2.雨の中のアイドル少女
はい!毎日投稿の二話目です!
楽しんでもらえると嬉しいです!
声をかけてきたのは金髪でツインテールの身長は約152センチくらいの若い女の子だった。
「いいんですか?」
「はい! 私傘二つ持ってるのでこれをお二人でお使いください」
渡されたのは女の子が持っていた大きめの傘。その後、女の子は自分のカバンから折りたたみ傘を出していた。
「ありがとうございます」
「ありがとう」
「いいえー」
「えーっとあなたは?」
「私ですか? 私は今野伊織です」
「今野伊織さんは何て呼べばいいですか?」
素朴な質問をするのは悠馬だった。
「そうですね……私のことはいおりんと呼んでくださいね」
「いおりん……?」
「はい! いおりんです!」
この瞬間悠馬とはるきは同じことを思った。
--あ、この人頭の中お花畑系女子だ。
「えーっとなんでいおりんっていうんですか?」
悠馬は丁寧に質問する
「そんなのきまってますよ!」
「いや知らねえよ」
はるきは小声で悠馬にだけ聞こえるようにしていった。
「何か言いましたー?」
「いや、何も言ってない」
「そうですか」
「それでなんでいおりんっていうんですか?」
「えーっとそれは、私のファンがそう呼ぶからです」
「ファン?なんの?」
「はいー。私アイドルなんです」
「やっぱり頭の中お花畑か」
「うん、悪口ですね」
伊織はただただ真顔で何かを透かしたような目で、はるきのほうを見ていった。
「ごめんごめん」
「全然思ってませんよね? あなた名前は?」
「俺か? 俺は東大門悠馬」
はるきは悠馬の名前を使った。
「東大門悠馬ですね? 漢字はこれで合ってます?」
と言って伊織は自分のスマホに漢字で東大門悠馬と大きな文字で打ち、はるきと悠馬に見せた。名前を知ってどうするのか悠馬は聞いた。
「はい!この名前をSNSで私のアカウントで、『この東大門悠馬って人が私のことを脳内お花畑女子ってよぶんです!』って投稿します!」
もしそんなことされたら、はるきではなく悠馬の名前だから被害は悠馬に行く。それで噂になれば、レンタル彼氏の会社にも「君は女性にひどいことを言うんだね」と言われてクビになることは目に見えている。だからこれは何としても止めなければならない!
「ごめんなさい!」
悠馬は真剣に伊織に謝った。その姿は背筋はしっかり伸び、足元一メートルのところに視線を落とし、上体は四十五度~六十度くらいに傾けた、一般的に謝罪などするときに適した条件を悠馬は全てしっかりとクリアしていた。
それを見た伊織はなんだか心配げに悠馬にこえをかける。
「どうして君が謝るの? 私が怒ってるのはあっちの悠馬だよ?」
伊織ははるきを指さしながら言った。
「違うんです、本当は僕が東大門悠馬なんです」
「え?」
少し戸惑っているように見えた。
そしてはるきが口を開いていった。
「すまなかった、俺は、レンタル彼氏人気一位の東阪はるきだ!」
「あの人の方が脳内お花畑じゃないですか?」
と伊織は悠馬に言った。悠馬は少し迷ったが「それな」と答えた。
「っておい! 悠馬までそんなこと思うのかよ」
「だって何がレン彼一位ですか! そりゃあ友達の悠馬さんでも思いますよ」
「あのーいおりん? 実はさ、本当にあいつ一位なんだよ」
はるきのフォローをしっかりとする悠馬。それを聞いた伊織は口が閉じないくらい驚いていた。
「こんな人が一位?この世の中も堕ちたものですね!」
「テメエ言わせておけばボロクソに言うじゃねーか。よーし分かった、今度俺をレンタルしろ」
はるきは伊織に向かって宣戦布告した。しかし伊織から返ってきた言葉は意外な言葉だった。
「いえ、いいです。こんな奴にお金を使うとかドブに捨てたほうがましです」
あまりの返答で悠馬もクスッと笑ってしまった。
「はああ!?言うねえわかったいいよ金はいらない、だからレンタルしてみろ。あと、悠馬てめーこら何笑ってんだよ!」
「そこまで言うならわかりました。気が向いたら連絡させていただきます」
「絶対向かないやつだろそれ。まあいい気が向いたらよろしく」
悠馬たちは伊織とは別方向なのでここで話は終わった。
無駄話をしていたら気が付くと雨は止んでいた。おそらく通り雨だったのだろう。
「雨も止んだしそろそろ帰るか」
「そうだね。てか、お前ら喧嘩しすぎ」
「だってあいつウザかった!思い出すだけでムカっとしてきた」
「どうどう、どうどう」
「俺は馬じゃねーよ!」
「ははははは」
「わらうな!」
「ってかまた雨降りそうじゃないか?」
悠馬は空を見上げていった。確かにまだ空は雲しか見えないし重そうな雲もある。
「うーんそうだな、でも俺たち傘ないぜ?」
「そうなんだよな」
「まあ降らないことを祈る」
と言った瞬間ポツポツと雨が降り始めた。
「あ、これもしかしてやばいやつ?」
「おそらく」
雨はだんだん強くなってきた。しかし、さっきとは違って近くに雨宿りできそうなところはない。それでもだんだん強くなっていく雨。次第に二人はびしょびしょになっていく。
「あーこれは終わったやつだ」
「うん、終わったな」
会話をしているふたり。すると帰り道でさっき通った道の奥の方から水たまりを踏む音や小走りの足音が聞こえている。
「なんか走ってる音聞こえね?ほら、ぴちゃぴちゃって」
「ホントだ、聞こえる」
「走ったらこけて危険だな」
「だな。てか音大きくなってね?」
「そうか?」
たしかにだんだんぴちゃぴちゃっという水の音とたったったっという小走りの足音がだんだん悠馬たちの方に近づいている。
どんどんどんどん近づいていく。
「なんかすぐ近くで聞こえるな」
「そうだな」
「お二人さん......はあはあ......これ......傘どうぞ」
二人に声をかけてきたのは、さっきのアイドルと名乗った伊織だった。
「いおりん?」
「はい! そうです!」
「どうしてここに?」
悠馬は伊織に尋ねた。
「先ほど傘がないって言っててまた降ってきたんで傘をお貸ししにきました」
「でも君もびちゃびちゃじゃないか」
伊織は傘を持っているはずなのになぜか悠馬たちと同じでビチャビチャだった。
「これはですね、なるべくはやく傘をお渡ししなくてはと思って自分も傘を刺さずに走ってきたからです」
「なるほどね」
と言いながら伊織に近づいていくのははるきだった。だんだん近づいていき、伊織の前に立ち伊織の目線に合わせて言った。
「ありがとね、傘を貸しに来てくれて。すんゲー嬉しいよ。ありがとな!」
「......」
伊織は顔を赤くして照れてしまった。しばらく無言だったがちょっとしたら口を開いて照れながら言った。
「別に、はるきのためじゃないもん......悠馬さんが風邪ひかないようにだもん......はるきついで! でも気が向いたからあとで連絡しようと思ったけど風邪ひかれたら折角気が向いたのにはるきが可哀想だと思ったから......でもついでよついで......!」
伊織は超がつくほどわかりやすいツンデレタイプの女の子だった。
はるきは伊織に向かって言った。
「雨の音が大きくて聞こえなかった。もう一回言って」
そう言われ伊織は顔を赤くしていった。
「ばーーーか......! ちゃんとか傘返してよね! レンタルのときでいいからさ!」
と言って伊織は来た道を走って帰っていった。
「あいつ案外可愛いとこあるんだな」
「なにはるき気になってんのか?」
「......」
「え? まじ?」
はるきは顔が少し赤くなった。
悠馬は冗談のつもりで言ったが図星だったのかもしれないがわからない。
「そんな訳無いだろ! ばーか」
「ヘエー」
「さあ先行くぞ!」
と言ってはるきはひとりで傘を持って走った。
「おいちょっと待ってくれよ、はるき」
「はは! やだねー追いつけるものならおいついてみなー」
「あ、雨止んだ」
「あ、雨止んだ」
二人のセリフは見事にかぶった。
後日はるきのもとに一通のメールが来た。レンタル彼氏の会社からのメールだった。
「えーっとどれどれ。はは、あいつも乗り気じゃねーか!」
ありがとうございました!
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