真優 5-2
「はあーつーかーれーたー」
帰ってシャワーを浴び、クーラーの効いた部屋でソファに倒れ込む。心地の良い疲れでそのまま眠りに落ちそうだったが、いけないいけない。晩御飯の準備をしなければ。
いやでもちょっとだけ。ちょっとだけ眠らせて。と思っていると、あっという間に意識が沈んでいく。
――おやすみなさ……。
がちゃっ。
玄関の方で音がした。
――ん?
誰だろうか。時間は17時。優翔は帰ってきて自分の部屋にいる。史徳が帰ってくるには早すぎる。早退でもしたのだろうか。
私は眠りに落ちかけた意識を呼び起こし、ソファから立ち上がった。
「史徳?」
玄関へと向かった。
――え?
そこには制服を着た見知らぬ女の子が立っていた。
「……誰?」
全身が粟だった。
歪に笑いながらこちらを見つめる少女の姿は異様そのものだった。
「……あ」
少女の手には、ナイフのようなものが握られていた。
「なんなの、あなた……」
少女は笑顔のまま、ナイフをこちらに向けた。
「幸せそうで、いいですね」
「え?」
「私、ダメなんです。幸せって」
「……何言ってるの?」
「だめ、我慢できない無理」
少女はいきなりがっと踏み込み、私の懐に飛び込んできた。
どぐっ。
「ご……ぶ……」
あまりに一瞬の出来事だった。
少女の手にしたナイフは私の脇腹にずぶりと根元まで差し込まれていた。刺された部分から一気に服は赤に染まり、床にぼとぼと血が零れ落ちた。
熱さと痛みが一気に全身を支配する。私はそのまま床に崩れ落ちた。
身体に力が入らない。
――……史徳……優翔……。
私、死ぬの?
こんな……。
私は力を振り絞って少女をぎっと睨み上げた。
なんで、私がこんな目に。ただ幸せに過ごしていただけなのに。
“私、ダメなんです。幸せって”
少女の言葉を思い出す。
幸せだから? 幸せだから刺されたの?
――なによ、それ。
認めない。そんなの認めない。
私達の幸せを、こんなふうに壊されるなんて、絶対に認めない。
ぜったい、に、みと、め、な……。




