷ややかな口調で言った。男はこの死闘の中、息を切らしている様子もなく、余裕の笑みを浮かべている。


 女子校生の身体では殺人鬼が相手には敵わない、力の差は歴然としていた。


「それじゃあ、殺す前にせっかくだから本当の真実ってやつを教えてやる」


 すでに抵抗できないほどに息も絶え絶えな私のことをじっと男は見下ろしている。その表情はいつにも増して真剣で冷酷さを秘めていた。



「お前らは色々と容疑者の父親の容疑を晴らすのために嗅ぎまわっていたようだが、残念だが麻生一家三人を殺したのは俺なんだ」



 男は冷たい口調で言い捨てた。痛みのあまり、一瞬何を言ったのかわからなかったが、次第にその意味を理解したその時、衝撃が走った。


「お前が・・・、雫さんやその両親を・・・」


 私は男の方を睨みつけ、絞り出すように言葉を紡いだ。


「やっぱりそうなんだ・・・、なんて酷いことを、ちづるのお父さんはあんたに利用されただけ・・・」


 衝撃を受けているのは裕子も同じだった。


「そういうこった、俺が手早く三人を殺した後で、薬で眠らせておいたあの男に血液のついたままのナイフを握らせて玄関に放置した、そうして見事に殺人犯になり替わってもらったわけだ。

 目撃者もいなければ、俺が指紋を残さないようにしておけば誰も疑うことなく目の前で血の付いたナイフを持った男を犯人だと思うはずだ」


 あれだけ苦労してこれまで捜査してきたのに・・・、そんな単純な手口でお父さんが犯人に仕立て上げられてしまうなんて・・・。


「報道がエスカレートすれば、自ずと責任の所在が求められる。避けようのないことだよ、諦めな、もう容疑者の容疑を晴らすなんてことは出来ないってな」


 今、目の前に真犯人がいる。こいつが元凶、三人を殺した殺人鬼。

 なんてあっさりとした真実、こんな奴のためにどれだけみんなが苦労してきたか。


 もうダメだ、それを知ったしまったら、もうこのまま許しておくわけにはいかない、なんとしても放ってはおけない、この男だけはこの場で何とかしなければ。


 私は最後の力を振り絞って再度立ち上がり、木刀を右手に握る。



「貴様だけは許さない、お父さんの分も、三人の分もきっちり借りを返えさせてもらう」


「そうか、そんなに憎いか、それでいい、その目だ、その憎しみに満ちた目が欲しかったんだ。さぁ、かかってこい!! 気の済むまで相手をしてやるよ!!」


 男の表情は優越感に(まみ)れ、立ち上がった私の姿を見て、愉快さをアピールしているかのようだった。


「絶対に許さない、みんなの無念をここで思い知らせてやるよ!!」


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