静華? L-30
誰かに真実を告げられたわけではない。これは私がこの世界で学び、たどり着いた自論に過ぎない。だからもう、あり得ないだとかそんな考えは捨て去った。
この世界は繰り返している。
7月7日を何度も何度も。
私は七夕の今日、この咲良峠高校の2-3のクラスメイトとして転校してくる。
名前は香椎静華。黒髪ショートの大人しそうな見た目の少女。
『も……ろ………え……』
どす黒く怨念にまみれた声が闇の深くからまた聞こえる。
何度かこの世界の中で聞こえてきたこの声。この声こそ香椎静華本人のものに違いない。どういう存在かは分からないが、そう私は解釈している。
どういう理由か、この世界では私は香椎静華として存在している。
おそらく一番最初にこの世界に来た時、私はひどく混乱したに違いない。しかしここまで来て蓄積された記憶がようやく私に本当の私の事と世界の事に気付かせ始めてくれていた。
「じゃあ席は……藍田の横だな。あそこに座ってくれ」
藤林と呼ばれた担任が指定する席も毎度同じだ。
そして、藍田優翔。
まだ全ての答えにはたどり着けていない。まだ足りていない。
でもいつか全てが分かった時、その時この世界は本当の終わりを迎えるはずだ。
――優翔。
私の息子。
あなたはまさか、自分の隣に姿を変えた母親が座っているだなんて知る由もないでしょうね。




