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東京スカイスクレイパーⅡ 7話




「では、これから『竹』の対戦を始めていただきます。両者ステージへ」


アナウンス音を聞いて久々の扉を開く。こうして松竹梅に出るのは随分久々だと感じた。


自分の松竹梅の記憶は一つ。五年前の聖孝明との闘いの時だけだ。懐かしい。あの時に比べれば自分も随分大物になったような気がする。それもこれも、狩羅さんについてきた結果だといえよう。


ただ、その狩羅さんの娘のチームとしてまたここで闘うとはねぇー。


「さて、俺の相手は誰なんだい?」


ステージで待っていると向こうから少年が一人。


「は、始めまして! 野上瑛士っていいます! あ、あの古田良介さんですよね?」


「おっ、あぁ……そうだけど……」


「すごい! レジェンドの一人じゃないですか!」


「いやいや。それはないでしょう。でも、ファンなら嬉しいねぇ」


「はい。今日はまさか古田さんがいるなんて思わなくて、感激です」


「言ってくれるねぇ。ただ、今回は大人げないけど勝つしかないんだよ。いいよね?」


俺は少年に対してウィンクをする。


「確かに、立花さんが勝ってくれたから僕は闘わなくてもいいのか……」


瑛士くんは腕を組んで悩み始めた。さてはこの子、俺と一緒で巻き込まれてここにいるんだなぁ?


「でも、せっかくの伝説との対面です。しっかり闘わせていただきます」


すると瑛士くんは指を鳴らす。すると突然腰から何やらベルトのようなものが出る。


「これが僕の能力です! 変身!」


すると瑛士くんはベルトに手の平を勢いよくかざす。


俺もスライムを周囲に発生させておく。彼の姿がスマートな鎧の姿になる。


基本的に黒で構成されたデザインに腰のあたりにはまた何か気になる装飾がなされていた。





「なんか、仮面ライダーみたいだね」


「そうなんですよー! 僕好きで、こういう能力になったのかなぁと。そんじゃ、行きますよ!」


そういうと瑛士くんはそのまま走ってこちらに殴ってくる。


「スライム!」


スライムを前に出すと、瑛士くんは警戒して一度後ろに下がる。


「そのスライム。確か毒があるんでしたっけ? 迂闊に触れないってことっすね」


「そうだね。相手によっちゃあここの段階でおしまいって奴もいる。君はどうかな!」


俺はスライムを蛇の形にして、瑛士くんに向けて複数体放つ。


瑛士くんはそれを軽やかな動きで避け続けていく。


「ほぉー、実力はあるっぽいね」


瑛士くんは腰に軽く触れる。すると彼の両手に銃のようなものがあった。


「何!?」


俺は慌ててスライムを戻して壁を作るが彼の弾丸の一つが俺の肩に掠る。


「ちっ!」


「僕みたいなルーキーは初見殺ししかないと思ったんですけど、中々隙がないですね!」


瑛士がまた腰に触れると今度は手に剣を持ってこちらに迫ってきた。


スライムの壁を作るも、その剣はスライムを通り越してきてこちらに攻撃を加えてきた。


「くっそお!!」


思わず腹部に傷がつく。瑛士くんはあの鎧の腰にあるものは触れると大きくなる武器のようだ。


「そっちが剣で行くなら、こっちも!」


俺はスライムで剣を作る。硬直化したスライムのおかげで紫の剣が完成する。


俺は瑛士くんに思いっきり切りかかる。瑛士くんはそれを受け止める。


剣戟は長く続く。一度腰に触れさせる機会さえ与えなければ武器を変えることはできない。


瑛士くんは剣を一度大振りに降って、その後、俺に向かって思いっきり蹴りを仕掛ける。


俺は仕方なく距離をとる。再度彼を見たときには既に剣をしまっていた。


「剣勝負は終わりかい?」


「えぇ、古田良介は近距離戦には向いていないと聞いていたんですけどね……」


「そりゃお前……五年前の話だよ」


「でも、この闘い 僕の勝ちですよ?」


ニヤリと笑った瑛士くんに俺は驚愕した。その直後、足が動かない。


足が地面から出てきたチェーンで固定されて動かないのだ。


「さてっと、必殺!」


瑛士くんは思いっきりジャンプをする。そのまま蹴りの構えに入る。


「相手が勝ったと思った瞬間が一番隙だらけなんだぜ? 新人!」


「っ!?」


俺は上空に飛んだ瑛士くんに向けて一斉にスライムが飛んでいく。


スライムたちは一瞬で彼を囲む。そのまま勢いがなくなってスライム事彼は落下していく。


「毒を持つスライムに包まれたら君も終わりだろう?」


俺は最後の確認のために彼の顔を見にスライムのところへ行く。


「俺は……負けない……。貴様を、つぶ、す」


「っ!?」


スライムの中から瑛士くんが何かを話したような気がした。


とてつもない殺気を感じた。一瞬俺はたじろいでしまう。


しかし、そこから瑛士くんは少しも動かなかった。





「こ、これ……勝てたんだよな?」


思わず冷や汗をかいてアナウンスがなるのを待つ。





少しするとアナウンスが鳴り響く。


『勝者! 古田良介!』


正直、勝てたのかあやふやな感情が自分の中に残った。














「よし! よくやったわ良介!」


部屋に戻ると、まだ五歳の有紗ちゃんから激励された。呼び捨てなのは納得いかないけれど


「んー、有紗ちゃん? 俺のことは良介おじさんって言ってくれない?」


「良介は良介なの!」


「はぁ、さいですか」


「良介さん。俺の尻拭いをしていただき、申し訳ありません」


「いいよいいよ。今の若い世代の闘いも見れたわけだし」


一方付き人になっている雨野くんは真面目なこと。


俺はソファーに座って、さっき闘った瑛士くんについて考える。


「あの殺気……。もしかしてね」


そんなはずがないと思いたかったのか、俺はそれ以上考えることもなく子どもがいるから吸うことの出来ないたばこのことを考えて大きく溜息を吐いた。


「見てなさい!次はこの有紗があんな糞ヤンキーやっつけてやるんだから!」


自分の師匠の子どもが無邪気に叫んでいる声だけを聞いて、俺は目を閉じた。





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