短冊に願いを
「たなばた、って何?」
「ん? 七夕はね、すっごくロマンティックな日の事なの」
「ろまんてぃっく?」
「ごめんごめん、よく分かんないよね。むかーしむかしにね、織姫様っていうお姫様と、彦星様っていう王子様がいたの」
「うん」
「でね、この二人は一年に一度しか出会えないの」
「え、どうして?」
「んーと、何だったけな。なんかいろいろあってなの」
「お母さん適当すぎるよー」
「だよねー後で調べてみよっか」
「うん」
「それでね、その二人が出会う日っていうのが7月7日、つまり七夕って呼ばれる日なの」
「ふーん」
「あれ、自分から聞いといて興味失くしちゃったパターン」
「そんな事ないよ?」
「ならよし。そしてこの日は皆で短冊に願いを書くっていう風習があるの」
「ふうしゅう?」
「んーとね、昔からの行事っていうのかな。ほら、毎年年越しにおそば食べるでしょ? あれとおんなじ感じ」
「おそばと一緒なの?」
「おそばと一緒ではないんだけど、毎年決まった時期にする事があるでしょ。そういうものの一つなの」
「そうなんだ。でもなんで二人が会う日に願い事を――」
「んーそこも後で調べてみようね」
「うん、わかった」
「ほんといい子だね君は。という事で願い事を考えよー」
「なんでもいいの?」
「そう、なんでもいいの」
「んーどうしよっかな」
「なんでもいいんだから、でっかい事願っておきなさい」
「お母さんは?」
「ん?」
「お母さんは、何をお願いするの?」
「んーそうだなー。あるけど、内緒」
「えー何それー」
「ふふ。優翔が願い事を決めたら、その時教えてあげるわ」