真実 #5
剛ちゃんと私は、明日の再会を約束して城址公園を後にした。
私には、剛ちゃんに対する夏休みの宿題が出来た。
友達って何なのか、人を好きになるって何なのか…。私は、もう一度自分の心を
見つめ直して考えるつもりだ。
そして一月後、自信をもって剛ちゃんを好きだと言える自分に、なっていたいと
思う。
家へ帰る途中、私はオバケ病院に立ち寄り、茉菜の世界へ行った。
茉菜のおかげで、由美との友情を取り戻せた。
剛ちゃんと心を繋げることが出来た。
茉菜には、謝らなくちゃいけないし、感謝の気持ちも伝えたい。
私はスマホを取り出して、茉菜の電話番号をタップする。
呼び出し音が鳴る。頭の中で、茉菜にどんな言葉を捧げるか考える。
けれど、聞こえてきた応答は、呼び出し出来ない事を告げる合成音だった。
あれ、なんだろ? 電源入れ忘れてるのかな?
それとも、時間がずれた?
窓の隙間から当たりの様子を伺ったが、まだ日は高い。
このまま、茉菜の家を訪ねる訳にも行かず、私は自分の世界に戻った。
家に帰ると、お母さんに捕まって大目玉を喰らった。お母さんが怒るのも無理は
ない。
突然、学校を休んでみたり、何も言わずに家を飛び出したり。我侭な娘だ、私。
それでも、急な外出を侘び、由美と会って仲直り出来たことを報告して、母上の
怒りを納めて貰うことに成功した。
お母さんの虎口を切り抜けて、自室に入る。
姿見の前に立ち、子バケ鏡で茉菜の部屋を覗く。茉菜の姿は見えない。
どうしたんだろう。もう、帰宅している時間帯なのに。
茉菜世界にある時計を確かめる。日付は今日。時刻も私の世界と同じ。
いつも間には、時間のズレがゼロになっている。
これなら、電話が繋がる筈なのに、と茉菜に電話をしたが通じない。
一体ぜんたい、どうしたんだろう。
考えていても始まらないので、スケッチブックの一ページに
『ごめん & ありがとう』
と大書して、姿見の前に置いておいた。これで、茉菜には意味が通じる筈だ。
…けれど。その日、夜になっても茉菜からのコンタクトはなかった。
ベッドに腰掛け、ときどき子バケ鏡で茉菜の部屋を覗く。
真夜中を過ぎても、部屋の様子に変化はない。明かりも消えたままだ。
なんだか、胸騒ぎがする。
けど、昨夜あまり寝なかったからだろう、私はいつしか眠りの深淵に沈み込んで
いた。