↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生幼女は騎士になりたい  作者: ジャジャ丸
第四章 王立学園入学
84/119

第八十四話 結果発表

 入学試験が終わった後、リリィ達は改めて空き教室に集められ、学園の校則や授業形態、行事などについて説明を受けた。


 まず、学園内において、許可された場所以外での抜剣、攻撃魔法の行使は厳禁。許可された場所でも、原則として監督する教官の付き添いと学校側への許可申請が必要だ。


 次に、授業については基本的に参加自由。学園にいる間は寮暮らし以外認められていないが、申請さえすれば家の事情でいつでも帰省して良いことになっている。これを利用して、王都に家を持つ生徒の中には実家通いをする者もいないではない。

 ただし、進級や卒業には一定数の単位が必要で、これを取得するには授業の参加や提出課題の達成、特定の時期に行われる試験や行事で優秀な成績を納めるなどといった手段のいずれかをこなす必要がある。

 一年の授業スケジュールが事前に配布されるので、生徒達はこの中から自分の学びたい分野、単位の取りやすい分野などを選び、自己責任で出席するのだ。


 そして、学校行事についても原則参加自由とはなっているが、参加するだけでも多くの単位が貰える上、成績次第では一発で進級に必要な単位を得られるため、出来る限り参加することを薦められた。


「うーん、みんなはどの授業に出ますか?」


 そうした説明が終わり、今日のところは試験の結果が出るのを待って帰るばかりとなったリリィは、教官が退出する前に配布した授業スケジュールの紙を眺めつつそう尋ねる。

 授業の選択肢など、多くても十は越えないだろうと高をくくっていたリリィだが、実際にはそんな甘い物ではなかった。

 魔法に関する授業一つ取っても、『気象環境と魔法の関係』『主流の防御魔法とその効率的な破壊』『詠唱短縮技術のリスクとリターン』『攻撃魔法の効率的な運用』『騎士と魔導士の最適な連携』などなど。

 科目分けというよりも、何らかの論文発表でも聞きに行くのかと勘違いしそうなほど具体的な単語が羅列しており、リリィにはもはや何がなんだか分からなかった。


「こういうのは、授業内容も大事だけど、どの先生の授業を受けたいかで考えるのがいいよ。色々あるけど、基本的に一人の先生が教えてくれるのは同じ分野の話ばかりになるから、理解を深めたいならその先生の授業に参加し続ければいい」


「なるほど~、そういう感じですか。本当にルル君は頼りになりますね、助かります」


「……まあ、何度かユリウスからも話を聞いてるからね、それで詳しくなったんだよ」


 頼りになると言われて嬉しかったのか、ルルーシュは照れたようにそっぽを向く。

 そんな彼の様子を見たリリィはと言えば、そういえば何度も手紙で兄のことを尋ねていたなぁと、背景事情を斜め上に解釈して微妙に申し訳ない気分になっていた。


「ふーん、そういう感じか。なら、オレはさっき試験でやり合ったアーロンって教官の授業だな。絶対にリベンジしてやる!」


「私はこちらの、ポーリュシカ教授の授業を中心に受けようと思います……その、王都では有名な、魔道具研究の第一人者ですから……」


「僕はカサンドラ先生と、アルフォネア教官かな。カサンドラ先生は母さんが世話になったこともある薬師の先生だし、アルフォネア教官は衛生兵として従軍したこともある人だから、今後のためにも話を聞いておきたい」


「うん? 今後って、ルルーシュ、衛生兵になるのか?」


「ならないよ、物資が足りない中での治療経験について知りたいだけ」


 アースランド領で医療行為をするには、必要になる知識だろうし……と小さく呟かれた言葉は、しかし誰にも聞こえることなく空気に溶けて消えていく。

 一つ首を傾げたヒルダは、まあいいかと些細な疑問を棚上げし、ただ一人まだ決めていないリリィに顔を向ける。


「で、リリアナはどうするんだ?」


「うーん……そうですね……」


 腕を組み、唸り声を上げながらリリィは悩む。

 三人の言った先生達の授業は、どれも魅力的だ。

 アースランドの人々を守れる男になりたいと願うリリィにとって、あれだけの実力を持つアーロン教官に扱いて貰えるのはありがたいし、みんなの生活に役立つ魔道具の知識が得られるポーリュシカ教授の授業も捨てがたい。それに、ルルーシュの告げた二人の先生から受けられる授業も、薬師がいないアースランド領にとって垂涎の知識が得られるだろう。それ以外にも、何かと有用な知識が得られそうな授業は数多い。


 さりとて、リリィの体は一つだけだ。


「むむ……むむむ……!」


 どれも、辺境の地であるアースランド領では滅多に手に入らない機会であるがゆえに、リリィは中々決められない。

 悩んで悩んで、悩み抜いて……やがて、天恵のように一つのアイデアが閃いた。


「決めました、私、授業全部受けます!」


「「「はい?」」」


 とんでもないことをしれっとのたまうリリィに、他の三人の声が見事に重なる。

 そんな彼らの様子に、リリィはもう一度ぐっと拳を握りしめて、


「私、授業全部受けます!」


「いや、それは分かったけど、無理だから。時間が被ってる授業なんて物理的に受けようがないでしょ?」


 上手く聞き取れなかったのかと思ったが、どうやら違ったらしい。

 至極真っ当な突っ込みを入れるルルーシュに、リリィは甘い甘いと得意気に鼻を鳴らす。


「もちろん、それは分かっています。でも、私が受けられなかった授業に出ていた人のノートを写させて貰えば、時間をずらして自主的に内容を覚えることが出来るはずです! なので、私自身は体を使った授業や、人気のない授業に出ます!」


「待って待って、それ全部の授業でやる気? いくらなんでも、寝る時間無くなるよ? それに、ノートだって誰も彼も写させてくれるわけじゃ……」


「それはまあ、そうですけどね。でも、せっかく学園に来たんですから、やれるだけやりたいんです! 気合で頑張ります!」


 ぐっと拳を握りしめて語るリリィに、ルルーシュはやれやれと溜息を零す。

 早速滅茶苦茶なことを言い出した婚約者を前に、どうにか止めるべきかと一瞬だけ考えるが……すぐに、止めても無駄だと思い直す。


「分かったよ、僕が受けた範囲なら教えてあげる。ただ、あんまり無茶するとユリウスに言いつけるからね?」


「うえぇ!? わ、分かりましたから、それは勘弁してくださいぃ!」


 ルルーシュが抜いた伝家の宝刀に、リリィはおろおろと分かりやすくたじろぐ。

 ブラコンを極めたこの少女は、兄からのお仕置き……もとい、しばらく口を利かない、手紙を書かないなどといった手札《カード》を切られると、文字通りこの世の終わりかというほどに絶望するので、言うことを聞かせたければ兄の名を出せば大体のことは解決するのだ。

 それでいいのかと思わなくもないが、便利なのでまあいいかと思うルルーシュである。


「そ、それじゃあ、私もリリアナさんとお勉強しますね、復習にもなりますし、ちょうどいいです」


「じゃあオレは、リリアナと放課後に剣の稽古か? 試験の時はオレがいいようにやられたのに、リリアナはきっちり一撃入れてたからな、次は負けねえ!」


「ありがとうございます! ルル君も含めて、また近い内にお礼させて貰いますね」


 心優しい友人達の言葉に感激しながら、リリィは笑顔を溢す。


 そうして、和気あいあいと過ごしていると、先ほどの教官が戻って来た。どうやら、試験の結果が出たらしい。

 配布された紙に書いてあったのは、各試験の評価点と学年順位、点数などだ。

 入学するタイミングが人によりまちまちなので、順位はすぐに変動しあまり当てにならないが、少なくとも今現在学園に到着した中で自分がどの程度の実力なのかは分かるようになっている。


 結果は――



 リリアナ・アースランド

 座学――算術:100/100 語学50/100 歴史:70/100 合計:220点、学年8位

 剣術――技術:20/100 戦型:30/100 心胆:100/100 合計:150点、学年13位

 魔法――威力:100/100 精度:0/100 制御:0/100 合計:100点、学年24位

 総合――470点、学年19位


 ルルーシュ・ランターン

 座学――算術:98/100 語学:92/100 歴史:88/100 合計:278点、学年2位

 剣術――技術:10/100 戦型:0/100 心胆:60/100 合計:70点、学年21位

 魔法――威力:30/100 精度:100/100 制御:100/100 合計:230点、学年9位

 総合――578点、学年11位


 マリアベル・スクエア

 座学――算術:82/100 語学:76/100 歴史:95/100 合計:253点、学年4位

 剣術――技術:0/100 戦型:0/100 心胆:40/100 合計:40点、学年25位

 魔法――不参加、0点。学年25位

 総合――293点、学年25位


 ヒルダ・ルードヴィン

 座学――算術:12/100 語学:44/100 歴史:24/100 合計:80点、学年25位

 剣術――技術:95/100 戦型:90/100 心胆:90/100 合計:275点、学年3位

 魔法――威力:70/100 精度:15/100 制御:60/100 合計:145点、学年23位

 総合――500点、学年16位



 以上となった。


「…………」


「げ、元気出してくださいマリアベルさん! 総合最下位って言っても、座学は四位じゃないですか! それに、魔法に関してはそもそも試験を受けなかったんですから、この結果は仕方ないですよ!」


 私、侯爵家の娘なのに、学年最下位……と、どんよりとした空気を纏い落ち込むマリアベルを、リリィが励ます。

 剣術に関しては、特に女子生徒は入学してから少しばかり細剣《レイピア》の使い方を学ぶ、という程度の者も多いため、マリアベルと似たり寄ったりな点数に甘んじている者も少なくないのだが、魔法は貴族にとって習得が義務とすら言える項目だ。極端過ぎるリリィの点数は横に置くとしても、ヒルダの点数ですら下から三番目というのがレベルの高さを物語っている。

 体質のせいとはいえ、それすら参加出来ず0点になってしまったのが、順位に相当響いていた。


「はい、こうなるだろうなっていうのは分かってはいたんですけど……やっぱり、いざ最下位と言われると……こう……はい……」


「なーに落ち込んでんだ、オレだってほら見ろ、座学がぶっちぎりの最下位だぜ! はっはっは!」


「ヒルダさんはもう少し真面目に勉強しましょう! 算術なんて、足し算引き算だけで五十点分はありましたよね!?」


「はっはっは、分かんねえ、ていうか計算が面倒になって途中で投げた」


「ダメじゃないですか!!」


 潔いというべきか、開き直り過ぎと怒るべきか。

 恐らく後者であろうヒルダの態度にリリィが説教をし、ルルーシュが苦笑を漏らす。

 そんな友人達の姿を見て、マリアベルもようやく元気を取り戻す。


「そうですね……学年順位がどうであっても、進級には関係ありませんし。秋に行われる魔法研究発表会は魔道具も評価して貰えますから、私、それを目指して頑張ります……!」


「ふふ、その意気ですよ、マリアベルさん! また手伝って欲しい時はいつでも言ってくださいね」


「はい……!」


 リリィがマリアベルの手を取って笑顔を浮かべると、マリアベルは感激のあまり目が潤み、顔が赤くなる。

 傍から見れば、今にも百合の花が咲きそうな光景に、ルルーシュは何とも微妙な表情を浮かべた。


「ルルーシュ、どうした? リリアナが取られて寂しいのか?」


「……強ち間違ってもないから困る」


 容赦なくズバズバと直球で切り込むヒルダに対し、ルルーシュは深々と溜息を溢すのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ルル君がリリィを好き過ぎて尊い。 色んな意味でルル君がどんどん苦労人に……。 [一言] リリィの座学が意外に良い……!? アースランド脳なのに……!? しかしこの子たち皆ハイスペックで転生…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。