真優 L-77
気付けば私は泣いていた。
そうだ。この子の抱えている痛みを思い出した。そしてこの世界で彼女の姿の中に私が憑依(という表現が一番近い気がする)する事で、彼女の記憶を共有しそれを繋げて見る事がようやく出来た。
頭の中で何度も両親に蹂躙される幼い女の子の姿が見えた。
鬼だ。人の所業ではない。こんな事を現実にしている人間とされている人間がいる事にショックを隠せなかった。煮えたぎる怒りは今にも爆発しそうだった。
――そうなんだ。きっと、そういう事なんだ
やっとわかった気がする。この世界が終わらない理由。
皆願ったのだ。一つのシンプルで、切な願いを。
誰にも壊されたくない一つの願い。それがこの世界をつくった。この世界に私達を留めた。
7月7日、私達が殺された瞬間、私達の願いが世界に抗った。
まだ終わりたくない。幸せでいたかったという想いが。
ここは願いの世界だ。願いが支えている世界なのだ。
幸せになりたい。ただ一つのその願いが。
今日も7月7日。
もう何度繰り返したか分からない。
でも、おそらく終わりは近い。
願いが世界を止めた。けど、幸せを叶えるのは自分自身だ。そこから先は、私達次第だ。
――でも、どうすればいい。
「あのさ」
ふいに横から声がした。
「変な事言っていいかな」
優翔が私の横に立っていた。
「全部、思い出した」
そうか。あなたもそうだったのね。
「母さん、なんだよな」
涙が出そうになった。
でも、泣くにはまだ早いか。




