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第一章 いきなりの求婚④

「侯爵様。到着致しました」

 立派なお仕着せを着た白髪頭の御者が、主人に告げる。

 馬車の扉が開いて現れたのは、明るい金髪に青い瞳の、華やかな青年。

 昨日、あらゆる手順を無視してミシェルに求婚してきた、グレン・デル・フォシェリオンその人だ。

 助けてください。暴漢に襲われて。

 そんな言葉を用意していたのに、ミシェルの口をついて出てきたのは「なんですかその花」だった。

 馬車の座席半分を占める空間に、ぎっしりと色とりどりの花が詰まっている。まるでグレン・デル・フォシェリオンが花を背負って現れたかのようで、唖然とするしかなかった。

「求婚には花が要ると従者に注意された。花は嫌いか?」

「そういう問題ではなく」

「では、どのような問題が?」

「ええと……」

 ミシェルは屋敷を振り返った。カーテンに封じ込められた男が、地面の上でもごもごと動いている。精霊たちがカーテンの四隅をきつく結び合わせながら、心配そうにこちらを見ていた。

「あー……」

 ミシェルは額に手のひらを当て、嘆息した。この状況、なにからどう説明したらいいのやら。

「もしや、身分がばれたかな? ミシェル・デ・クレティス嬢」

 怪訝な顔をして片眉を上げ、グレンは言った。

 ――本当の名前を知っている者は、敵。

 ミシェルはもう一度シャベルを構えた。精霊たちも急いでやってきて、ミシェルを守るように取り巻き、グレンを睨む。

「おやおや、穏やかではないな。こうなったら仕方がない――結婚しよう」

「意味が分かりません!」

「意味わかんないよ!」

「意味不明ですね」

「意味わかんなぃ……」

 ミシェルと精霊たちは間髪を入れず一斉に言った。

 しばし、しん……と場が静まり返る。

 沈黙を破ったのは、年配の御者の「お言葉ですが侯爵様。ご求婚の際に『仕方がない』はなりません」という、はずしているのかもっともなのか、よくわからない発言だった。


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