パニックアフタースクール
ユーベルAG1-3これは、ロネスタ・コカトリスの部屋だった。その扉に寄りかかるように座る黒髪の少女がいた。プリエール・ニーズベックでは無く、今日鮮烈な学校デビューを飾ったサジェス・バハムートだった。彼女は、ある話を聞いて心を痛めていた。それは、たまたま通り掛ったときに聞こえたロネスタの過去。対神龍族になるために失った親愛の弟の犠牲だ。
練習から戻った時にロネスタはヴリティアに抱き付いた時ときに、サジェスはそれを拒み無理矢理離そうとした。しかし、今この話を聞いてなんて酷い事をしてしまっと後悔してしまった。
でも、サジェスはどうしてもヴリティアには他の女の子に触れさせたく無い。学校に来た理由は、ヴリティアに戦闘を教える他にも大きな理由があった。それは……。
「ヴリティアは、私の未来のお婿さんだから……私以外に触れるのは許さないから」
それだけを扉越しに小さく呟いて自室へと戻っていった。
ロネスタはヴリティアに抱き締められて眠っていたが不意に目が覚めた。視線を上に向けると目を閉じて一定のリズムで息を立てる弟にそっくりのヴリティアがいた。男とは思えない顔立ちに女であるロネスタはヴリティアの美しさに溺れてしまいそうになった。視線を動かして時計を見たとき、時刻は6時前だった。夕ご飯の時間まで残り数分。急いで準備をしなくては間に合わないためロネスタは後先考えず、顔を上に上げてしまったとき、ロネスタの桜色の綺麗な唇がヴリティアの口元に当たってしまった。ロネスタは瞬時に座り人差し指で自分の口を抑えた。混乱する頭でなんとか整理し。
「あ、わ、わ、私の……ふぁ……ファーストき、キ……ス」
不慮の事故とはいえヴリティアにファーストキスをしてしまったのはまぎれも無い事実だった。この事故のお陰か寝る前の体のだるさは一気に消えた。しかし、その代わりに体の奥から来るムズムズ感に困惑する。もう一度……確認のためにとヴリティアに顔を近づけて触れ合う瞬間瞼が開き赤い目と焦点が合った。
「お、おはよう、ロネスタ」
目が覚めたら彼女の綺麗な顔が近くにあり僕は、寝込みを襲われたと勘違いするが確かロネスタを抱き締めてたな……。
「お、おはよう、ヴリティア……その、えっと、忘れろよ」
突然ロネスタから見当がサッパリ見つからない意味不可欠な言葉を掛けられる。
「い、いったい何のことを?僕が、ロネスタを抱き締めて寝たってことを?」
「あ、何でもない。お、覚えてないなら忘れたまんまでいい。もうご飯になるから行くぞ」
口調は今までと同じでクールだが、言動が全く別人だった。前は体調が悪く顔面蒼白といったところだが、逆に熱が上がってしまったというほど真っ赤な状態だった。それに何もないところで転けそうになる。でも、ここまで動けるようになったら体調は良くなったの……か? ロネスタは、1人部屋を出そうになったため僕も急いでその後を追った。
食堂はすでに生徒で賑わっていたが、隅っこの方に席を確保していたプリエール達が居たので感謝の言葉を言い、今晩の夕食を調達しに行った。
今日も昨日と同じくイタリアンの料理を選択した。あのナポリタンがかなり美味しくてクセになってしまった。みんなは、それぞれ違った料理を食べているが、サジェスだけその場に居なかったけど、夕食を共にするために誘いをかけたリーベいわく。
「サジェスなら部屋の整理に忙しくて食堂で食べてる時間は無いらしいわ。でも、仕送りのなかに軽食が用意されてることは確認したから、心配しなくていいわ。それより私が気になるのは、どうしてロネスタと2人仲良く来たの?それに先ほどから様子が……」
「え、あっ、いやたまたま遭遇したからだよ。ね、ロネスタ」
同意を求めるように視線を送ると、体をビクッとさせ。
「あ、あぁ、ろ、廊下でバッタリの会って、なっ、ヴリティア」
明らかにいつものロネスタとは別人のような言動にクラスメイト視線が一気に僕に向く。
「ヴリティアさん……あの約束忘れた訳ではありませんよね?」
トラウマになりかけた如月の恐怖心しか植え付けない魔の笑顔を僕に向けてくる。
「ひっ……ほ、本当だってば、ただ少しだけお見舞いに行っただけだってば」
「……ふぅ、まぁいいでしょう。私は、早めに就寝するために席を外します」
如月は、空っぽの皿を返却口に返し食堂を立ち去って行った。それに続き各々部屋に戻っていった。
僕も戻り風呂を浴びて寝ようと考え部屋に普段通りに扉を開けて部屋に入いった。しかし、その行動で大きなミスをした。僕のベットに座り髪の毛を上半身を裸体のまま乾かしていたサジェスとちょうど目が会うと、時が止まったと錯覚するほど一瞬で静かになった。タオルを首に掛けていたので大切な部分は隠されてはいるが完璧なものでは無いので端っこから見えてしまった。サジェスが気づいていないのが不幸中の幸いと言ったところか
数秒たった後にサジェスの顔が一気に赤くなっていく。
「い、い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
サジェスは羞恥心のあまりに絶叫する。急いで僕は部屋から出て勢いよく扉を閉めて焦る気持ちを深呼吸をして無理やり抑える。そしてただ、時間が過ぎるのを待っていると。
「ヴ、ヴリティア……もういいよ」
掠れ声で聞こえた声。ゆっくりと扉を開くと、パジャマを着て体を抱き締めて涙目で僕を見ていた。でも、服を見ていてもやはり気まずさはあるし目のやりどころには迷った。これは僕から謝るべきだよね。
「サ、サジェスごめんね、ノックせずにそのまんま入っちゃって」
謝罪の言葉を言うと彼女は、えっ?という顔をして僕を見る
「どうしてヴリティアが謝るの?これは、私が悪いのに……」
「そりゃー、まぁ事故だったとしてもあれだし。でもサジェスがここに居たのは予想外過ぎるけどね」
するとまたサジェスはさっきと同じ表情をする。また僕何かやった……?
「プリエールから聞かされてないの?私ヴリティアの部屋で生活することになったの」
なにその話は全く聞かされてな話が飛び出してきて今僕の顔は相当間抜けは顔をしているだろう。空いた口が全く塞がらないのだ
「プリエールは一体なにをしてるよの……まぁそんな訳でここでもよろしくね。それと私も気をつけるからヴリティアも今度からしっかりとノックしてくれたら嬉しいな」
「こっちもよろしくね、肝に銘じとくよ。リーベから聞いたけど仕送りの量が少ないよね、ベットだって無いし」
仕送りのという単語を言うと、サジェスはうーんと悩んだが思い出したように少し明るい声で僕だけに言った
「あれは、嘘話だよ。でも食べ物が来たのはホント。あとは服と日用品程度かな?」
なんだ嘘話か、でもご飯に困らなくてよかった。でも待てよベットが無いって事はどこで寝るんだろうか、貸し借りはできるのか?僕が考えた事が何かサジェスは悟った様子だった。そしてこれまた僕は予想外の言葉を貰った
「ベットが無いから、これから毎日私をベットの中に入れてくれないかな?」
「えぇっ、えっとサジェスが嫌じゃないならいいけど…….って第一なんでベットが送られてないの」
「ヴリトラ様とお父様から聞いてないの?……まぁ理由はともかく入れさせてくれてありがとう。私もう眠いから寝るね」
サジェスは僕の有無を言わせず、素早くベットに潜り込み目を閉じていった
「仕方ないな……おやすみ」
サジェスの安眠を祈るように言葉を送り、僕も寝る支度を始めた。神の襲来まで着実に時は進んでいる。明日は、今日の倍以上に訓練を頑張らないと、もうみんなに迷惑を掛けないようにしなくては。
ヴリティアは、決意をして風呂場へと入っていった。しかし、現実はミラノ学校にいく全龍族が考えているほど甘いものでは無かった。