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Second Memory  作者: NAMAGOMI
1/2

ー序章ー

「 長かった本当に長かった。これでもう一度......」


 村の中心で老人が口元をぐにゃりと曲げ、不気味に笑って呟く。辺りには、恐怖で顔をグチャグチャにして死んでいる男性、我が子を守ろうと子どもを抱き死んでいる女性、もはや元が何だったかすら分からない位、原型を留めていない肉塊。


 この世の、地獄のような光景が広がっていた。



 何も見えないーー


 何も聞こえないーー


 何も感じないーー


 真っ暗な空間ーー


「............か?」


(声が聞こえる。いつぶりだろう声を聞いたのは。気のせいだろうけど)


「......ですか!」


(やっぱり聞こえる!)


 真っ暗な空間に一筋の光が射し、それが拡がり辺りは、やがて真っ白になるーーー


「大丈夫ですか!」


 優しい少女の声で、少年は目を覚ます。


 目の前には、白色半袖のブラウス、水色のスカート、綺麗な桜色セミロングの髪、雪のように白い肌、緋色の瞳の少女が、仰向けで寝ている僕を、前屈みで心配そうな顔をして、覗き込んでくる。


「よかった。やっと目が覚めた」


 上半身を起こし、辺りを見渡す、左右に森が広がり、ある程度整備された一本道しかない山道だった。少女は僕が目を覚まし安堵したのかその場にへたりこんでいた。


「何があったんですか?」


「わか」


 喋り終える前に少女の声で、声がかき消される。


「どうしたんですか!」


「えっ?」


「だって、涙......」


 少年は、言われて初めて気がついた。自分の目から頬を伝い落ちる涙に。


「どうしてかな? 君を見ていると涙が......」


 少女が困惑しつつも胸ポケットから薄緑色のハンカチを取り出し、僕の頬を拭ってくれた。


「ありがとう」


 気恥ずかしさと、ハンカチから漂う女の子特有のあまい香りに、赤面しているのを悟れないよう顔を背け礼を述べた。



 少年は落ち着きを取り戻して。


 今一番の疑問を、


 少女に尋ねてみた。


「ところで僕は誰なんですか?」


 瞬く間、世界が止まったかのような静寂に包まれる。


「 ......っえ!? えぇーーーーーー!」



「自分の名前も分からないんですか!」


「うん」


「産まれ育った故郷も!?」


「うん」


「こんな所で倒れていた理由も!?」


「う、うん」


 少女が質問するたび顔が徐々に近づき、果てには、息がかかりそうな距離まで近づいてくる。ブラウスから発育中の胸がちらりと覗かせている。少年が堪えきれず呟く。


「近いよ......」


「?」


 言葉の意味が分からないのか不思議そうに首を傾げる。


「あっ」


 数秒の後、頬を赤く染め、唇をわなわなさせ、少女が胸を両手で隠し体を一歩引く。正直かわいかった。


「それよりこれからどうするんですか?」


「どうしよ?」


 少女がため息をつき、口を開いた


「はぁ〜 取り敢えずウチに来る?」


「いいの?」


「いいもなにも、記憶が無いんじゃ他にどうしようもないでしょ」


 少女が立ち上がり手を差し伸べる。


(帰ったら、お父さんとお母さんになんて言われるかな)


 僕は、少女の手をとって立ち上がり少女と共に歩き出した。


「そういえば、まだ自己紹介してないね。私の名前はカティア」


         ・・・

 これがティアとの二度目の出会いだった。

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