義弟と幼馴染
僕の姉さんはとってもかわいい。僕と姉さんは血が繋がってない。この家に来たのは5歳。両親が亡くなって、叔父さんがひきとってくれた。そこで初めて出会った姉さんは、絵本に出てくるお姫様のように美しく、僕は5歳だったのに見惚れてしまった。家の人はみんな僕に優しくしてくれたけど、僕はいつかお父さんとお母さんが迎えに来てくれるんじゃないかと待っていた。1ヶ月ぐらい経ってもうふたりが戻ってこないことを実感し、初めて涙が出てきた。姉さんがそっと抱きしめてくれて、その日から一緒に寝るようになった。本当のお母さんお父さんには会えないけど、僕には新しいお母さん、お父さん、姉さんがいる。姉さんは毎日一緒に遊んでくれるし、勉強もみてくれる。最高の姉さんだ。
新しい環境にも慣れ、新しい家族と幸せに暮らしていた。僕は姉さんに褒めてもらいたくて、紳士としての礼儀作法、勉強、武道などを頑張った。
僕には嫌いなやつがいる。姉さんの幼馴染の男だ。最近まで姉さんは僕と一緒に寝てたのに、急に「紳士淑女として正しい行いを…」とか訳の分からないことを言い始めた。姉さんは僕にとにかく甘い。僕が抱きついて上目遣いで見たら大抵のことは許してくれる。もう少しで姉さんの背を越してしまいそうで、上目遣いも厳しくなってきたが、この天使のような顔では大抵のことが許される。姉さんがそんなことを言い始めた裏には、間違いなくアイツがいる。
僕の家はこの国の3大公爵家のひとつ。王族の次に発言権があり、国政にも関わっている。もう一つの公爵家があいつのいるところ。あいつは昔からうるさかった。僕が姉さんにくっついているとそんなんじゃいつまでも大きくなれない、姉さんが自由にできない、とか言ってなにかと姉さんと僕の仲を邪魔してきた。あいつは姉さんのことが好きなんだ。だから姉さんに一番近い僕が厄介なんだ。王立学園に入学したときに、あいつは僕を生徒会に推薦しやがった。姉さんが生徒会に推薦されることは立派なことで人として男性として素敵になれるとあの天使もかすむような笑顔で言うから、僕はやむなく生徒会に入った。生徒会はとにかく時間が拘束される。放課後も残らなくてはならないし、昼休みも集まらないといけない。僕は姉さんとずっと一緒にいたいのに…!!!
あぁ早く帰りたい…帰って姉さんにおかえりって言ってほしい、同じ空間で姉さんを感じていたい…僕は苛立ちながら生徒会の仕事をしていた。
「頑張っているか?」
生徒会のドアが開く。艶のある濡ガラスのような黒色の髪、その瞳は一度見たら引き込まれるような魅惑的なルビー色。女も羨む白磁のような肌に、その唇は周りを誘惑するかのようにいつも端があがっている。僕には劣るがその容姿は男をも魅了する美しさがある。
生徒会室には僕だけ。なんで卒業したこいつがここに…今度の社交パーティーのことか?姉さんは今度からこいつがエスコートするとかふざけたことを言っていた。生徒会室に何食わぬ顔で入ってきたあいつは、ソファに座り、最近上流階級の貴族の間で流行り始めた葉巻に火をつける。こいつは、僕より自分が大人だとアピールしているんだ。姉さんにふさわしいのは自分だというかのように。くそ、くそ、くそ、姉さんは僕のだ!!!
「先輩、たばこ逆さだぜ」
次回「こんなところで…?!騎士の暴走」