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悪役令嬢の短編シリーズ

私、早く帰って癒されたいのです。

作者: わく

前世からの追っかけ旦那ってすごいストーカーだけどイケメンだったらすごい純愛に見えますよね〜不思議♡

 



「スティア!貴様、俺とアリスの仲に嫉妬してアリスを虐めているだろう!全く、こんな奴が俺の婚約者だとは信じられんな!」





「あら、嫉妬?虐め?ほほほ、なぜそんなことしなくてはなりませんの?私、そんな無駄なことをしている時間はありませんの。あと、婚約者ではありませんよ?」




「ひ、酷いですわ、どうしても私と殿下の仲が気に入らないんですね!」




「……」(話すのもバカらしくなるわね)




 これ以上言っても無駄でしょうね、サッサと退散しましょう。私、無駄な時間が1番嫌いなのよね。





「おい!待て!話は終わってないぞ!なぁ!」



 ♢♦︎♢


 私、スティア・フォーラムはガラスティア国の公爵家の娘ですわ。


 先程言い合いをしていたのは、この国の王太子で第1王子のバザール・フォン・ガラスティア様と最近迄平民として暮らしており、男爵家に引き取られたアリス・パンダイア嬢ですわ。


 2ヶ月ほど前にパンダイア嬢が入学してから、何かにつけて私の近くに寄ってきて、私の取り巻き……友人達に追い出されておりますの。


 それを、私に虐められたと言って殿下に泣きつき、覚えのない誹謗中傷を受けていますの。被害者って私じゃありません?因みに、私は彼女と言葉を交わしたことはありません。何か言ってそれでさらに私が虐めていると言われたら堪りませんもの。


 大体、何故私が殿下とアリス嬢の仲に嫉妬しなくてはいけないのかしら?殿下も殿下でかなりの自意識過剰ですわよね。これ言ったら不敬罪かしら?



 ……あぁ、早く家に帰って、癒されたい!





 ♦︎♢♦︎



「お帰り、スティア」



 そう言って私を迎えてくれるのは、私の大好きな婚約者、シエル。



 艶やかな黒髪にリンゴのような赤い瞳、肩まで伸びた髪を無造作に1つに結び、従者の服を着ておりますが、その美貌は全く衰えていません!まさに”絶世の美少年”


 私と少しでも一緒に居たいと言って、私の家の従者になり、こうやって私を待っていてくれますの。


「ティーア?何を考えてるの?せっかく帰ってきたのに上の空だね?僕を見てよ?」



 キャーーーーーーー!!!!あぁ、上目遣い最高ですわ!!!!小悪魔ですわ!!!!あ、彼は魔王なんでしたわ。




「ゴホン、、ちょっとシエルの美貌にやられてましたの。」



「そう?僕はティアの方が綺麗で、この世で1番美しいと思うけどね?毎日君に惚れ直してるよ。」




 ぁぁぁもう、一々甘いですわ!本当に、彼の視線1つで顔が熱くなってしまうというのに、私をどうするつもりですの?!?



「あ、ありがとう……でも、世界一っていうのはちょっと言い過ぎよ。」




「なんで?君の女神のような銀の髪も、アメジストのような瞳も、シミひとつない真っ白な肌も、華奢だけど僕を惑わせてやまない柔らかな身体つきも、君の鈴のような声も、僕を愛してくれる心も、全てが魅力的だよ。もっと自分が綺麗だって自覚を持ってくれないと困るよ?僕の知らないところで変な虫が増えるのは勘弁ならないけど他ならない君の希望だから学園に通わせてあげてるのにな。ねぇ?」



 あら、シエルのスイッチが入っちゃったみたいね。彼、私のことが大好き過ぎて、ちょっと他の殿方に言い寄られると相手を抹消しようとするのよね。今日のことなんて言ったら、王子が殺されるわね。絶対に内緒にしなきゃ。




「もう、意地悪言わないで。それはありがたく思ってますわ。その代わりに卒業したら貴方のモノになると言ったでしょう?」



「そうだよ。だからこそこうやって君が人間達と生活するのを許容して、待ってるんだから。あぁ、早く卒業式とやらが来ないかな?早く僕のものになって?」





「ーーーーっっ///卒業したらね!!」




 もう!シエルったら!




 ♢♦︎♢




 私とシエルが出会ったのは、今世では2ヶ月前、でも初めて会ったのは前世。



 私は前世では彼の妻で、魔物の国の姫だった。



 そして、シエルは魔王の娘の私を手に入れるために魔界戦争で勝ち抜き、私の夫になった。



 私達は長い時間を共にしていたけれど、シエルが魔国を離れている時に月の加護がない新月の日を狙ってやってきた勇者軍に”私”は倒されてしまった



 それからシエルは私を倒した勇者軍を殲滅し、私の亡骸を抱いて私に転生の魔法を使い、私の転生に合わせて目覚めるように時超えの魔法で眠っていたらしい。今は長い間眠っていたから、少年姿になって魔力を節約しているんですって。でも少年じゃなくて青年の姿に戻ったらきっと私今以上にタジタジになってしまって、恥ずかしくて顔も見れなくなっちゃうから暫くは今の姿でいいですわ。





 ……正直言って、前世の記憶は朧げにしか思い出せないの。でも、シエルをみた瞬間に、一瞬で惹きつけられて、”この人に愛されたい”と思ったの。






 2ヶ月前、シエルは私の寝室の枕元に立っていましたの。


 暗闇の中に絶世の美少年が立っていたから、夢かと思いましたわ。



 彼はベットに眠っている私の額に口付けて「迎えにきたよ、僕の愛しい人」と言いましたの。



 私はただただ放心して、「貴方は……?これは夢?」

 と言うと、彼は私の額と自分の額を合わせて何事か呟きました。


 すると、彼の少し成長した姿の美貌の青年との甘やかな前世の記憶が流れ込んできました。


 私は混乱しましたが、彼は私の愛する人だと言うことだけは分かりましたの。



 彼はすぐにでも魔界に行って結婚しようと言ってきましたが、私には今の家族と地位があるからすぐには難しいと告げました。すると彼は「じゃあ人間の国でも地位を確立して、君に求婚すれば良いかな?」と言って無邪気に笑いましたの。


 そして、彼は今我が国で”最年少のSランク冒険者”と”フォーラム家の私の従者”を掛け持ちしているんですの。


 私を妻にするには貴族の爵位が必要ですから、国に貢献して爵位をもらったらすぐにでも私に求婚すると言ってましたわ。


 正直、2ヶ月でSランク冒険者になるなんて驚きましたわ。後見人は私のお父様がしてくれておりますから、他の貴族はシエルに取り入れなくて口惜しそうにしてましたわ。


 1ヶ月後の国の祭典の際には爵位を授賞されるとも噂されてますの。


 なんでも、西の魔境での魔物殲滅の際に大活躍しただとか、伝説の黒龍と契約しただとか、もうたった2ヶ月でこの国の英雄になってしまってるんですの。


 もう、本当に自重というものを知って欲しいですわ。この国の王女や他の貴族からもアプローチを仕掛けられてますし、私の方が嫉妬したいくらいなのに!


 ……まぁ、シエルは私一筋だって言ってくれますし、信じてますけど……それとこれとは違うんですのよ?




 ♢♦︎♢


 …朝ですわね……



 学園での疲れをシエルに癒してもらい、気力を取り戻した私は無敵ですわ!さ、学園に行きましょう。



「おはよ。お迎えにあがりましたよ?」



「もう、こんなとこ見られたらお父様にもメイドにも怒られちゃいますわ。」



「大丈夫。気配がしたらすぐに転移して出るからね。今の俺は西の魔境で魔物を殲滅中ってことになってるから。ま、もう殲滅終わって帰ってきたけどね?」



 西の魔境……からこの王都までは馬車で飛ばしても2週間、早馬で休まずに来ても1週間は掛かりますわ。本来は昨日の出発だったはずですけど……





「昨日の夜のうちに転移して殲滅してきたよ?」




「相変わらず仕事が早いですわね。流石ですわ!」




「ふふ、ご褒美、ちょうだい?」



 …………///実年齢は私より遥かに上だって分かってますけど、12〜3歳に見える美少年に上目遣いでご褒美を要求されるとか……トキメキが止まりませんわ!


「少しだけですわよ……///」




 ちゅっ……



 軽く彼の唇に口付けると、彼は魔性の笑顔で「もっと、全然足りない……」と言って私の頭と腰に手を伸ばし、長く口付けてきました。





 んんんん〜〜っっ!!////




 ……コンコン



 !!!!!あっ!メイドが呼びにきたみたいだわ




 瞬間、シエルは転移していき、部屋には真っ赤になってベットでうずくまる私と困惑した様子のメイドが取り残されました……。もーーー!後でお仕置きね!





 準備を整えて、学園に向かいます。


 チェックで膝丈までのひだ付きのスカートと紺色のブレザー。真っ赤なリボン。2つに結んだ髪を縦ロールにして準備は完璧!!さ!戦場に……じゃなくて学園に行くわよ!



 今日は三年次の皆様の卒業式。1年次の私は在校生代表として卒業生の皆様をお送りするための演説もあるから少し緊張するわ。……でも今日でようやくあの自意識過剰な殿下がご卒業されるし、少し清々するわね。




 学園に着くと、私のお友達がすぐに集まってきましたわ。



 右からマリー、ルリア、エリカ、アンジェリカ……まぁ、いつものことですけど、次々に話しかけられたら誰と話してるのか分からなくなりそうね。



「お姉様〜!聞いてくださいな!あの無礼者、また殿下の側に侍って我が物顔で王族専用スペースで休憩していますのよ!!全く信じられませんわ!!」



「本当に!正式な婚約者であるお姉様を無視してあんな女をそばに置く殿下も殿下ですわ!私たち貴族を蔑ろにして、あんな女に入れあげていては将来が心配ですわぁ」



「いつまであの女を放っておくのですか?お姉様が一言いえば国王陛下もすぐに鉄槌を下して下さいますわよ!なんせ国王陛下の妹君の娘様で、陛下はお姉様のことを溺愛しておられますもの!あんな殿下よりも!」



「……皆さま。心配してくださるのはありがたいのだけれど、私、殿下の婚約者になった覚えはないし、ましてや殿下の側に誰が侍っていようと関係ありませんわ。あと、殿下も一応王族なのですからこんなことを聞かれたら不敬罪にされてしまいますわよ。お気をつけて下さいね?」


 にっこり笑って否定すると、興奮気味だった彼女達は目に見えて落ち込んでしまった。少し言いすぎたかしら?


「あら、ごめんなさい。少し強く言いすぎたわね。貴女達は私の心を慮ってくれたのでしょう。それに関しては嬉しく思っているのよ。気を害したのなら謝るわ。」



「と、とんでもありませんわ!!!お姉様の御心を勝手に邪推してしまって申し訳ありません!!確かに、お姉様に殿下では勿体無いですわ!殿下とあの方もある意味ではお似合いですものね!」



「お姉様にお似合いの方なんてこの国にいらっしゃるのかしら?お姉様の美貌に見劣りしない点だけでは殿下もまあまあ良い線いってたんですけど」



「かの英雄様は信じられないほどの美貌だとお聞きしましたわ!確かお姉様の家が後見人をしているとか……王女様の求婚も断って、爵位がもらえたらすぐに求婚したい相手がいるって言ってましたわよね?」




 ちょ、やっぱり噂になってるのね!!そ、その相手がまさか自分だとは言いづらいわ……見た目だけは16歳の私の方が上ですし、私が誑かしたみたいだもの……




「まさか、お相手は……!?」




「お姉様の隣に並んでるあの方の姿を拝見したことがございますけど、本当にお二人ともお似合いで、1枚の絵のようでしたの!!!」




「あ、ありがとう……そろそろ会場に向かいましょう。卒業式が始まってしまうわ。」






 ♢♦︎♢



 卒業式はつつがなく進み、私から卒業生へ向けての演説を終え、卒業生代表の殿下に壇上をお譲りしようとしましたら、殿下とともに壇上に上がってきたお二人に止められてしまいました。




「私は卒業と同時に王太子としての婚約者を決めることになっている!その婚約者は……ここにいるアリス・パンダイア嬢だ!」




 ザワザワ……ザワザワ……




「静粛に!!!!そして、我が物顔で我が学園を牛耳っているスティア・フォーラム!!貴様を王族に対する不敬罪で引っ捕らえる!もちろん学園は退学だ!そして、労働奴隷として私に仕え罪を償え!」




 ドヤァって顔して宣言した馬鹿王太子、え、あれバカでしょ。ていうか、王族に不敬罪?私なんかしましたかしら?




「あら、私何かしましたかしら?」



「この期に及んで言い逃れをするつもりか!貴様は次期王妃である我が婚約者、アリスに数々の嫌がらせを仕掛け、学園ぐるみでいじめさせていたであろう!」




「はぁ……?私、そちらの方とは話すらしたことありませんわよ?」



「い、いつも私を無視して、取り巻きの人に嫌がらせをさせるんです!!!学園ではバザール様とアラン君とキース君とフェルナンデス様とルーツ君しか話しかけてくれなくて……!女の人は全員私に話しかけてくれないんです!!!絶対、スティア様が私を無視するように言ってるんです!!みんなでいじめてくるんです!」




 ……??何も言ってないけど、何かあったら面倒なことになりそうだと思ったから話しかけることはしなかったわね。それでみんながあの子に話しかけなかったのかしら?それって不敬罪になるの?ていうか、今発表されたんだから王族への不敬罪なんか通用されないと思うんですけど?




 色々言いたいことあるけど、とりあえず



「シエルに癒されたい…………」





「呼んだ?」


 いつのまにか、殿下と私の間にシエルが立っていました。あら、今日は貴族用の服を着てるのね。式典にでも行ってきたのかしら?いつもと違って白の式典服に身を包んだ彼は王族の風格がある……ま、魔王だもんね。壇上に胡乱げな目を向けていた生徒たちの目は一斉にシエルに釘付けになっている




「シエル!!!!どうしてここに??!」




「っっっきゃー!!!シエルさまぁ!!助けに来てくださったんですね!私、わたし……とっても怖くて……!助けてください!!!」




 彼女の言葉は耳に入らないようで、ただひたすらに私の目を真っ直ぐに見て彼はこう言った




「魔国との休戦条約を取り付け、魔物殲滅に貢献した褒美に公爵の爵位を賜ってきたよ。……これでやっと君に求婚できる。……」




 シエルが片膝をつき、わたしの右手の甲に口付ける



「スティア・フォーラム嬢、私、シエル・ラーシャは永遠に貴女を愛すると誓います……私と共に永遠を歩んでくれますか?」




「喜んで……!!////」



 感激して、涙が溢れでる



 彼は何処からか指輪を取り出して、私の指にはめた



「これでやっと俺の物だ……ティア」




 ぁぁぁ、もう!耳元で色気たっぷりな声で愛を囁かないで!





「…………どう言うことなの!?なんで隠しキャラのシエル様が悪役令嬢に求婚してるのよ!?!?」




「ま、まて!英雄殿!そのものは王族に対して不敬罪を働いたため、俺の奴隷に……な、」




 バカ王子の言葉は最後まで続かなかった。シエルがものすごい冷たい瞳で王子1人に絞って殺気を出したからだ



 そしてニコッと笑ってこう言った



「今日は機嫌が良いからね。卒業式とやらなんでしょ?今の言葉は聞かなかったことにしてあげるよ。この先も生きていたいならさっさとそこの女と一緒にここを立ち去ってくれる?不愉快になって殺したくなる前にね。」




「シエル様!な!なんでですの!!!その女は私を……いじめた悪役令嬢で……!!ヒロインは私なのに!!!!」




「?君をいじめたからなんだって?どうでも良いよ。ていうか、仮にティアが君を殺したとしても俺のティアへの気持ちは一ミリたりとも変わらないよ?」




「なっなっなっ!!!この……!悪役令嬢のくせに!!!!!なんで!?!?」




「その、あくやくれいじょう?ってなんですの?あと、確かに私は貴女に話しかけなかったけれど、それは貴女が私にいじめられたって泣き喚いたりするから話しかけたらどんなにねじまげて受け取られてしまうかと思って無視しただけですわ。ほかの友人に貴女を無視しろなんて言ったことはないですけど。無視されたのは色々な婚約者持ちの殿方に擦り寄っていたからでしょう?貴女から受けた誹謗中傷は全く気にしておりませんから安心してください?……でも、シエルを呼ぶ許可は全く出しておりませんわ。勝手に私の未来の夫の名前を呼ばないでくださる?」





「ティア……嫉妬してくれたの?」




「もう……嫉妬なんて、……ちょっとだけしましたけど。」




「可愛い……。ティア。早く帰ろう?」




 そう言ってシエルは私を軽々とお姫様抱っこしてしました。



「ちょっと……!まだ……」




「もう卒業式?とか言うのの時間終わったみたいだよ?ほら、」



 時計を見ると、たしかに予定していた卒業式の時間はとっくに終わっている……殿下の卒業生代表の話で変なことになったものねぇ……




「はーい、じゃあみんな、ここのバカ王太子は廃嫡されるそうなので。みんなはこんなバカにはならないように気を引き締めて残りの時間を学業に勤しんでください。あと、スティアに一方的に好意を寄せている奴は手を出したら殺すから覚悟してね?じゃ、これで卒業式を終わります。解散〜!」




 ゆ、ゆるい……!そして勝手に私の話をしないで!恥ずかしいじゃないの!!!




 そのあとは彼のお姫様抱っこで馬車まで運ばれて、家まで彼の膝から降りることはできなかったわ……


「ティア、可愛い。食べちゃいたい。ねえ、もう公爵になったよ?ティアを俺のモノにしてもいい?」




「だ、ダメ!そういうのは結婚するまでダメ!」




 ほんと、彼が子供の体じゃ無かったら照れて気絶してたかもしれないわ……もう!



 」




 ♦︎♦︎♦︎


 魔王城にて



「はぁ、ティアが可愛すぎてつらい。なぁ、どうやったらティアに嫌われずに俺のモノにできると思う」




「さっさと仕事してください!やっと戻ってきたと思ったら姫の話ばかりで……まったく。……大人の姿になれるとお教えすればよろしいのでは?」




「一回大人の姿で迫ったら逃げられた……」




「ほぉ、前世から変わってないですなぁ。あの頃の殿下も姫に甘えるために年下の姿になってましたからな!」



「ちょっとずつならしていけば受け入れてくれるよな?でも、子供の姿の時の方がセクハラしても怒らないんだよね……んー難しいなぁ」



「全く……魔力の節約だなどと嘯いてどう言うつもりかと思えばそんな理由ですか!まったく、天下の魔王が情けないですぞ!」



「うっさいなー。あー後2年か……長いな……最後までしなかったら良いかな?」



「……」



「おーい」



「仕事しろ!!!!!姫に言いつけますよ!!!」



「はいはい〜。すぐやればいーんだろ。」




 ……全く、我が君は……本気を出せばこのような仕事など一刻も経たずに終わらせる技量をお持ちなのに、あいも変わらず姫君に関してはヘタレですな


 前世でも、姫君の夫の座につくためだけに魔王になったお方……そしてまた姫君のために人間などと不可侵条約を結んで……


「そういえば、姫君の変化の方はどのような様子ですかな?」



「んー、キスでちょっとずつ俺の魔力を分け与えてるが、やっぱ繋がってちゃんとした魔力を送らないと魔人化はできないな。まあ、俺の好みももう少し育ってからの方がいいし……2年後でも……いや、今のスティアも可愛いしな……んー、まぁ、スティアが人間界を去るのは2年後だし、それまでは我慢する」




「全く、そんなことでは姫君を奪われますぞ?」




「そんなことはさせん。ちゃんと毎日俺の魔力を送っているから自己再生と防御は完璧だし、スティアの魔力はどこにいたって見つけられる。」



「相変わらず回りくどいですなぁ。そして外側から攻め過ぎです。もう我ら魔族は姫君を花嫁として迎えるのを楽しみにしておりますのに!」



「だって、スティアが人間としても幸せになりたいって言うから……できることは叶えてやりたいからな」




「全く!魔王が英雄や勇者といわれる日が来るとは思いもしませんでしたよ!貴方が不在の間魔王をしていた私がどんな気持ちで貴方がた勇者軍を迎えたとお思いで?」



「魔物は殺したが、魔人は殺して居らんだろう?まあ、今後必要があれば殺すが。別に俺は人間は恨んでないし戦う意味もない。あんなか弱いものたちを虐めても楽しくないからな。」



「本音はスティア様が転生したのが人間で、人間を殺したらスティア様が悲しむからでしょう?」



「う……まぁ、それもある。」



「全く、魔王も腑抜けになりましたな!世界統一の夢は諦めたのですかな?」



「じゃあ、こうしよう。俺は魔王であり勇者だ。表の人間の世界は勇者として統一し、魔界は魔王として統一する。これで世界統一だ。」



「とてつもないことを仰りますな。まぁ、貴方ならそれも可能でしょう……」



 全く、この方はどこまで……流石は我が魔王ですな



「あ!もうティアの学校が終わる時間だな!迎えに行く約束をしてあるんだ。じゃあな!」



「あ!シエル様!!!!……全く、仕事は……終わってある……はぁ、できるなら最初からしてください……というか、話しながらこの量を……相変わらず化け物ですな」



 私が1日かけて終わらせる仕事を話の片手間に2時間で終わらせて行くとは……相変わらず規格外な方だ。





 ♦︎♦︎♦︎



「スティア、迎えにきたよ。」



 ティアに少しでも早く会いたくて、下校時間になった学園に入る。


 門番も俺のことは知っているし国王陛下に許可証を貰っているから普通に入れる



「きゃーっっ!!!!」



 人間の女が何やら喚いている。全く、魔人は人間よりも精巧な耳の作りをしているから五月蠅くてかなわんな……



「もう!!学園内に入ってきたら大騒ぎになるからやめてくださいと言ったでしょう?シエルは今やこの国の……勇者なんですから……」


 ちょっと拗ねたように話すティアは大変可愛らしい。でもこの日課は絶対にやめてあげない。学園内にはまだティアに好意を寄せるオスもそこかしこに居るし、手は出せないだろうけど、こうやって牽制しておかないとね?




「ごめんね?少しでも早くティアの顔が見たかったから。早く帰って俺を甘やかして?今日は仕事頑張ったから疲れた……」



 少し意識して子供っぽくティアに甘えると、ティアは直ぐに許してくれる。ティアは昔から子供姿の俺に甘い。


「……しょ、しょうがないですわね……帰ったら、ですわよ?」



 ……こんな可愛い顔を奴らに見せるのは腹立たしいけど、同時に優越感もある。ティアにこんな可愛い顔をさせられるのは、俺だけだ。


「じゃあ、お手をどうぞ、我が姫。」



 馬車に乗せるために彼女の手を取ると可愛らしい笑顔で俺の手を取るティア



「あら、ありがとう。小さな紳士様。」




 ……小さな……は少し不満だな……



「ねえ、ティア。そろそろ魔力も溜まってきたし、大人な俺も見せられるんだけど、どう?」



「ま、待って!心の準備ができてないから!!!」


 もっと可愛い反応が見たくて、18歳くらいの姿に変身し、ティアの耳元に顔を寄せる


「ティア、愛してるよ」



「ひぁっ!!!ちょ、色気が凄いから離れてくださいまし!!!///」


 全く、我が姫はまだまだ大人な俺は受け入れてくれないらしい。でも、少しずつ慣れてもらえないと困るんだよね。



「だーめ。結婚するときはこの姿なんだから。慣れてね?」



「し、刺激が強すぎて、無理ですわ!!///あ、シエルが嫌いな訳じゃないんですのよ!?ちょ、ちょっと心の準備ができてないだけで……け、結婚式までには大人な貴方も受け入れるから……まってて?」


 顔を赤らめて、涙目で訴えてくるティア。


 いつもより俺の目線が高いから自然と上目遣いだ。



「あんまり可愛いこと言うと、食べちゃうよ?」



「た、食べっ!?!?」



「勿論、――――的な意味で」




「は、破廉恥ですわ!そういうのは結婚してからですの!じゃないと、シエルのこと、嫌いに……嫌いには……成れないけど……その……1日口ききませんわ!」




「そんな!!!!それは嫌だ。じゃあ我慢する。」




 これ以上ティアを可愛い顔にさせる前に子供の姿の俺に戻る。



「ちゃ、ちゃんとお嫁さんになったら、その、しても良いですから、ね?」



 うん、やっぱりこれはティアが悪いと思う。この姿じゃなかったら即刻襲ってるよ?……全く、可愛すぎるのも考えものだな




 ♢♦︎♢



 その後……勇者シエル・ラーシャと公爵令嬢スティア・フォーラムは結婚し、末永く幸せに過ごした……。



 結婚後、勇者シエルは魔物討伐や王都の警備強化に努め、他国との戦争に圧勝し、その国の王になった。


 そして僅か3年でその国を立て直し、世界一の経済大国になった、そしてその王国の名はスティア帝国と名付けられ……経済、武力共ににてどの国もスティア帝国に敵う国はなく……。また、魔国とも親密なやりとりを行い、まさに世界を統一したも同然であった。



 しかし、スティア帝国の若き王は生涯1人の妻を愛し抜き、四男四女を設けた。


 人前に出る際は顔を隠していたがその理由は彼の美貌に人々が魅了されてしまったからだと言われている。


 その妻、スティアもその美貌を見せるのは夫の前とごくわずかな身内のみで、結婚後何年たってもその美貌は失われず、まさに傾国の美女と言われた。まぁ、傾国どころか、夫は妻のためにかなり国を発展させたが……


 その後、20年経った頃には第1王子に王位を譲り、その王子も妻を1人娶り、側室は作らなかったと言う。


 100年経った今も、変わることなく豊かなスティア帝国は魔人との交流も深く、現在では普通に魔人も人間も街で共に暮らしている。


 そして、最近は又他国への牽制のために勇者が担ぎ上げられたのだが、その少年の傍には1人の少女が寄り添っていた……



「ねぇ、シエル。名前、変えなくてよかったの?見た目も大して変えてないし……バレないかしら?」



「大丈夫だよ。今の僕は10歳の少年。君も10歳の少女。しかも髪色は2人とも茶色にしてるし、大丈夫さ」



「確か、今の国王は、私たちの曾孫よね?人間の血も混じってるから大分年を重ねているみたいだけど……バレないかしら?まさか、曾おばあちゃんとおじいちゃんがこんなことしてるなんて知れたら……恥ずかしいわ!」



「君の名を付けた王国を他国に舐められるなんてことはあってはならないからね。もう魔王業も息子に任せてきたし、そろそろ人間界に戻ってみたいって言ったのはティアでしょ?大丈夫。今は楽しもうよ?」



「……んーそうね!面倒なことは後で考えるわ!」




「何処までも一緒に来てくれるでしょう?僕のティア。」



「しょうがないから後1000年は一緒にいてあげるわ。その先は分からないわよ?」



「また転生しても僕は君を見つけ出すから関係ないね。何万年後でも僕たちは一緒だよ?」



「……っっ///ま、まぁ、私で良ければ、待っててあげなくもないわ?」



 ラブラブバカップルは何百年、何万年経っても健在だったそうです。


 さて、この少年と少女がまたまた国を興すのはまた別のお話……では。また今度!

チート夫婦のお話をまた書きたいと思います!

ちょっとでも面白かったなーとか、続き読みたいって思って下さったら評価して下さると嬉しいです!ではまた!

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[一言] >「…………どう言うことなの!?なんで隠しキャラのシエル様が悪役霊視に求婚してるのよ!?!?」 悪役令嬢
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