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第四章 我が愛しの精霊使い②

 剣で脅して奪い取ったローブを着て、ミシェルはさも「王宮の精霊使いですよ」という顔をして、王城内を闊歩した。

 精霊使いは納戸の鍵を持っていたから、押し込んで鍵をかけて閉じ込めてきた。ミシェルが精霊使いを脅している間、命令者を失った家事精霊(ブラウニー)たちは、生気のない顔をして辺りをブンブン飛んでいた。

 虫みたい……と感じてしまい、ミシェルは暗い気持ちになった。

 『同調』で精霊使いと一緒に働いていたならば、心をなくしたりしないのに。精霊使いの危機にはみんなで力を合わせて、敵を撃退できたかもしれないのに……。村でゲインズが襲ってきたときの、ペリとエデとモモのように。

 ミシェルはローブとともに奪い取った『精霊石』のペンダントを見た。どうしても首から下げる気にならなくて、ローブのポケットに突っ込んだ。手にしただけで嫌な気持ちになる。さっさとどこかへ捨ててしまいたかったが、これは廃棄処分になった精霊だったのだと思うと、粗雑に扱うのも気が引けた。

 この精霊石はかつて、心を持っていたかもしれない……。

 心を持っていたがゆえに、『命令使役』に適応できず、処分されたのかもしれない。

 そう思うと泣きたくなる。

 何人かのメイドとすれ違ったが、彼女たちはミシェルとモモを精霊使いと衛兵だと信じて疑わず、気にも留めない様子だった。外では繋がれた魔物が暴れているのだ。使用人が気もそぞろなのは無理もなかった。

 なるべく平静を装っていたミシェルたちだったが、廊下を抜けて玄関ホールへたどり着いた途端、ご立派な長上着を着た集団に出くわし、大いにあわてた。

 身分と役職のありそうな人々の前を横切るのは、さすがにまずい気がする。

 玄関ホールにはアーチ天井を支える太い装飾柱が立っている。ミシェルとモモは柱の陰に身を潜めた。

「デスカリドはまだ見つからないのか! 陛下が待ちくたびれてらっしゃるぞ」

「魔物を発生させる実験は成功したのだから、殺処分はもうデスカリド侯爵なしで進めてよろしいのではないかな。このままでは庭園の木がみな倒される」

「責任者の監修なしで事を進めて、なにかあったとき誰が責任を取るのだ。魔物を発生させました、処分出来ませんでした、では、精霊庁全員が解任させられてしまう」

 長上着の男たちの話を聞き、ミシェルはモモと顔を見合わせた。

(魔物を発生させる実験……?)

 どういうことだろう。

 庭園で暴れている魔物は、人為的に発生させた魔物なのだろうか?

 でもどうやって?

 なんのために?

「『精霊気』が薄らいだために抑えきれなくなった『瘴気』を集め、魔物に変えることができると証明したのだから、今回の実験はすでに成功だ。魔物の殺処分は誰がやってもいいだろう」

「し、しかし、誰が――」

「わ、私は、体調が思わしくなくて無理だ!」

「今回準備した戦士精霊の調教は、デスカリド侯爵がやったので――」

「デスカリドを探そう。さっきまではいたのだから」

「念のために、ほら、あの若造を呼んでおけばいいだろう……」

「フォシェリオンか? あの男は駄目だ。『同調』の精霊使いは目立たせてはならん。『同調』が注目されたら、この実験の意味がなくなる」

 この実験の意味?

 『瘴気』を集めて魔物を発生させる実験の意味とはなんだろう?


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