1,山頂へ-その2
「大きい……。」
そのときは、ただ呆然とそう思った。
少しくたびれているが、黒く重たげにたたずむ城門や城壁は、首都ペルナドにある王城のそれと同等か、それ以上に堅牢に見える。
「やっと見つけた……。」
セティは、ぼくの前にゆっくりと出ていって、小さく呟いた。
声こそ大きくはなかったが、その言葉は、決意や覚悟の類いが感じ取られるものだった。
そして、僕はこの詩を口ずさんだ。
「遥か砂漠の辺境の
遥か岩場の上の上
高くそびえる城壁が
黒くたたずむ城門が
魔に魅せられし神々の………」
「魔に囚われし成れの果て……。」
「やっぱり、君もこの詩を知っていたんだね。」
黒城の伝え詩。
人々が黒城の存在、役割、伝説を忘れないために伝えてきたものだ。
もっとも、そんなものは、戦後間もないこの国にとっては廃れていくだけの昔話にすぎない。
「いったでしょ?おじいさんが話してくれたってね。」
「やっぱり君のおじいさんは…………いや、今はやめておこう。」
「?」
きっと君のおじいさんのことを、僕は知っている。
だけど、それを切り出したら…………………。
ギギギ……ギギ………
「えっ?」
堅牢さを漂わせてたたずんでいただけの門が、突然に動き出した。
「っ!………門が……開いていく?」
僕たちはその様子に眼を奪われた。