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散歩

次に僕が目覚めたのは保健室でも無く、寮でも無かった。前まで住んでいたイタリアのシエーナ地方。懐かしい風景に香りを楽しんでいる暇は無かった。周りは、灼熱の炎に包まれ辺りは悲鳴が上がっている。突然の出来事に僕は、ただ立ち止まっているだけ、しかしそんな中でも聞こえたのは、懐かしいお母さんの声

「ヴリティア!何してるの!?にげなさい!」

「お、お母さん!一体何が起きてるの!」

「神々が襲ってきたのよ!私が時間を稼ぐから早く行きなさい!」

僕を早く逃すためにこれまで見たことない険しい顔と怖い声で説得させる。しかし、その事に気をとられ過ぎたお母さんの直ぐ後ろには槍を構え突進してくる神がいた。

「……!お、お母さん後ろぉぉぉ!!!」

力の限り声を上げた。その声に反応するが、余りにも距離が近すぎた。お母さんは杖で魔術を詠唱している間に腹部を貫かれた。後ろにいた僕はお母さんの血をタップリと浴びた。

「あ、ぁぁ……うああぁぁぁぁ!!!!」





「………ぁぁぁ!!……はぁ……はぁ」

再び目が覚めると手を真上に上げていた。肩を使い、息を整えた後に周りを見ると寮棟の僕の部屋だった。

「ゆ……夢?」

体を見ると、どこにも血は付いて無く火傷の跡も無かった。夢と分かり一安心するがとても気分が悪い。目の前で突然お母さんがあんな目に遭ったら……あまりの恐ろしさに体が凍える一度座るために体を起こすと、額の上から濡れたタオルが布団の上に落ちる。誰かが僕の側に居てくれた証拠のはず。探してお礼を言いたいが、まずは寝汗で濡れてしまった服を着替えるためにワイシャツとズボンを脱いで、タンスから上下セットのジャージを取り出していると、突如ノックも無く扉が開く。

「あっ……ちょっ!ストップ!」

「あら、起きてるじゃない。とりあえずお茶でも飲ん……」

入ってきたのは髪と目が薄紫で整った顔立ちのリーベだった。しかも、タイミング悪く今の状態は下着一枚だった。その姿を見たリーベは、顔を真っ赤に染め上げて、直ぐに後ろを振り向いた

「何をしているの!早く着替えなさいよ!」

「ご、ごめん!…………もう、いいよ」

僕の言葉を信じられなかったのか、肩越しにチラッと見て、ジャージ姿で布団に座っているのを確認するとお茶とゼリーが乗ったトレーをテーブルの上に置いて床の上に座る。

「大丈夫なの?かなり魘されてたわよ」

「ものすごく不吉な夢を見ちゃったよ。お陰で目覚めが悪いよ。それにリーベは側に居てくれたんでしょ?ありがとう」

「その後大変だったのよ、突然気を失うし、凄く魘されてみんな心配してるわ。後でしっかりと感謝しなさいよ……それとこれ飲んで気分が落ち着くよ」

リーベが渡してくれたお茶を喉に通す。

「美味しいよ、リーベ」

「当然よ! 甘く見ないで貰えるかしらでも、ありがとう。この後私散歩するんだけどヴリティア来る?」

「迷惑じゃないなら僕も一緒に行くよ。リフレッシュもしたい気分だから」

「迷惑じゃないわよ、一人より二人の方が楽しいのよ。なら寮の玄関口集合。あまり待たせないでよね」

リーベは、制服姿のまま慌ただしく部屋を出て行った。

準備といっても何を持っていけばいいか迷いがあったが、激しい運動をする訳ではないからタオルくらい持って行けばいいよね。一度体をグイーッと伸ばしてリーベとの約束の場所へとなるべく早歩きで向かった。


リーベと共に校外に出て、旧ローマ時代の街並みが残る歴史的に価値の高い道を散歩していた。近くに川が流れるをなぞるように太陽は傾き赤く燃える。

「凄く綺麗なところだね、この夕焼けと川がマッチしているね」

「ここは、私しか知らない場所なの。嫌な事が起きるとよくここにいるのよ」

リーベは橋の柵に肘を立てて川に反射している太陽を見つめながら小さく口を開いた

「ここを僕に教えてもいいの?」

「もちろん、いまヴリティアはとても精神的に疲れてると思うのよ。だから少しでも気が晴れればいいかなと思って」

僕は、ベンチに座っていたが、リーベと同じように柵に寄りかかり太陽を見続けた。その間、僕とリーベの鼻息と川を流れる水の音だけが静かに奏でる。

するとリーベは首だけを僕に向けるて何か言いたそうに口を動かすが、声にならず喉で止まる。言いたい事がなんとなく分かったため僕から話をした。

「僕のお母さんは知ってると思うけど神なんだ。しかも、龍の国に来た理由はお父さんの暗殺だったの」

その事を聞いたリーベは、目を見開くと同時に少しだけ悲鳴をあげた

「毒を混ぜたお酒を飲ませて殺すつもりだったけどそれが失敗におわり、お母さんは、味方の神に瀕死の一撃を喰らったの。それを救ったのがお父さんだった。そしてその少し経った後に僕が産まれた。因みにお母さんはバハムート様から龍の一員と認められている。といっても僕を見る目は……冷たかった。数々の誹謗や暴力を受け続けて生きてきた。でも、ここにきて全てが変わった。こんなにも僕を龍として認めてくれたから」

一通り説明をする。リーベは、この事を聞いたのを少し後悔したのか、顔を俯けたまんまだった。だが、手だけは僕を掴んだ。両手で優しく包み込み胸元へと押し付けた

「ごめんなさい、折角気を紛らわせようと思ったのに、でも嬉しいわよ。ヴリティアこうして出会えた事をね」

僕は、きっと今顔がとても赤いだろう。リーベの女の子独特の柔らかい手にとても美しい顔立ちに頬は、恥ずかしさがそれとも夕日のせいか……

「そろそろ行くよ、また付き合ってくれる?」

「勿論。僕で大丈夫ならいつでもいいよ」

リーベと並走するように門限まで時間はたっぷりとあるが、寮棟を目指した。

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