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転生幼女は騎士になりたい  作者: ジャジャ丸
第四章 王立学園入学
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第九十一話 探索

タイトル変えるべきかなぁ、などと最近思うも、一応ネット小説大賞に応募している以上現状では変えるわけにはいかないよな、と保留する日々。

「それで、これからどうしましょう? 一口に魔物討伐と言っても、どこにいるか分からないのでは戦いようがありませんが……」


 しばしの間、現実逃避気味に流れ行く雲を見つめていたナルミアだったが、なんとか立ち直り、少しでも安全な魔物討伐のためにも建設的な話し合いを始めるべく口を開く。

 そんな彼女の言葉に、リリィは「任せてください」と胸を叩いた。


「魔物には、自分より弱い魔力を感知して、それに襲い掛かる習性があります。なので、商人さんが襲われた場所から今回の襲撃犯の生息地の見当をつけて、その近くで魔力をばら撒いて誘き寄せましょう。幸い、シルヴィアさんのお陰で地図の持ち出しも許可されましたし……ルル君、被害に遭った場所、分かりますか?」


「うん、把握してるよ」


 リリィの言葉を受けて、ルルーシュが大きな地図をその場に広げる。

 全員が地図を囲むように集まったのを確認して、ルルーシュは説明を始めた。


「まず、ランターン家が確認してる被害だけど、魔物によるものだとされている事件はどれも王都西側で起こってるね。それで、肝心の西側で魔力の高い土地というと……ええと」


「西側なら、王都北西部にある沼地と……少し距離はありますが、その奥にある小さな森でしょうか。商人さんが利用する川の傍にあるので、もしここで発生した魔物なら、襲いやすい商隊を選んで襲っているのかもしれません」


「なるほど。リリィ、良く知ってるね、王都のことなのに」


「ふふふ、伊達にナルミアさん達とお勉強会を開いているわけじゃありませんから」


 ルルーシュの感心したような言葉を受けて、リリィは得意気に胸を張る。

 王国国内の地理は、各貴族家が防衛戦などで共同作戦を執り行う際、必ず把握しておかなければならない情報なので、学園の、特に戦技系の授業では必ず最初に教えられる内容だ。

 ナルミア達にも、勉強会初日からテストと称してあれやこれやと叩き込まれた部分なので、リリィはしっかりと覚えていた。


「ちなみにルルーシュ、現れた魔物については何か分かってるのか?」


「それなんだけど……見上げるほどに大きな黒蛇の魔物だった、っていう情報だけ入ってる」


 続くユリウスからの問いに対し、ルルーシュは分かっている範囲で答える。

 曖昧な情報に、しかしユリウスは顔を顰めた。


「そんなに大きな蛇、それも黒い魔物ってなると……もしかしたら、ダークマンバかもしれない」


「ダークマンバ? お兄様、なんですかそいつ?」


「毒液を吐きかけて来る蛇の魔物なんだけど、サイズによって強さが大分変わるんだ。小さい時は、それこそ一息にさっくり仕留められるけど……見上げるほどに大きくなってるなら厄介だな。下手をすると、タイラントベアくらいには強くなってるかも」


「えぇ!? そんな魔物が出てるんですか!?」


 ユリウスの予想に、馬車の中は騒然とする。

 魔物は基本的に魔力濃度の高い地域で発生するため、魔力濃度が低い王都近郊には、さほど強い魔物は現れない――はずだった。

 だが、今はそんな常識が覆る事態が発生するかもしれないとなって、ユリウスの表情に真剣味が増す。


「実際に見てみないことには何とも言えないけど、場合によっては俺もフォローしきれないかもしれない。引き返すなら今のうちだけど……」


 そう言って、ユリウスは全員を見渡す。

 半ば脅すようなその言葉に対して真っ先に声を上げたのは、恐らく誰もが予想だにしなかった人物だった。


「だ、大丈夫ですわ! 元より、シルヴィア様からの直々のご命令、たとえ相手が何であれ、こんなところで引くわけには参りません! ええ、ウーフェン家の人間として、こんなところで引けませんとも!!」


「ナルミア様……!」


「私達もお供します!」


 ぐっと拳を握りしめ、ナルミアが高らかに宣言すると、残る二人の令嬢もそれに追従する。

 先ほどまで、勝ち目がないと叫んでいた相手と同等かもしれないと言われた上でのこの決意、なんという高い忠誠心か。

 これで三人仲良く膝がガクガク震えていなければ、とても絵になる光景だっただろう。何とも微妙な空気が流れる。


「ルル君、マリアベルさん、ヒルダさんも、無理について来なくて大丈夫ですからね? お兄様のサポートは私がやりますし」


「いや、リリィにサポートとか、一番向いてない役割でしょ。僕がやるから、むしろリリィこそ無茶しないように下がってて欲しい」


「わ、私だってスクエア家の娘です! 相手が危険だからって逃げ出すわけにはいきません!」


「オレだって、相手が強いっていうなら猶更引けないな、ここで踏ん張ってこそ強くなれるってもんだし」


「ルル君の言い分はちょっと納得出来ないです! ……でもまあ、分かりました。それじゃあ、みんなで行きましょう!」


 自分は最初から付いて行く前提で語るリリィに、ユリウスが少々困った顔を浮かべるものの、特に気付いた様子はない。

 仕方ないと、ユリウスもまた腹を括り、前向きに作戦を考えることにした。


「さっき言った通り、ダークマンバは毒液を吐きかけて来る。ちゃんと防護魔法が使えない奴は、前に出ない方がいいな。お前ら、誰か結界魔法は使えるか?」


「魔力さえ分けて貰えれば、僕がやれるよ」


「分かった。それじゃあリリィ、マリアベルも、二人は防護魔法使えないし、ルルーシュと一緒に後ろから支援に徹するようにしてくれ。後は……」


「オレはちゃんと防護魔法も使えるぞ! 前に出る役目は任せとけ!」


「んじゃ、お前は俺と一緒に前衛な。そっちの三人は?」


「わ、私達はその、ルルーシュさんの結界魔法構築をお手伝いしますわ!」


「ええ、そうした魔法の維持と、遠距離からの攻撃精度には自信がありますから!」


「なので私達も、心苦しいですが後ろから支援させて頂きます。ええ、心苦しいですが、適材適所というものがありますからね!」


 一方のナルミア他三人娘は、必死に後方を要求する。

 貴族の矜持として戦うことは決めたが、やはり最前線となると足が竦むらしい。

 実際、前に出ても邪魔にしかならないだろうことは見ればわかるので、ユリウスは苦笑混じりに了承する。


「とはいえ、それだとちょっと前衛が心許ないですね。私も前に出ましょうか?」


「いや、リリィは防護魔法を維持したまま戦えないだろ。大人しく後ろにいろよ」


「うー、仕方ないですね……今回はマリアベルさんと遠距離支援に徹することにします。頑張りましょうね、マリアベルさん」


「は、はい! 今回は魔物討伐ということで、たくさん備えて来ましたから、大丈夫です!」


「たくさん、というか……ちょっと多すぎませんか?」


 自身が持ち込んだ鞄を指すマリアベルだが、そのあまりの大きさに、今更ながらリリィは頬を引きつらせる。

 魔物討伐というからには、備えは万全でなければならないのは確かだが、だとしても多すぎれば身動きが取れなくなってしまう。

 それを承知で持ち込む物とは一体何かと尋ねるリリィに、マリアベルは特に気にした様子もなく、中身を披露し始めた。


「これはですね、飲み水確保のために水生成魔法の魔道具と、いざ逃げる時に使えるように囮用の土人形を作る魔道具と、雨風を凌げる簡単な洞窟を掘るための魔道具と……それから、攻撃のために各属性分の狙撃魔法を放てる魔道具に、万が一遭難した時のための信号魔法の魔道具と……」


「いやいや、マリアベルさん持ち込みすぎです! もう少し絞りましょう!?」


 マリアベルの挙げた魔道具は、なるほど確かに有用なものが多い。

 が、何も魔物討伐のために現地泊まり込みをするわけでもないのだから、明らかなサバイバルグッズはいらないだろう。何なら、攻撃魔法だけでもいいくらいだ。


「うぅ、そうですか? 作った魔道具を試す機会が来たと思って、張り切って持ってきたんですが……」


「マリアベル、魔道具の試験ならうちの商会でも請け負うって言ったじゃないか、何も全部自分でやらなくても」


「い、いえ! 魔道具の安全性を確認するまでが魔導士としてのお役目です、こればかりは……!」


「気持ちは分かりますけど、それが理由で魔物討伐まで出向いて来るなんて、マリアベルさんも随分と積極的になりましたよね。もうすっかり、立派な魔導士です」


 ぐっと拳を握りしめて力説するマリアベルに、リリィはしみじみとそう呟く。

 出会ったばかりの頃は、自分に全く自信が持てず、スクエア家に相応しくないと自虐的になることが多かった彼女が、こうも積極的に自己主張をしていることに友達の一人として嬉しさを覚えていると、彼女はそんなリリィから途端に目を逸らす。


「い、いえ、その……立派なんて、まだ早いです。まだ、私は目標にしている魔道具も出来ていませんから」


「それって、もしかして飛行魔法の魔道具ですか?」


 リリィの問いかけに、マリアベルは首肯を返す。

 彼女の最終目標は、飛行魔法を完成させ、姉や父のように大空を舞い、共にスクエア領を守ることだ。

 そのための魔道具が完成しないうちから、立派な魔導士などと自惚れるつもりはなかった。


「ですから、その……リリアナさんに褒めて貰えて嬉しいですけど、まだ、その言葉は私が飛行魔法を完成させるまで、とっておいてください。そうしたら私、もっと頑張れますから」


「ふふ、分かりました。じゃあ、さっきの言葉をお預けにする分、私に出来ることがあればいつでも協力しますから、何でも言ってください。マリアベルさんの夢、応援してます!」


「は、はい……! ありがとうございます、リリアナさん!」


 とはいえ、やはり褒められれば嬉しいのだろう。自分を戒めるようなことを言いつつも、その口元には抑えきれない笑みが浮かび、それを誤魔化すかのように、先ほどからずっと肩にかかった栗色のサイドテールを弄っている。

 緊張を紛らわせる時の癖なのだろうが、こういったところは以前から変わっていないと、リリィはニコニコと微笑んだ。


「じゃあ、フォーメーションはひとまずそういう形で。ただし、実際に見て本当にヤバそうだと思ったら退くからな、その指示には従ってくれよ?」


 ユリウスが話を纏めつつ釘を刺すと、全員から了解の頷きが返って来る。


 こうして方針が固まったリリィ達は、改めて御者にお願いし、まずは近くの沼地へ向かって移動を始めた。

 あまり近づきすぎれば馬車の方が危険なので、ほどほどの場所で降り、残りは徒歩で移動することしばし、ようやく沼地に辿り着く。


「ここが沼地ですか、ジメジメしてて何だか気持ち悪いところですね」


「そういう場所だからね。あんまり長居はしたくないのは同感だよ」


「足元もぬるぬるしてて動きづらいし、ここでやり合いたくねえなー」


「その辺りも魔法でカバーできるぞ、今度時間があれば教えてやろうか?」


「おっ、マジで!? 助かるぜ、ユリウスさん!!」


「ちょっ、ちょっとあなた達……あ、歩くの早すぎですわ」


 リリィ、ルルーシュ、ユリウス、ヒルダの四人が、到着した沼地であれこれと会話を重ねている中、後から遅れてやって来たマリアベル、ナルミア以下三名は、既に息も絶え絶えといった様子で肩を上下させていた。

 魔物との戦闘どころではないその様子に、先についていた四人は苦笑を漏らす。


「ナルミアさん達は、もう少し体力を付けた方がいいと思います」


「あなた達が体力バカ過ぎるんですわ!! 何でこんなに歩いて息一つ乱れていないのですか!?」


「ふふふ、それはもちろん、鍛えてますから」


 ナルミアの抗議に、リリィは平坦な胸をこれでもかと張る。

 かつては体力が無さ過ぎて苦労していたが、苦節五年余り、ようやくそこらの貴族令嬢に比べれば体力がついて来たらしい。大した進歩である。

 ……こっそりと腰に提げた強化魔法の魔道具が作動していることに、目を瞑ればだが。


「それにしても、やっぱりマリアベルさんは荷物多すぎです。もう少し馬車に置いてくれば良かったんじゃないですか?」


「し、信号魔法とか、拠点作り用の魔道具は置いて来たんですよ? それでも、まだ多かったんですが……」


「戦闘準備、もう出来そうですか? 無理なら少し待ちますけど」


「い、いえ、大丈夫です。いつ来ても大丈夫なように、備えだけはしていましたから」


 両手で携えた新型の魔道具を見せながらそう意気込むマリアベルに、リリィは一つ頷きながら、ユリウスと目配せをする。


「さて、それじゃあ行くぞ」


 ユリウスがそう宣言すると同時に魔力を練り上げ、上空へと解き放つ。

 必要以上に魔物を威圧しないよう、適度に加減して放たれた力の塊は、そのまま空で破裂し、方々へとその波動を撒き散らしていく。

 これで、近くに魔物がいるのであれば、釣られて出てくるはずだ。

 気を引き締め直し、辺りを伺うリリィ達だったが……。


「……出てきませんね」


「この沼地にはいないのかな?」


「だったら、いつまでもこんなところにいる必要ないし、早く次行こうぜ」


 しばらく待っても何の変化がないのを見て、ヒルダがそう提案する。

 沼地の居心地はお世辞にもいいとは言えないので、特に反対意見が出ることもなく、他の面々もそれに頷きを返し……。


 ドーンッ!! と、引き返そうとしていた方の上空で、大きな光の魔法が炸裂したことに、全員がぎょっと目を剥いた。


「あれは……私が作った、信号魔法の光です! 念のために、御者さんに使い方を教えていたので、何かあったのかもしれません!」


「まさか、魔物に!? くっ、急いで戻りましょう!!」


 リリィの声に合わせ、行きとは異なり全員が魔力の温存をひとまず棚上げして強化魔法を発動する。

 そして、全速力で馬車へ向かって走り出すのだった。

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