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転生幼女は騎士になりたい  作者: ジャジャ丸
第三章 空に憧れた少女
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第六十五話 魔道具完成

 魔道具の事故で城内を水浸しにしたリリィ達は、当然の如く親からのお叱りを受けることになった。

 とはいえ、魔力注入すら自動で行う、全く新しい魔道具の可能性を示したのは事実。そこを考慮して、幸いにして実験は今後も続けることを認められた。

 ……代わりに、連日濡れ鼠となったリリィは風邪を引いたが。


「丸一日寝込んでしまいましたが、この分の遅れは必ず取り戻しますよ! 晩餐会まであと三日しかありませんし、頑張ります!」


「いや、ここまで来たらリリィに出来ることはほとんどないから、休んでなよ。病み上がりでしょ」


「えぇぇ!?」


 扉が吹っ飛んだり、水浸しになったりと散々な目に遭って使えなくなったマリアベルの私室の代わりに用意された部屋の中で、リリィはがっくりと崩れ落ちる。

 実際、既にマリアベルでも使える魔道具の理論はほぼ完成し、後は魔力に頼らない魔道具の制御方法と、それに適した形状を考えるだけの段階だ。

 魔道具の試験になればまた手伝いが必要な可能性はあるが、病み上がりに無理をしてまで今すぐやらなければならないことは何もなかった。


「で、でも、今は魔道具の制御方法を考えてるんですよね!? そのアイデアくらいなら私にも出せます!!」


「いやまあ、それは出来るだろうけど……本当に大丈夫?」


「大丈夫です! この通り、一日寝たお陰で力も有り余っています!」


 むんっ、と袖を捲って力こぶを作ることで元気さをアピールしようとするのだが、どれだけ力を込めたところで、その腕に何の変化もない。

 そっと、何事もなかったかのように袖を戻すリリィに何も言わないのは、ルルーシュなりの優しさなのだろう。恐らく。


「ええと、本当に無理はなさらないでくださいね……? ただでさえ、私のことでご迷惑をおかけしているのに、これ以上は……」


「マリアベルさんも心配性ですね、大丈夫ですって! それに、この魔道具は私にとっても是非とも完成させたいものですから、迷惑なんて全然ありません! それよりも、私が寝込んでいる間に、どうなりましたか?」


 不安げな表情を隠そうともしないマリアベルを宥めつつ、リリィは問いかける。

 それを受けて、ルルーシュは一つ頷くと、改めて説明を始めた。


「昨日はマリアベルと二人で、魔法陣を色々と弄って勝手に魔法が発動しないよう、色々と工夫してみたんだけど、やっぱりあの魔法陣をそのまま使うのは難しくてね」


「元々、私の体質のために、何の制御も必要としない魔法陣を目指して作りましたから……うぅ、まさかそれが、ここに来て足枷になるなんて思いませんでした……」


 ままならない現状に、マリアベルは溜息を吐く。

 魔力制御の必要が一切ない魔道具でなければ、肝心のマリアベルが使うことが出来ないので、この形になるのは仕方ない。

 しかし、そのせいで本人の意思とは関係なしに魔法が暴発するような代物になってしまってはあまりにも本末転倒だ。

 ただでさえ、晩餐会には西部貴族達が大勢押しかけてくるのだから、安全性には考慮してもし過ぎるということはないはずで、当然、一度は魔導城を水浸しにしてしまった魔道具から何の改良もないままでは、セヴァンも使用を許可しないだろう。

 せめて魔法の発動と終了だけは、使用者の意思の下、好きなタイミングで出来なければならない。


「まあ、そういうわけで、せっかく結合したところだけど、簒奪術式と完全制御術式は別々に使うことにしたんだ」


「というと?」


「二つの効果を一つの魔法陣に押し込めるんじゃなくて、簒奪術式で魔力を魔水晶に溜め込んだ後、それを完全制御術式に嵌め込んで魔法を撃つ。こういう形にすれば、充填と発射が別々に発動するから、一昨日みたいに本人の意思と関係なく魔法が発動し続けるような事故は起こらない。まあ、あっちはあっちで、強化魔法とか防護魔法とか、効果をずっと持続させるタイプの魔法を使うには向いてると思うけどね」


「ええと……なので、今は二つの魔法陣を一つの魔水晶が行き来する、そんな動きをスムーズに行うための魔道具の形を考えているところなんです」


「なるほど~」


 ルルーシュの説明をマリアベルが補足し、現状は大体理解出来た。

 要するに、今までにない新しい魔道具を、どんな形で作るべきかという話らしい。

 一般的に、魔導士が使う魔道具といえば、設置型の板や円柱、携帯性に優れた杖のどちらかが基本で、剣や鎧などには魔水晶を使わず、魔法陣のみを刻み付けるのが普通だ。

 しかし、そのどれも魔水晶を何度も付けたり外したりということを想定した作りにはなっていないので、全く新しい形が必要になる。


 そこまで聞いたところで、リリィはふと思いついた考えを口にした。


「だったら、銃はどうですか?」


「銃?」


 リリィの提案に、ルルーシュはオウム返しに問い返す。

 実のところ、この世界には既に銃がある。

 リリィの前世にあったようなオートマチックの拳銃は流石にまだないが、単発式のマスケット銃ならその存在は一般人でも知っているのだ。

 魔法に比べて威力も低く、雨で火薬が濡れると使えなくなるなど制限は多いが、引き金を引くだけで発射できる速さと奇襲性、何より魔法に比べて圧倒的に短い訓練期間で使用可能になるという特徴から、軍隊というよりも街の衛士や門番などといった役職の者に愛用されている。


「はい。こう、持ち手のところと銃身部分で別の魔法陣を刻んでおいて、ガシャッとバネ仕掛けで魔水晶が移動するようにして……」


 ただ、ここでリリィが想像した物はマスケット銃ではなく、拳銃の方だった。

 なまじ、ド田舎に住んでいるせいで“銃”という単語は伝え聞いても、本物の銃は見たことがなかったために、前世にあったものと似たような代物だと勝手に思い込んでいたのだ。

 そのせいで、マリアベルなどは銃という単語の持つイメージとリリィの説明とが合致せず、首を傾げることになる。


 しかし、ルルーシュはリリィの言葉とジェスチャーから、凡そ言いたいことを察することが出来た。


「ああ、なるほど、銃というよりクロスボウだね。確かに、それならいけるかも」


 弦を引いて固定し、バネの力で通常の弓矢よりも貫通力の高い矢を発射する、機械式のクロスボウ。

 ある程度大きな街で、猟師が獣や魔物を仕留める際に利用するそれの仕組みを応用すれば、実戦でも使用できるスムーズな魔法発射機構を備えた魔道具を作れるはずだ。


「やるじゃないリリィ。いつもと違って珍しく冴えてるね」 


「えへへ、それほどでも……って、ルル君、今しれっと酷い事言いませんでした?」


「いや、だってリリィって色んなこと知ってる割に、ここぞって時は直感頼りに力づくで解決しようとするし……」


「えぇぇ!?」


 自分としてはお姉さんのつもりだったリリィは、ルルーシュからの思わぬ評価に愕然とした。


「わ、私をそんな脳筋みたいに言わないでください!!」


「いや……前にアースランド領でベラ熱が流行った時、何の工夫もない力技で離れを魔力で満たしたり、賊の襲撃を力任せの雑な魔法で押し退けたのって、どこの誰だっけ?」


「うぅ!?」


 二年前、カタリナがベラ熱で倒れた時の行動や、帝国の工作員と交戦した一件を持ち出され、リリィは言葉に詰まる。


(た、確かに、ルルーシュ君の前では脳筋っぽいことたくさんしちゃったかもしれませんけど、あれは状況が悪かっただけですから! 私は普段からもっとちゃんと考えて行動してます!)


 ……この場にユリウスがいれば、「お前は小さい頃からそうだっただろ」と指摘していただろうが、残念ながらこの場にあるのは彼の木剣だけ。いくらリリィが兄の幻影を重ねていようと、幻影はリリィの都合の良いことしか言わないのだ。


「脳筋……確かに……」


 そして、マリアベルから見たリリィの印象はと言えば、まず何よりも初対面で扉を吹っ飛ばし、気絶させられた一件が頭を過ぎる。

 いくら反応がなかったからと言って、問答無用で扉をぶち破るのは十分脳筋だろう。


「うぅぅ、いいです、この一件でそのイメージも払拭出来たはずですから! それより、これでマリアベルさんの魔道具も形になるんですよね?」


「まあ、実際に作って、想定通りに動いてくれればね。ただ、残り日数を考えると、そういくつも魔道具は作れないだろうから、今の内にどんな魔法を披露するか考えた方がいいかもね」


 無理矢理自分を納得させようとするリリィを生温かい目で見ながら、ルルーシュはそう言ってマリアベルを見やる。

 視線を向けられたマリアベルは、突然振られた話に驚き、わたわたと慌て始めた。


「そ、それはその……うぅ、使いたい魔法はなくもないんですが……」


「何か問題でもあるんですか?」


「いえ、その、見栄えは良いですし、攻撃にも使える魔法なので武家のお披露目としてもちょうどいいんですが……だからこそ、もし魔力が足りずに半端な演出になったらと思うと心配で……」


 一体何を想像したのか、頭を抱えて蹲るマリアベル。

 そんな姿に苦笑しつつ、リリィはその丸まった背中をバシンと叩いた。


「ひゃう!? り、リリアナさん?」


「大丈夫ですよ、マリアベルさんはもっと自信を持ってください! もう完成は目の前なんです、魔力量は多い方だってルル君も保証してくれてるんですから、後はぶっ放すだけです! ド派手な魔法で、いっちょ集まった人達の度肝を抜いてやりましょう!」


「……そ、そうですね……お二人がこれだけ協力してくれたんですから、が、頑張ります!」


 ぐっ、と親指を立てて激励を贈るリリィに、マリアベルは目を白黒させながらも気合を入れ直すように拳を握りしめる。

 そんな二人を眺めながら、ルルーシュはふと思った。

 この二人、足して二で割ればちょうどよくなりそうだな、と。


(まあ、今のバカなリリィも好きだから、変わる必要はないけどね)


 そんな惚気た言葉を内心で呟きながら、ルルーシュは小さく笑みを零すのだった。

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