会話25.初体験
「ただいまー、オウカー」
「おう、おかえりアスカ。結構遅かったな」
「まぁねぇー、ちょーっと良いものを見ちゃったしー」
「ふーん? あ、野菜とかは下ごしらえしといたぞ。玉ねぎもみじん切りにしといた」
「わぁ、ありがとー。お手伝いできて偉いねぇオウカくん。ナデナデしてあげよう」
「やめろ、子供扱いするな。そしてホントに手を頭に乗せるな……」
「それでねぇ、オウカくーん。私はメモにカレー用の豚肉を買ってと書いたと思うんですけどー?」
「ギクッ……」
「なーんでカレー用のお肉が牛肉なのかなぁ? しかもちょっとお高い奴だよねぇコレ? 予算オーバーじゃないかなー?」
「えー……握る手に力を込める前に言い訳を聞いてください」
「はい、聞きましょう」
「アスカがビーフカレー好きだから、俺の小遣いから足して買いました」
「へ? なんで?」
「だってさー、告白断る時……お前も割と凹んでるだろ?」
「……怒れないヤツじゃん……抱きしめたくなる……。優しいなぁオウカは」
「んで? 告白の返事は断ったんでいいんだよな?」
「それがねオウカ! 私! 初体験しちゃった!!」
「ぶふっ?! 何された!! そいつ殺していいのか!? ぶっ殺して良いのか?!」
「違う違う! 今回ね、私がフラれたの!!」
「……は? なんで嬉しそう?」
「呼び出されて行ったらね、言われたの!」
「なんて?」
「『わざわざ来てくれてありがとう。断られるのは分かってて花野木さんに告白しようと思ってたんだけど……。実は俺、花野木さんへの想いはアイドルへの憧れと同じだったみたい。俺、恋愛的に好きな子は他にいるみたいです』って!」
「なんじゃそりゃ?」
「ビックリだよねー。それで、ごめんなさいって謝られて、即座にその子に告白しに行ったんだよ!」
「それを見てたと」
「うん!」
「嬉しそうだな、アスカ」
「だってね、本当に好きな人同士が結ばれたんだもん。こっちまで嬉しくなるよ」
「だったら、わざわざ買った牛は慰めじゃなくお祝いだな」
「そうだね、お祝いだね! あの二人に幸あれ!」
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