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ふたりの。  作者: 須羽ヴィオラ
出会い
19/49

出会い #5

 大変なこと?

 茉菜の表情を見れば、それが並々ならぬ問題であることが読み取れる。

「何? 一体何があったの?」

 茉菜が、心底こまったという顔で私の目を見る。その視線が刺すようで痛い。

「芽菜、一昨日の体育の時間に、ソフトの試合に出たでしょ」

「出た出た。私、大活躍だったんだよ。三打数三安打。最後はサヨナラホームラン

打ったんだから。見た見た? って見れないか…」

「それよそれ」

 と茉菜が恨みのこもった顔で私を睨む。

「あなた。その試合の後に、ソフト部の高橋さんから、日曜の練習試合の助っ人を

頼まれて、OKしちゃったでしょ」

「あぁ、そうだった、そうだった。その後、高橋さんが何にも言って来ないんで、

代わりの人が見つかったのかと思ってたんだよね。なるほど、あれ茉菜の世界の話

だったんだ」


 やっぱり。と茉菜が泣きそうな顔で溜息を吐き出す。

「こっちは大変よ。今日、高橋さんがソフト部のキャプテンだって人連れてきて、

『これがユニフォーム。スパイクとグローブは当日決めよう』とか言い出すから、

私、何のことか全然分からなくて…」

 はぁー。とまた茉菜の溜息。

「そんな約束した覚えないって言ったら、高橋さん間違いなく約束したって。周り

の女の子たちも、確かにそういう約束してるの聞いたって言うし」

 茉菜が頭を抱えて、力なくしゃがみ込む。

「最後はキャプテンって人が怒り出して。『試合の予定は変えられない。他の人を

探す時間も無い。立ってるだけで良いから出ろ』って事にされちゃった…。嗚呼、

どうしよう、私。ソフトボールなんてやった事ないよ」

「茉菜って、運動苦手なの?」と聞くと

「走ったり、飛んだりの体力はあるんだけど、ルールが絡む球技はだめなの。考え

ながら体を動かすってのが出来ないのよね」


 うーむ。それはさぞや御困りでしょう、茉菜殿。でも、ご安心めされい。

「その試合、私が出てあげるよ」

 えっ。という顔で茉菜が私を見上げる。

「元々、私が高橋さんと約束したんだし。私がその練習試合、出る」

 茉菜の顔に、今度は不安の影が差す。

「芽菜。あなた、それで本当に大丈夫なの」

「平気、平気。絶対にバレないって、前の体育の時だって、誰も気がつかなかった

でしょ。それに、バッティングセンターで鍛えてますから」

「いや、そうじゃなくて、私が心配してるのは、芽菜って何でも安請け合いしそう

だから、他の用事と被ってるんじゃないかってこと」

「あっ…」

 茉菜って凄い。私以上に私のこと分かってる。…って関心してる場合じゃない。

「…そういえば、日曜はバンドの練習があった…」

「バンド?」

 ここで、私は由美たちとの音楽バンドの話を茉菜に語って聞かせた。


「へー。そんな話になってるんだ」

「逆に聞くけど。茉菜の方じゃ、そんな話ないの?」

「ない…。けど…。何か面白そうね。私、そのバンドの練習に出てみようかな」

「でも、その日が最初の練習で、何やるかも決まってないんだよ」

「好都合じゃない。前の続きから、とか言われたら困っちゃうもん」

 なるほど…。


 こうして、次の日曜日に私と茉菜は、入れ替わって過ごす事に話が決まった。

 その入れ替わりが理由じゃないけれど、オバケ鏡の件は、他の人には秘密にする

ことも決めた。ドカドカと人が集まったり、研究材料にされるのが嫌だからだ。

 それと、茉菜の発案で、明日の土曜日一日かけて、オバケ鏡に関わる現象の調査

をしてみることになった。

 何しろ、今起こっている現象について、私たちの知識は少なすぎる。

 ふいに入れ替わりが起こったり、元の世界に帰れなくなったら困るからだ。


 何れにしても、私たちの身に降りかかった、この不思議な現象は、私たちを不安

に陥れるどころか、却ってワクワクドキドキを期待させる素晴らしい機会を与えて

くれることになったのである。

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