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優翔 L-40

「香椎静華です。よろしくお願いします。」


 僕の中で、果たしてこの今日は初めてなのか。

 違う。僕はこの今日を知っている。なぜなら、僕は彼女を知っている。


 こんな事が現実で起きえるのか。科学は得意じゃないからよくは分からない。

 この世界には四次元といったものが存在していて、四次元空間には多次元という別の時間軸、空間軸に自分と同じ人間が別の生活を送っていたりするなんて話を聞いたことがあるけど、それが本当の事なのか可能性の話なのか希望や予想の話なのかは分からない。

 それと同じ事で、今起きている事が一体どういう類のものなのか、僕にはさっぱり分からない。


 7月7日。今日は七夕だ。

 この七夕は何度目の七夕なのだろうか。

 

 ――ループしてる……。


 それが一番納得のいく答えだった。

 ループの前の記憶は朧より遥かに薄いものだったが、それでも頭の片隅にその残骸は間違いなく積み上げられている。この違和感は僕へのメッセージだ。


 ――思い出せ。


 何を。何をだ?

 一体前の七夕では、僕はどんなふうに過ごしていたんだろう。

 分かっている事は、僕は彼女を知っているという事だけでそれ以上はまだ何も分からない。

 香椎の方を見た。

 相変わらず静かに席に座っているだけで、周りに干渉する気などさらさらないような素振りだ。


 ――自分だけなのか。


 ふとそんな事を思った。

 この世界がループしているのだとしたら、それを自覚しているのは果たして自分だけなのか。

 

 僕は教室を見渡す。クラスの皆はあまりにもいつも通りだ。今日が繰り返しているなんて事は一切分かっていない。今日が初めての今日だと思っている。

 香椎。一人だけ異質な空気を放っている転校生。その空気は、果たして転校初日から来る緊張や不慣れから来るものなか。それとも、この世界のループを知っているからなのか。

 僕は香椎に近づいた。


「なあ」


 ――君だけは答えを知ってるんじゃないか。

 

 香椎がこちらを見た。


「僕達、もう何度も会ってるんだよな。きっと」


 香椎の無表情だった目が、驚いたように見開いた。その表情は何よりの答えだった。


 ――やっぱり、そうなのか。


「僕は、どうしたらいいんだ?」


 山ほど聴きたい事はある。でも出てきた一言はそれだけだった。


「……優翔」


 彼女が僕の名を口にした。それはひどく言い慣れた口調だった。


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