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第四章 我が愛しの精霊使い③

 ミシェルは必死に考えた。

(『瘴気』を集めることなんてできるのかしら。もしできるのなら、特定の場所で魔物を発生させることができる。――ということは)

 ――どこで魔物が発生するかを計画することができ、市街での魔物の危険性をなくせる。

 ――ということはつまり、『瘴気』を防ぐ『精霊気』が薄らいで魔物の発生率が上がっても、王都の安全を守れる。

 一見、それは良いことのように思えた。

 でもミシェルには、どうしてもひっかかかるところがあった。

 「『同調』が注目されたら、この実験の意味がなくなる」ということは、この実験は『命令使役』の推進が最終目的なのだ。ならば、賛同するわけにはいかない。

「フォシェリオンは今どこにいる?」

 長上着のひとりが言い、ミシェルははっとなった。

「穏便に、王都から追い払ってある。実験開始前に。邪魔な若造だが、身分が高いからな。母方の実家は王族とも縁があることだし」

「どうやって追い払った?」

「なに、簡単だ。『グスク村でクレティス伯爵らしき人物が見つかった』と、情報を掴ませただけだ。あの男はクレティスに心酔していたからな。すっとんで行った」

 聞いていたミシェルは、怒りで体がわなわなとふるえてきた。

 グレンは邪魔者扱いされた上に、レナルドへの想いを踏みにじられたのだ。

「ミシェル……落ちついて」

 背後から抱きしめるように、モモが支えてくれる。

「フォシェリオンは意外に頭が切れるぞ。ガセネタでそう簡単に騙せるか?」

「ガセネタではない」

 その言葉に、ミシェルは息を飲んでモモと顔を見合わせた。

 今、なんて言った?

 父が見つかったというのは、偽情報ではない――?

「クレティスがグスク村にいるのか? それはそれでやっかいではないか? グスク村は王都から馬車で半日だ。クレティスはフォシェリオンどころではない邪魔者だぞ」

「なに、だいじょうぶだ。デスカリドが手を打ったそうだ」

「どのような?」

「それが、現時点では極秘事項らしい」

 ――それって、わたしを人質にとることかしら。

 ミシェルは憮然となって、柱の影から精霊庁の男たちを静かににらみつけた。

「なにがなんでもここから逃げてやるわよ、モモ」

「逃げるだけなんて生ぬるい……。いっそ殺ってしまいたい……」

「それはダメ。あなたもあいつらに根深い恨みがあるでしょうけど」

 そのとき、廊下のほうから「デスカリド侯爵が見つかりました!」と告げながら、従者らしき男が駆けつけてきた。

 まずい。さっさと城から出なければとミシェルが出入り口方面を見ると、そちらのほうからもが「大変です! 一大事です! 精霊庁のみなさん!」と、下級官士らしき男が血相を変えて駆け込んできた。


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