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スカイスクレイパーⅡ 6話

松竹梅の始まり、第一回戦の幕開けです。




「対戦方式は松竹梅を採用させていただきます。各チームは三人が一人ずつ『松』『竹』『梅』の順に闘っていただき、勝利数の多い方が勝利となります」


アナウンス音が響く部屋で俺、神崎玲央と野上瑛士、そして立花松子の三人は準備をしていた。きっと向こうの三人も既にこんな感じの準備室にいるのだろう。


「んで、順番はどないすんの?」


松子が俺に向かって話しかけてくる。


そういえばちゃんと考えていなかった。とりあえず三人そろえるのに必死すぎた。


「まぁ、どうせ向こうは有紗が最後に来る。んで、有紗に喧嘩売られたのは俺だ。当然大将戦は俺ってことになるだろうな」


「玲央くんが最後となると僕か松子さんが一番手になるね」


「じゃ、うちが一番手行かせてもらってええ?」


松子が先頭を買って出た。俺と瑛士はきょとんとしてしまう。


「一番手やったら勝っても負けても責任問題薄いやろ?この喧嘩売られたのはあんたと瑛士くんやもん。うちは穴埋めで出た身に過ぎひんし、うちが負けて玲央くんと有紗の喧嘩なしってのも嫌やし、瑛士くんが負けてうちが絶対に勝たなあかん状況んるのも嫌やし」


軽い感じで笑う松子に俺はちょっとむすっとした。


「おい、確かにお前には関係ねえけど、闘うからにはなぁ――」


「わかってるって」


俺の言葉をさえぎるように、松子は不敵に笑みを浮かべる。


「なんやったら、玲央くんの出番なくなるかも知れへんで? うち、絶対に勝つから」


そう宣言すると、彼女は部屋にあるパネルを弄って自分を一番にする。


「そ、その方が僕は助かるけどね……」


「おい瑛士! お前はお前でもっとシャキッとしろよ」


俺は瑛士の脇腹を思いっきり小突く。


「い、痛いよ玲央くん」





「じゃ、うち行ってくるで」


「おう。こんなのに巻き込んじまったけど、負けんなよ」


「頑張ってね。松子さん」


彼女はニコっと俺達に笑みを浮かべてきて部屋を出た。





--------------------------------------------------------------------------------








「それでは、【松戦】立花松子VS雨宮小十郎の対決を始めます」


松子は突然バイクに乗って戦場に現れる。


対戦相手の小十郎は忍者のような風貌で、その状況に臆することなく立っている。


「さてっと、うちが参戦したからには、その忍者コスがめちゃくちゃなるまでボコボコにしたるで」


松子は肩に担ぐように巨大なライフルを構えていた。


「ふん。有紗さまのためにも、貴様には負けてもらう」


その言葉の瞬間だった。小十郎の姿が消える。


瞬間移動のように既に松子の目の前でクナイを構えていた。


「あかんねんて、うちは強いんやから」


しかし、松子は慌てている様子もなかった。むしろ小十郎の方が慌てていた。


自分のクナイが、彼女を目の前にまったく動かないのだ。まるで彼女の前に薄い壁があるように。


小十郎はすぐに逃げるようにその場を去る。


松子は思いっきり蹴りを放っていた。逃げていなければ小十郎の腹部に蹴りが当たっていただろう。


「貴様、それが能力か」


「ご名答。うちの能力は、完全防御特化の「バリア」ってとこかな♪」


小十郎は逃げた位置からクナイをいくつか投げ込む。それを松子はバリアで防ぐ。


「だが!それだけでは意味がない!」


クナイを投げた直後、小十郎は瞬間移動で松子の背後に回っていた。


「うちの師匠さ。用心深い人で、背後取られたらどうするかちゃんと教えられてんのよねぇー」


松子は口に何か加えていた。爆弾の起動用の紐だった。それを引っ張り、小十郎の足もとに落とす。


「ちっ!」


突如巨大な爆発。





会場で見ていた玲央達もそうそうに決着がついたかと感じた。


「ふぅー、自分用にバリアを囲えばどうってことないのよねぇ。師匠と違って武器に制限あるのが難点だけど」


四方を囲むようにバリアを張った松子は慌てたように答えた。


しかし、ゲームは終わらない。


「下だ!」


突然地面から手が出てきた松子の足を掴む。


掴んだ手は思いっきり引っ張られ、松子は思いっきり地面に身体をぶつける。


地面を掘って小十郎は姿を現す。


松子は立ち上がろうとしたが、身体中に糸が絡みついて動けなかった。


「これで、終わりだ」


クナイを取り出して松子に向かって放つ小十郎。


松子は何とか指を動かして仕込んであった小型銃で小十郎の肩を撃つ。


突然の攻撃に対応弾丸が直撃する小十郎。小十郎の投げたクナイは松子の足に刺さった。


受けた弾丸で小十郎がひるんでいるうちに、松子は小さなナイフで紐をちぎり、脱出する。


しかし、足を攻撃されたせいでうまく動けない。


落としたライフルを拾って、小十郎の方に標準を合わせようとするも既に小十郎の姿はなかった。その瞬間、背中に強烈な痛み、小十郎に思いっきり蹴りを当てられたのだ。その威力に地面を転がる松子。


二打目の攻撃に松子はバリアで防ぐ。


しかし、またも背中に衝撃、クナイが何本か刺さっていた。


「どうやらバリアは意識した方向にしか張ることはできないと見た」


痛みのせいでバリアが消えた瞬間に小十郎は松子の腹部を思いっきり膝蹴りを放つ。


松子はその瞬間に小型爆弾を放り投げる。


その爆弾は小十郎を超えて遠くの方で爆発を起こす。


「拙者とて、有紗さまのためとは言え、女にこれ以上苦痛を与えたくない。降参しろ」


「はぁ? あんたさては女舐めてる?」


松子は小十郎の目を思いっきり睨みつける。


その目は修羅のごとく殺意に溢れていた。


「そうか。それは済まない。ならば、素直にとどめを」


「刺されんのはあんたよ!」


小十郎は自分が大きな影に囲まれていることに気づいた。


思わず振り返る。すると巨大なビルがこっちに向かって倒れてきているのだ。


全てを察した小十郎はもう一度松子の方を見る。松子は既にバリアの中にいた。


ビルは二人に向かって思いっきり倒れていく。








「はぁ……はぁ……」


ビルの残骸からバリアを張っていた松子が出てくる。


「くっ……!」


「嘘……。あの攻撃から立ってるなんて」


自分から少し離れたところに血を流しているが確かに立って松子を睨んでいる小十郎の姿があった。


「俺は、負けてはならない。負けられない!」


松子は思わずたじろいでしまう。目の前の男の執念を垣間見た。


その瞬間に松子はライフルを構える。


小十郎は一度何やら手で印を組む。すると小十郎の姿が突然五人に増えた。


「ほ、本当に忍者なの……あんた?」


「いや、ただ。この世界では真似事が出来るだけだ!」


五人の小十郎は一斉に松子の方に向かってくる。


松子はあてずっぽうで一人に向かってライフルで弾丸を放つ。


しかし、その一人は残像だった。もう一発放つ。しかし、それも残像だった。


もう一発、さらに一発。放つも、どれも偽物で本物がわかった頃にはもう既に自分の目の前にいた。


「どうやら、攻撃とバリアは同時に発生させれないようだな」


クナイを松子に思いっきり刺すことに成功する。松子はその痛みに地面に倒れかかった。


「これで俺の勝ちだ」


倒れた松子を見下ろして小十郎に言う。


「あんたさ。ずっと言いたかったことあるのよ」


「ん? なんだ」


「あんた、忍者キャラなんだから……。一人称拙者にした方がいいよ。


 うちが勝ったら、変えてもらうで?」


ニヤニヤと笑う松子に小十郎は眉を細める。


「そうか。だが、そんな口調になることはない!」


「いんや。残念ながらあるんやなぁ。これが」


その直後だった。


小十郎の胸部に四つの弾丸が突然貫いた。


「ど、どういう……ことだ!?」


「バリアの使い方は何も、防御だけやないってことや」


弾丸は松子がこっそり発動していたバリアを反射して軌道を変えられていたのだ。


その反射した弾丸が時間差で小十郎の胸部を貫いた。





「んじゃ、あんたの一人称はこれから拙者ってことで……よろ、しく」


小十郎はその場で倒れて光に包まれた。松子も、その様子を見て安心したように気


を失った。


「Winner!立花松子」


そのアナウンス音だけが試合会場に響き渡った。






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「松子!お前、すげぇな!見直したぜ」


「ありがとね玲央くん。いや、しかし。想像より苦戦しちゃったかなぁ」


「それでもすごいよ。松子さん」


「うちは有限実行する女やからな。次、瑛士くんやろ。頑張ってや。流石現『蛇』のチームやわ。あの小十郎って子もうちらと同年代のはずやのにめっさ強かった。瑛士くんも気を付けないと……」


「う、うん。まぁ……。可能な限り頑張るよ。


「だーかーら! お前はもっとシャキッとしろっつってんだろぉ!?」


「み、みんな玲央くんみたいに自信あるわけじゃないんだってばぁー!」


玲央達三人は、まずは一勝したことに大きく喜んだ。


その二人の喜びようを見た松子は、今まで一人でやってきていたが、仲間ってのもいいものだなと。昔師匠が言っていたことを思い出した。


「……そやで!瑛士くん!うちに続いてこのまま二連勝して玲央が闘うまでもないって赤っ恥かかせたろや!」


松子は二人にとびかかるように近づいて多いにはしゃいだ






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「申し訳ございません。有紗さま」


「ううん。頑張ったね。小十郎。あの子も結構強かったもん。仕方ないよ」


「しかし、俺……いえ、拙者は」


ソファーに座る有紗に頭を下げている雨宮小十郎。


「まっ、そう根詰めないほうがいいよ。雨宮ちゃん♪」


「うんうん。小十郎にはいい経験だったよ。どうせ次は勝ってくれるから。安心して見ておくといいよ!」


負けた小十郎の頭をポンポンと叩きながら有紗は無邪気にそう言った。


「だよね♪ おじさん!」


「はぁ……どうして蛇道の人ってのは人使いが荒いのかねぇ」


「すみません。あとはよろしくお願いします。古田さん」


小十郎も古田に向かって頭を下げる。


「はいはい。まっ、後輩の尻拭いするのも先輩の仕事ってことでいっちょやりますか


次の子には悪いけど♪」


そういって男の手からは紫の液体が垂れていた。

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