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龍星祭と双子の姉妹

 目を開けると僕は自室のベッドに倒れていた。あの戦闘からの記憶が一切無い。でも、こうして寝ていたというからには、ヴリトラが倒したのだろう。

 それにしても僕は、学校に入校してからかなり気絶していると思うが、大丈夫だよね……とりあえずみんなの所に向かおう。

 体を起こして、扉を開けた途端、無数の他クラスの生徒で廊下は埋め尽くされていた。しかも女子ばかりだ。

「こ、これは……一体……?」

 僕の呟きから数秒後

「「「ヴリティアさまぁぁぁぁ!!!」」」

 津波のように押し寄せる女子生徒を遮るように咄嗟に扉を閉める。

 と、とりあえずここから脱出しないと

簡単に着替えてる最中テーブルに置いてあった手紙があった。送り主はサジェスだった。

「起きたら部屋からは出ないで窓から校舎まで飛んできて」

 もっと早く気づいとけば良かった。後ろでは、まだ僕の名前を呼ぶ女子生徒がたくさんいる。

僕たちユーベルクラスの部屋は、3階にあるため窓の桟を蹴って空に羽ばたく。校舎までの短い空の旅だが、地面を見るとまだまだたくさんの生徒が列を成して僕に手を伸ばしていた。

「な、なにが起きてるんだ?」

 とりあえず目指すは校舎だ。教室は3階にある、少し高度を上げて真っ直ぐ飛ぶと窓から体を乗り上げてコッチと促すように手を振るサジェスがいた。そこに一直線に飛びこの騒ぎの元凶を聞いた。

「サジェスこの騒ぎは一体何!?」

「そのこと含めて、一から話すからとりあえず教室入るよ!」

 彼女の手を掴むと、そのまんま教室へと投げられる。飛んできた勢いもありつつ自分でなかなか止まることができない。それでも翼を広げてブレーキをかけると、顔面に柔らかいものに当たり止まることが出来た。サジェスも入ると扉の鍵を閉めた。

「んっ、おはよう英雄さん」

 顔が埋まり、視界が暗いので耳に意識を集中させる。まず声をかけたのはロネスタだ。

「ちょっとロネスタさん! 受け止め方にもう少しやり方があるでしょ!」

 この柔らかくも凛とした綺麗な声は如月だ。

「むー、寂しいけどしょうがない」

 やっとロネスタから解放されみんなの方を見る。

 パンッ!パンッ!パパンッ!

 みんなの手には小さなクラッカーが握られていて、鼻腔は火薬の匂いに染まる。

「「「「「「神討伐、おめでとう!」」」」」

 混乱する頭を整理する暇も無く今度は祝福される。本当に今日はなんだ?

「今から説明するわ。ミラノ龍学校含む欧州各地にある龍学校は、神の撃退または討伐をすると学校で祭りをするの、通称、滅神祭めっしんさいまたは、龍星祭りゅうせいさいとも呼ばれるわ。私は龍星祭と呼ぶけど、これは各クラスで出し物を提示して、地域の龍族や、他の龍学校からもお客が来る大きな祭よ」

 相変わらず分かりやすい説明をしてくれるリーベにただ関心するしか無い

「それで出し物について考えてたけど貴方また気絶するから話が進まないのよ」

「うっ、ごめんみんな」

「責めては無いわ。ヴリティアが居なかったら私達あの神に殺されてたわ。だから、えっと、その、取り敢えず感謝してるのよ!」

 最後の言葉を早口で済ませプイッとそっぽを向いてしまう。出し物について何かいい案が無いか……少し思考を巡らせたが、その前にピスティ口を開けた。

「如月の故郷の和の国ってメイドの服を着た喫茶店があるんだっけ?」

「はい、メイド喫茶と呼ばれててお客をご主人様と呼ぶらしいです」

「へー、私あの服着てみたいのとっても可愛く無い?」

「確かにそうですが、この場には男がいてるから難しいかと」

 如月が横目にチラッと僕を見た。しかし、また違う所から背筋を凍らす不気味な視線を感じた。

「大丈夫だよ、ヴリティア君がメイドの服着たって誰も男なんて気がつかないよ。だもんでヴリティア君協力お願いね」

 恐ろしい事を言ったのはプリエールだった。

「そ、それって僕があの服を着れってこと?」

「せーかーい! ここは人肌脱いじゃおう。みんなも今回はピスティの案でいいのかな?」

 プリエールが全員の顔を見る。頼む……ロネスタそれかサジェスどちらでも良いからなんとかしてくれ……!

「あぁ、私は賛成だ。ヴリティアのメイド服なんて拝めそうに無いからな」

 なんてことだ……それならサジェス。この思いどうにか察してくれ!

「私も賛成よ」

 その短い一言に僕は肩が外れたぐらいガクッと下がった。

「決定ねあっ、でもどうやってメイド服を調達すれば良いのでしょうか?」

「それなら私に任せて、メイド服ならたくさんあるからサイズ言ってくれれば持ってくるよ」

「なんで家にメイド服なんてあるのよ……」

「そっか、ヴリティア君もサジェスには言ってなかったか、私の故郷はスペインのバレンシアなの。そこは、お米の栽培が盛んな所で私のパパは膨大な土地を所有してそこで米を売って毎年100億ユーロは稼いでいるの」

 つまり財閥のお嬢様みたいな感じか、それにしても100億ユーロって一体どれほどの金額なんだ……。チラッと如月もを見るとどうやら同じことを考えていた。

「今1ユーロは円に換算すると127円……約12兆……一生遊んで暮らせますね」

 とんでもない計算力で思考を巡らせたどり着いた金額に如月は顔は苦笑いしか無かった。

「も、もうお金の話はやめよう。それよりメニュー考えてようよ。ほら、もう寒くなる時期だし体があったまるメニューとかは?」

 確かに、僕がミラノ学校に入学した時期は、春では無く冬の時期だった。それでも校庭に咲くサクラを見ると心が春模様にり温かくなる。

「なら和食がいいの! 如月のお弁当美味しいからみんなにも食べてほしい!」

 「それなら同意するわ。如月、和の国ならではあったかい料理ってあるよね?」

 リーベの質問に如月は胸を張って答えた。

「勿論、冬の北日本では氷点下を普通に記録します。なので体の芯からポカポカする料理は数え切れないほどあります。和食でしたらメニューは考えておきますので、後は教室の飾り付けと役割の分担ですかね。それと企画書の作成と提出をするリーダーも必要ですね」

「ならその役割は私がするわ」

 真っ先に手を挙げたのはリーベだった。他のみんなの信頼出来るように頷く。確かにリーベなら心配しなくても大丈夫だ。

「では、任せます。それとヴリティアさんは調理の方には回らないでいいですよ」

「……え?」

「ヴリティアさんは、集客をお願いします。そっちの方が盛り上がると思います。龍星祭は一週間後ですから、気を引き締めて頑張っていきましょう」

「「「「「おーう!!」」」」」

 みんなの声が一致して、気合が入る。これから一週間準備に追われるのに忙しくなりそうだけど、龍星祭は必ず大成功にして終わらないと。




 デンマーク最北端の地スケーエン。

 北海とバルド海に挟まれ難しい航路とし自然ゆたかな街として、北欧の観光名所として有名な町だ。そのスケーエンに双子の姉妹がいた。

 姉の名前はアリル・ファフニール。

 赤色のロングヘアーを靡かせ、赤い右目と黄色い左目が特徴の少女だ。

 妹の名前はルリア・ファフニール。

 アリル同様長い髪に赤い左目と黄色い右目を持つ。

 2人は、いつもの習慣で漁師から毎日魚介類を貰っていた。

「今日は、気前がいいな。まさか2箱分もくれるなんてな」

「ア、アリルそんな事言っちゃダメだよ。でも、いつもよりは多いよね。この量みたらお母さんとお父さんビックリするね」

 アリル達は、魚が詰まった箱をよいしょと持ち直して、海が一望できる家まで向かった。

「ただいまー……ってあれ?」

 玄関を開けたらいつもは、父であるファフニールが迎えに来るのに今日は、誰も居ない。とりあえず重い箱を下ろしす。そして、変に騒ぐ胸をどうにか落ち着かせたいが、逆に胸騒ぎが酷くなる。

「お父さん! お母さん!」

 後ろでルリアが大きな声で呼ぶが、その声が反響するだけだった。

 隣では、既に恐怖で震えてるルリアがいた。アリルの心も徐々に恐怖心に満たされるが、意を決してリビングの扉を開けて一歩踏みしめる。

 ピチャ……

 水温が部屋に響き、足に生暖かい液体が付着する。そして充満する鉄のような匂い。それだけでなく指先に触れる物体。アリルは恐る恐る目を下に向ける。

 そこには、無残に横たわる母親の姿があった。そして、顔を上げると背中から巨大な爪を串刺しにされていた父親がいた。アリルは目が合う

「ア……リル……ルリ……ア逃げ……ろ」

 「ううん?まさか子供が2人いたとは、殺したいところだが命令に背くわけには行かない。最後の言葉だ」

 神は、父親をアリル達に投げ捨ててどこかえ消えて行った。

「お父さん……お母さん……うああぁぁぁううぁぁ!!」

 ルリアが既に遺体となっている母親の胸に顔を強く押し付ける。そんななか耳元に聞こえる微かな声に2人な耳を傾けた。

「アリ……ル……ルリア……ミラノ……学校に行……け」

 そこから2度と言葉を発する事は無かった。アリルは2人の顔を見た後に立ち上がるり

「ルリア行くよ」

 スケーエンからミラノまでは、1300km地点にある。しかし、それは直線距離の場合だ。

「うん……行こうアリル」

 何日かかるか分からない過酷な道のりだが諦めてはいない。2人は、大きな鞄の中に必需品を詰め込んだ。

「お父さん……お母さん。天国で見てて、私とアリルを見守ってて」

「絶対だよ……それじゃ、行ってきます」

 最後に両親の姿を見つめると、光に包まれて消えていった。アリルとルリアは手を繋いでミラノ学校へと足を進めた。

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