真優 3
「ちょっと、いつまでゲームやってるのー。宿題ちゃんとやったの?」
「やったよー」
「嘘だー。じゃあ見せてごらんなさいよ」
「もーちょっと待ってて」
優翔はゲームのコントローラーを床に置き、たったったっと二階の自分の部屋へと軽やかに走って行った。そして何かごそごそと探るような音をさせたと思ったら、また軽やかな足取りで私の方へと戻ってきた。
「はい」
息子の出してきた連絡帳を開き、今日の宿題を確認する。算数と漢字。どれどれとそれぞれの中身を確認してみる。
――で、出来てる。
しかも適当ではなくちゃんと計算し、ちゃんと漢字の読み書きもきっちり書けている。
でも優翔は帰ってくるや、ささっと手洗いうがいをすませ、すぐさまゲーム機に飛びついた。宿題に手を出していた時間などないはずだ
「優翔、いつやったのこれ?」
「ちょちょいと時間のある時に」
なんだそりゃ。ちょちょいととは小賢しい。しかしという事は、学校にいる間に優翔はこれを既に終わらせていたという事か。
「大したもんだねー君は」
私が感嘆の声を漏らしていた時には、優翔はすでにゲームとにらめっこを再開していた。
学校にいる間に宿題を終わらせようなんて事を今まで考えたことなんてあっただろうか。ましてや小学校低学年の段階で。
誰に似たのか。そう思った時、この部分は私に全くない部分だ。要領よく時間を有効に使う。そういった事は私には全く出来ない。適当におおざっぱにそれなりに、が信条の私には史徳のきちっとした部分を羨ましくあるいは疎ましく思ったりした。
しかしこうして改めて息子というフィルターを通してその姿を見せられた時、夫の性格の素晴らしさを改めて実感した。自分にはないものとして、夫の良さをちゃんと引き継いでいる事に感動を覚えた。
と思っていたら、恐ろしくおおざっぱな一面も持っていたりする。何をどう間違えたのか分からないが、遊んで帰ってきた優翔の足を見ると左右で全く違う靴を履いていた事があった。どうしたのかと尋ねたら、
「靴箱から適当に取った」
なんて真顔で言うもんだから、靴ぐらい揃えなさいと言ったら、
「歩けるし走れるし問題ないよ」
なんて言われて、あーその感じ私―!って思って腹立つやら嬉しいやらもやっとさせられたり、なんとも言えない気分になってでも優翔好きだーってなる親心に自分自身バカみたいで笑けて来る。
まあ結局優翔はいい子で元気に育っていて、間違いなく私達は幸せだ。