初めての学校
「忘れ物無いね、頑張ってねヴリティア」
「分かったって大丈夫だよお母さん」
翌日の朝は、なるべく早めに起きて学校にはブレザーを着用するのだが、僕は翼を隠すためにコートを着込んでいた。そして、何度もお母さんは先程言った言葉を連呼して流石に苦笑いが出てしまう、相変わらずの心配性と改めて思う、しっかりと学校で色々な事を学んでお母さんに心配を掛けないように頑張らなくては行けない。
「バスが来たね、それじゃー行ってきます」
バスにゆっくりと停止場に差し掛かるのを確認して、少し多めの荷物を持って乗り込もうとした時。後ろから突然お母さんが抱きついて来て、背中に柔らかく温かい体温を感じる
「行ってらっしゃい、お父さんにも伝えとくね」
「うん、ありがとう……」
するとお母さんは満足したのか、ハグを終える。僕は、そのまま前に進みバスに乗車した。
このバスは、シエーナを含むフィレンツェ周辺に通るバスでイタリアの主要都市ローマやミラノの空港や市内をも結ぶ生活に重要なラインだった。通う学校まで多少の時間が掛かるので僕は、お母さんから貰ったネックレスを握り浅い眠りにつき始めた。
「どうしよう……緊張するよ」
自分の心臓の音がありえないほど大きく感じる。現在僕が一緒に学ぶクラスメイトがいる教室の扉で待っているところ、先生が呼んだ後に僕が入室するのだが、物凄く緊張している。ネックレスを握っても落ち着く事が出来ないし、呼吸も鼻では無く口で運動した後と匹敵するほど乱れていた。一度ゆっくりと深呼吸をしてなんとか落ち着こうと思った矢先に
「おーい、入ってこーい!」
先生が手合わせ通りに僕を呼ぶ、意を決して扉を開けると視線が一気にこちらに向く。視線を感じないようにフードを深く被るが、空気でバシバシ感じる。取り敢えず先生の横に立つ。
「今日から、新しく仲間になった。ヴリティア・ヴリトア君だ。みんなに一言を」
肩を優しく叩いて緊張をほぐしているつもりだが、なかなかに減らない。頑張って口を開き視線をクラスメイトに向けると、なんと5人しか居ない
しかも……男子は僕だけ。その事でさらに不安となる
「ヴリティアと言います。よろしくお願いします」
自分が出た声は小さく聞き取れないかと思うくらいだったが、一人の短髪の黒髪黒翼ボーイッシュな女の子が
「ヴリティア君ね、よろしく!でも顔見たいな。声だけだと、少し低めの女の子にも聞こえるから」
指摘されて被っていたフードを取ると、他のクラスメイトも僕の顔を凝視してくる
「本当に男の人……なのですか?失礼とは思いますが、可愛い顔をしていますし」
突然に性別に疑惑を持たれる。僕だって一応立派な男とは言い切れないが、声変わりもこれからだし。なんとか掻い潜ろうと思った時に、先生が助け船を出すかのように
「ヴリティアの追求は後にしてくれ、今日は、授業はそこまでやらず、ヴリティアに学校の雰囲気を慣れて貰うために全員で設備の案内だ以上」
先生が教室から退室すると、一気に質問の嵐が僕に飛んできたが、まずは自己紹介から始まった。
まず最初に来たのが、さっき一番に話を掛けてきた
「ヴリティア君。私は、プリエール・ニーズベッグ。君の事はもう知ってるよ、これから改めてよろしく」
手を差し出したプリエールさんの手をなんとか掴み
「こちらこそお願いします。プリエールさん」
僕の完璧にかしこまった言葉使いに戸惑うみんな
「そんな、かしこまらなくて大丈夫だよ。私達は、みんな仲間以上に家族と同じものだからね」
「えぇ、そうですよ。失礼私は如月・カグツチです」
一人、みんなが来ている制服とは違い、話には聞いたことある着物というものを着ていた。容姿と合わせて物凄く煌びやかに見える。
さらにプリエールの言った家族と同じという言葉に僕は、つい頬に涙を溢して泣いてしまった。
「ヴリティア君!?私何か傷つけちゃったかな?」
プリエールは、慌てて僕にティッシュをくれる。感謝の言葉と共に受け取り泣いた理由を全員聞こえるように今度は、しっかりと伝えた
「僕……今まで、両親以外からは酷くイジメられてて純血の龍族じゃないお前は、ゴミと変わらないって何度も繰り返し吐き棄てるように言われてて。でもさっき、プリエールが家族と同じって言って、こんな僕も認めてくれる龍族がいてくれてその凄く嬉しくてつい……ごめんね、みんなそんな悲しい顔をしないくていいよ。一人じゃ無いって思えたから」
「ヴリティアさんよく、ここに来てくれました。私含めてここにいる全員あなたの事を大いに歓迎します」
如月の言葉に全員頷いて僕の手を優しく握ってくれる。残りの3人は休み時間が終わってしまい、授業の終わりに聞くことにした。にしてもなんで男子が僕だけで、こんなにもクラスメイトが少ないんだろうか、僕はそれに深く疑問を思った