私と義弟
彼女は悩んでいた。卵型の小さな顔、ルビーのように煌めくエメラルド色の瞳、乾燥を知らないつやつやのバラ色の唇、生まれたての赤ちゃんのような弾力のある肌には化粧知らずのほんのりピンク色の頬。歩くたびになびく黄金の髪。下を向く髪の毛と同じ色のまつ毛は頬に影を落とし、彼女の可憐な容姿に拍車をかける。その華奢な腰を引き寄せて抱きしめたいと思われていることに本人は気づいていない。
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朝食はいつも私の部屋で義弟と食べる。義弟でも未婚の淑女の部屋に入ってくるなんて…と普通は思うのかもしれないが、つい最近まで私と一緒に寝ていた義弟が少しでも姉さんといたい…と、その最近デビューし社交界を賑わせている天使のような容姿で上目遣いされると無碍に追い出すことはできず、私の部屋での朝食は日常化している。
「また学校で女の子をふったらしいじゃない。」
義弟はモテる。義弟が全くその話をしなくても、お茶会などで噂は耳に入ってくる。私のかわいいかわいい義弟がモテるのは当然で、私もとっても嬉しいけど「氷の天使」といわれているのは聞き捨てならない。こんなに笑顔がかわいくて、私に抱きついて甘えてくる義弟が氷とはどういうこと??
我が家は代々続く公爵家でその爵位を継ぐのは義弟。本来なら、家を発展させる有益な血筋の婚約者を親が選ぶのだけど、自分の妻は自分で選びたいという彼の意思を尊重し、自由恋愛を許可している。いろいろな方と恋をして、義弟を大切にしてくれる素敵な方を見つけてほしいのだけれど、噂では義弟がどこどこの令嬢を振った、今回で100人目など記録を更新していくばかり…この子は恋をする気があるのかしら?
やはり私の義弟離れができていないのが原因かしら…社交界で最近エスコートしてくれるのは義弟。いつも甘えてくれるのが嬉しくて、ついつい一緒にいてしまうけれど、そろそろ離れた方がいいわよね…
この前も幼馴染に指摘されたし…次からエスコートは彼に頼みましょう。その話をすると
「わかったよ姉ェさん!!
姉ェさんの覚悟が!
『言葉』でなく
『心』で理解できた!」
次回「もうやめて…幼馴染の狂愛!!」