表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/30

ハイブリッド・ゾーンの子ヴリティア

「もう痛いよ!僕が何をしたって言うんだ」

イタリア シエーナ地方。そこの裏路地で僕は、自分より身長が大きいな龍に囲まれて暴力を受けていた。

「黙れ!純血で無い龍族が俺様達に歯向かっていいと思ってんのか!」

容赦無い蹴りが腹に飛んできて、地面と肌が擦れ滲んだ血が出てくる。

「見てみろよ、この翼。気持ち悪いな」

後ろに立っていた龍は僕の左右非対称の翼を使って掴み無理矢理引っ張る。骨を引っ張られる感覚に陥りかなり痛い。でもしょうがないそういう運命だから。

「片方は龍族でもう片方は神族の翼……折り曲げてやろうか!」

すると羽を掴んで手を両手に無理矢理広げる。逆関節と同じ原理でボキッの折れる。

「痛い!痛い!うああああぁぁぁ!!」

先程からから受けていた痛みより更に強い激痛が走り僕は、今まででの中でも絶叫した。

「くっそ!周りが気付く前にとっととズラかるぞ!」

僕を解放した3人の男達は走って裏路地の奥へと消えていった。

だけど僕に残るのは翼の痛みと全身にズキズキとした痛みに襲われる。でもこれは僕に与えられた運命。この翼と頭に着いている光のリングのせいで軽蔑されイジメを受ける。

僕の両親は常識では考えられない。父さんは龍族の王バハムート様の右腕と言われた英雄ヴリトラ。母さんは神族の治療神アンギティア。そのハイブリットゾーンとして産まれ両親の名前を混ぜて命名されたのが僕。ヴリティア

翼は父さんと母さんを受け継いだ左右非対称の翼である。右側は漆黒の翼に左側は光の翼。頭には、神族には必ず着くと言われている光のリングが浮いている。イジメられてもいい。僕はそのように定められる。

「帰ろう……」

痛む体に喝を入れてゆっくりと立ち上がり家へと目指した。




「ただいま……」

静かに玄関に入ると直ぐに、ドタドタと足音が鳴りその勢いのまま僕を優しく包み込んでくれる。温かかくて優しい母さん。

「おかえり、ヴリティア」

「僕、やっぱり無理だよ。どこにいても標的にされてこの有様だよ」

さっき起こった一部始終を全て母さんに話した。傷を見た母さんは悲しい表情を見せて僕に謝る。

「ごめんね私がお母さんだから。今度は人目の付かない所に引っ越しましょう」

その表情を見ると僕は、胸が強く締め付けられる感覚に陥る。

昔僕達は、ドイツのミュンヘンに住んでいたが、イジメを受けてここイタリアのシエーナ地方へと逃げた。

「無理だよ、僕を見ればまたみんな軽蔑する。この人生を送るしかないの」

母さん目の前で言いたくない言葉をボロが出てしまいつい、言ってしまった。

「お父さんにもう一度相談しましょう。ヴリティア貴方は一人じゃないお母さんとお父さんが居るからね。さぁ、傷の手当を急いでしないと、沁みるけど我慢してね」

先にリビングに行く母さんの背中を見て床を引きずりながらついて行く。

ソファーに座ると治療道具を取り出して怪我の手当をする。多少沁みて体がビクッと反応するが、さっき受けていた痛みより全然マシだ。

「はい、終わったよ」

頭を軽くポンポンと叩いて早い足取りでリビングに向かい途中だった夕ご飯の準備を進めた。包丁で物を切る音が、今の僕にはいい子守唄のように聞こえソファーに横になると自然と瞼が落ちていった。




「ヴリティア、起きろ。夜ご飯出来たぞ」

声と共に肩を揺らされると重いはずの瞼が自然と開く。少し視界が濡れるが目の前には、お父さんの姿が見えた。

「うぅ……おかえりお父さん」

「今日も酷くやられたな、かなり魘されてたが大丈夫か?」

「もう慣れっこさ。それに殴り返したりしたら同類になるから暴力で解決はしたくないの」

ソファーから降りて美味しそうな匂いに釣られ、料理が並べられたテーブルの椅子に座り家族みんな揃った所でいつもと同じようにご飯を食べ始めると、口難しくお母さんが口を開いた

「ねぇ、ヴリトラ。ヴリティアの事なんだけどね、ここもそろそろ駄目だと思うの」

お母さんの言葉に僕は、ただ顔を伏せて静かにご飯を喉に通し水を飲んでいる最中。

「大丈夫だ、安心しろヴリティア。お前には、学校に行ってもらう」

突然放たれた学校という単語に僕は、あまりの驚きに水が気管に入り込み咳き込んだ。隣では、流石にお母さんも声を上げて

「な……っ!何言ってるのよ学校なんて、そんなヴリトラ正気なの?」

「当たり前だ。ヴリティアはそろそろ15歳になるだろ、いつまでもこの狭い世界だけでなく、より大きな世界を見てもらいたい。そして周りの信頼を得て自信を持って欲しい。」

その言葉は、息子を思うお父さんの愛。確かに、いつまでも親の脛をかじって生きていけない。いつかは自立しなければいけない。でも、学校に行くと僕は絶対にイジメを受ける。

「ヴリティアこれを見なさい」

伏せていた顔を上げると目の前には、一枚の紙がある。書いてあるのはフランス語で少し読むのに手間取ったが、住所と送り主に僕は驚愕しつい声を上げてしまった。

「モン・サン=ミシェル……バ、バハムート様!?な、なんなのこれぇぇ!!」

書かれていた住所は、龍族の王が住んでいるフランスにある孤島の城だったそしてその送り主は龍族の王様バハムート王。慌てながらもその手紙を時間を掛けて読む。

「ヴリトラの息子のヴリティア氏へ……あなたは、ハイブリッドゾーンとして周りから仕打ちを受けていると聞いた……だが、あなたは龍だ。周りが何と言おうと我は龍と言い続けよう。そして学校生活での安全は我が命を掛けて保証する。だから世界初のハイブリッドゾーンとして我らに栄光の光をくれ給え……お父さん……これってまさか……」

手紙の内容は、僕でも察しが付くほど分かりやすいものであった。

「ヴリティアお前は、バハムートから物凄く期待されている。それに近頃人族と襲来も激しい。それと神族に対抗するためにお前は、力を付けてないといけない。ほぼバハムートからの直属と命令だな」

「大丈夫かな、僕今までに仲間に手を振ったことも無いし。それに学校はいつ行くの?」

心配で押し潰されそうだが、その不安を更に上乗せするように

「明日だ」

「あ、あし……た?」

「そうだ」

「あーえっと……その……突然すぎじゃない?」

「いいじゃないかこれなら安心だろアンキディア」

僕の心配をよそに、隣で同じ顔したお母さんにも同じ口調で言う

「そ、そうね。ならヴリティア早くご飯を食べて今からでもしっかりとした身だしなみをしないとね」

最後お父さんに乗るように僕の肩を掴むお母さん。不安だ……余りの突然のカミングアウトにバハムート様からの直属の手紙の内容に不安しか積もらない。吐きそう……。

「あの〜、明後日は?」

「「却下」」

二人は同じタイミングで言い放ち、お父さんは明日の支度とお母さんは僕を少しでもカッコ良く見せるつもりか、髪の毛などの手入れをする中で、頭に浮かんでいるリングを取り外した。その替わりに自分が付けていたネックレスを僕の首に付けて、額にキスをした

「お守りよ、不安になったらこれを握ってね」

「うん、ありがとうお母さん」

そしてそのあとの支度は全てやってくれて僕は早めにベットに入る事となった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ