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選抜選考戦

「ロネスタが遅刻?」

 朝のホームルーム時間で如月がヘールト先生に伝えた。

「珍しいなあいつが、まぁとにかく今日はみんなに重要な話がある。今プリントを配るから目を通してくれ」

 見ると、タイトルに欧州龍学校合同訓練と書かれていた。

「タイトルの通りに各国を代表する龍学校が出校して、お互いに技量を高めようって訓練だ。とはいえ、内容は殺さぬ程度に戦い合うから怪我は必ず受ける。俺達はイタリアを背負ってこの訓練に参加することとなった。参加国は、スペイン、ロシア、トルコ、フランスだ。どこもお前達のような進化した龍をどこよりも積極的に教育している国だ。だけど俺は乗り越えられると思う。まぁ、まだ参加するとは伝えてない。君達の意見を聞きたい」

 みな、目を合わせて同時に頷きリーベが代表して口を開いた。

「まだこの力を本気で使ったのは片手で数えれます。私達は、いざという時に大切な龍を助けれるようになりたい。だから、その訓練に参加したいです」

 みんなの思いはリーベが話した内容と全く同じだ。力強いリーベの参加内容で先生は頷く。

「そうか、なら参加しないとな。申請はしておくからまた報告するよ。では、早速だが訓練を始め……」

「おはよう」

 先生の言葉を遮り、教室に入ったのは爽やかな笑みを浮かべたロネスタだった。

「先生ごめんなさい、遅刻しちゃって」

「あぁ、次から気を付けろよ」

「はい」

 短く返事をして席に座る。それにしてもなんであんなに明るいのだろうか? 故郷で何か起きたのか?

「さて、ロネスタも来たことだし、訓練を始めよう。体育館でどんな訓練をするか説明する」

 みんなが席を立ち、廊下に出るなかロネスタは何の事が分からず首をかしげていた。そんなロネスタの肩に手を置いて説明をした。

「あぁ、なるほどなその訓練に私は参加は出来ないな」

「え? ど、どうして?」

「ヴリティア、私は命を吸い取るのよ? これで分かってくれる?」

「そうだったね、ごめんよ」

「いいわ、仕方ない事だし。行くよ、置いてきぼりにされるよ」

「う、うん」




「訓練の内容は3対3の選抜チーム戦だ。敵チーム戦の龍全員を殺さなければせれば勝利だ。つまり、死なない程度に殺せと言うことだ。とりあえずはこんなもんだが、質問ある者はいるか?」

 質問の前に、先生の言った死なない程度に殺せという言葉に僕達は、動揺を隠すことを出来なかった。しかし、如月は静に手を上げた。

「先生……もしですよ……もし、殺してしまったら?」

 誰もが第一に思った事だ。先生は頷ずくも装備をしたその瞬間に身が凍るような殺気を含んだ拳が如月の顔に飛び込む。

(あの男正気か!? カグツチの女は死ぬぞ!)

 如月も瞬時に装備をして、両手で先生の攻撃を間一髪で直撃は逃れたが、衝撃で地面を滑り壁に激突して止まる。

「な、なにをするのですか!? 殺す気ですか!?」

「そういう事だよ。お互い本気になれば秘められた力が発動して、自分が思ってる以上に強くなる。まぁ後は、自分と祖龍の信頼関係で誤差は産まれるがな。本気を出せ、そうすれば殺さなくて済む」

 今だに驚きを隠すことが出来ない。先生の攻撃を受けてないが、僕は後退りをしてしまった。

 如月はまだ質問があったのか、再び声を上げた。

「チームは3人って事は参加できない龍もいるということですよね?」

「それはない。今から選ぶのは選抜チームだから他の龍も参加はできるぞ。だがヴリティアは強制的に参加して貰う。そうなると残りの枠は二人だ。お互いに戦いたい奴を選べ、そして残った二人が選抜チームに参加だ。とその前にだ、ルリアとロネスタは外れろ」

 暗い表情をしてルリアは壁際に寄る。ロネスタは言われる前からその場からどいた。僕も二人と同じように壁際に寄った。

 残ったクラスメイトは二人組となり、戦いの準備を進めた。

「よし、早速始めよう。まずは、如月とサジェスだな、互いに中央に立ち装備をしろ、そのあと背中を向けあい、10歩歩け」

 二人は装備をすると龍力が衝突する。そのあと握手をして振り替える。

「お互い、敬意を持って戦うように……。3……2……1……combate!(戦え)」

 始めの合図と共に、如月とサジェスは瞬時に振り向き、炎と黒雷(こくらい)がぶつかり合った。




「流石は如月……最初の一撃を防ぐなんてやるわね!!」

「サジェスさんも凄いですね……少しでも力を緩めたらやられそうです!!」

 互いに譲らないつばぜり合いにサジェスの頬は緩む。上体を大剣に乗せてさらなる重みを加える。

「ぐぅぅ……な、なんて力……」

 如月の上体がのけ反り膝が床に付く、力が加わらない状態だ。こうなればサジェスの勝利が見えてくる。

 しかし、如月の瞳はまだ諦めてはない、この戦いを楽しむように闘志が燃えていた。

「カグツチーッ!! もっと私に力を……!!」

 その瞬間、如月を包んでいた炎が声に答えるようにより、激しさを増す。

「くっ……!? な、なんて熱さだ」

 サジェスの顔は苦しさを滲ませていたが、決して退くことなくより力を加えるが、如月は片手で槍を持つ。

「耐えれると思うの!?」

「耐えれませんよ……だけどこうしないとどのみち負けてしまうなら、捨て身の攻撃よ!」

 なんと如月は槍を放してしまった。もちろん、サジェスの大剣は如月を切り裂こうとするが、それを両手で掴みとった。

「はぁ!? ば、ばかな!?」

「ふふ、捕まえました」

 如月はサジェスを力の限り投げ飛ばす。翼を拡げてなんとか耐えるなか、槍を構え、追撃をする。

 もう、大剣ではどうすることも出来ない距離と判断したのか、上体捻り間一髪のところ如月の攻撃を避けたあと、腹部に膝をねじ込んだ。しかし、それは普通の膝蹴りではなく全龍力を要した強烈な一撃だった。

「がはっ!?」

 如月の体が「く」の字に折れると、そのまんまぐったりとして、如月の意識が飛んでしまった。そして装備は解除されていった。

「すまない如月……許してくれ」

 如月をお姫様抱っこで運び、先生のところへ向かった。

「如月を保健室に運んで行きます」

「分かった。次、準備しろ」

 その次に、アリルとプリエールが戦い、寸止めで勝利をしたのはアリルだった。リーベとピスティはあまりにも一方的な試合展開で、ピスティが勝利を納めた。

 サジェスがこの場に居ないために、ピスティとアリルの対戦になるが、友達を傷つけたくない、との言葉を述べ棄権した。よって、選抜チームは僕、サジェス、アリルの3人となった。




 こんなにも心が苦しい勝利というのがこれまであっただろうか。友達を傷つけるのがこんなにも辛く、苦しい事なのに選抜チームに入ったら私は戦えるのだろうか?

 ベッドで眠る如月の髪に指を通す。サラサラとした手触りが癖になりそうになる。その時、呻き声と共に如月の目が開いた。

「んっ……んん……うぅ、あれここは?」

「如月! 大丈夫か!?」

「サジェスさん……私なら大丈夫ですよ」

 私に優しく微笑み体を起こそうとするが、腹部を押さえて苦痛に歪む美しい顔に心がとても苦しい。

「その、私が言うのは可笑しいとは思うがあえて言わせてくれ……すまなかった」

 私が謝ると目を開かせる如月、そして温かい手が頬に触れた。

「気にしないで下さい。こんなの直ぐに治りますよ」

「……そうか、私はクラスに戻るよ。先生には大丈夫って伝えとくから、あと怪我をしたら時はヴリティアに頼むといいかも。何故か分からないけど、直ぐに怪我とか体調が良くなるんだ」

「ヴリティアさんね、わかりました」

 如月と手を振り、保健室を後にする。きっと私は選抜チームに抜てきされてるだろう。なんとか気持ちを切り替えていけないと、みんなに迷惑を掛けるわけにはいかないから。

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