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ふたりの。  作者: 須羽ヴィオラ
入れ替わり
20/49

入れ替わり #1

 土曜日の朝。

 その日は、お母さんの「アレやってコレやって」が始まる前に、知り合いと約束

があるからと言って、家を抜け出した。

 知り合いとは、もちろん茉菜の事。

 きっと、これ以上の知り合いというのも他に居ないだろうけど。

 茉菜との約束は、『9時にオバケ鏡の前』だったけど、気が急いたために30分

も前に到着した。

 そしたら、既に茉菜が居た。どんだけ早いの、と一緒に笑った。


 さて、この一日かけてオバケ鏡にまつわる現象を調査をしたのだが、その課程を

逐一ここに書いていたら、読むほうも退屈してしまうだろうから、結果だけ纏めて

書くことにする。


オバケ鏡について)

 原因も理屈も全く分からないけど、茉菜と私の世界はオバケ鏡で繋がっている。

 見た目は普通の鏡と同じだけど、鏡の面を通り越して相手側の世界へ行くことが

できる。

 鏡を抜けられるのが茉菜と私だけなのか、他の人もそうなのかは分らない。

 誰か連れてきて試せば良いのだろうが、オバケ鏡の事は秘密にする約束なので、

それは出来ない。まぁ、私たちが行き来できれば、それで充分だろう。


 相手の世界に行った場合、そこに居られる時間に制限は無いらしい。

 数学テストがあった日は、ほぼ丸一日入れ替わっていたけど、特に何も起きたり

しなかった。


 最初の入れ替わりのときは、鏡を通り抜ける際に意識が霞んだけど、そのあとは

体が慣れたのか、正気を保ったまま貫けられるようになった。


 それから、オバケ鏡の鏡の面をよく見ると、相手側の世界が透けて見えることも

分かった。この事だけでは大して役に立たないのだが、このあとで説明する特性と

連動する事で、重要な意味を持ってくる。


子バケ鏡について)

 いきなり『子バケ鏡』という新しい単語が出てきて、戸惑われた読者もいること

と思う。子バケ鏡とは、茉菜と私の持っているスマホのことだ。

 入れ替わりの第一日目、茉菜と私はスマホを持ったままオバケ鏡を通り抜けた。

 どうも、そのことが原因で、オバケ鏡の性質の一部が私たちのスマホに引き継が

れたらしい。だから、私たちはそれを『子バケ鏡』と呼ぶことにした。


 子バケ鏡の特性、その1。

 スマホで手鏡アプリを起動した状態で、茉菜と私が同時にスマホの画面にタッチ

すると、その場で入れ替わりが起きる。なにげに凄い。

 入れ替わりの第一日目、私が茉菜の部屋から、自分の部屋に一瞬で戻って来れた

のは、このため。

 入れ替わりの第二日目。前日に部屋の姿見を後ろ向きにしておいたので、部屋を

出る直前に、スマホの手鏡アプリで身だしなみのチェックをした。このとき、偶然

スマホ画面にタッチして、それと知らずに入れ替わりが起きたようだ。

 この日、入れ替わりが元に戻ったのが、いつなのかは良くわからないけど、多分

同じように偶然スマホ画面に触れたのだろう。


 人間がスマホの小さな画面を通り抜けるなんて、甚だ理解しがたい話だけれど、

茉菜が言うには、スマホは単なるスイッチで、オバケ鏡を通してトンネル効果的に

すり抜けている、とのことらしい。

 難しすぎて、私には何を言っているの分からないけれど。


 子バケ鏡の特性、その2。

 オバケ鏡を通して、向こうの世界が透けて見える事は前に書いた通り。同じ様に

手鏡アプリを起動した状態で、スマホの画面から相手側の世界が透けて見える。

 もっと凄いのは、スマホのカメラを通してオバケ鏡を見ると向こうの世界が鮮明

に見てとれるという点だ。

 これはオバケ鏡に限った事ではなく、スマホのカメラを通して他の鏡を見ると、

向こうの世界が見えることが分かった。ただし、こちら側の世界と同じ場所に鏡が

ある場合だけ。そうでない場合は、只の鏡としてしか映らない。

 例えば、部屋にある姿見をスマホのカメラを通して見ると、茉菜の部屋が鏡越し

に見えることになる。

 この特性は、当初大して役に立つとも思えなかったのだけれど、後になって非常

に重要な役割を果たすことになる。


携帯電話について)

 茉菜と私で携帯の電話番号が違う事は前にも書いた。

 試しに、お互いに電話してみると繋がった。

 繋がるのは、お互いが同じ世界に居る場合でも、別々の世界に分かれている場合

でも同じ。それぞれが、別な世界にいて連絡手段があることは有りがたい。


 さて、これだけの事前情報を揃えた中で、いよいよ茉菜と私の入れ替わり作戦が

始まることになる。

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