原罪
息抜きとして10分程度で書きました。
人々の嘆きが鼓膜を震わせる。そこにいるのは、知人だけかもしれない。あるいは、『自分』とは接点すらない人々だけなのかもしれない。
啜り泣きは薄い和紙のようにか細かった。鉛のように重く脳を揺らした。雷のように荒々しく轟いた。
嘆きは大きくなったと思うとまた、遠くへと消えていく。
それが完全に聴こえなくなった時に『自分』の耳を支配していたのは、知人の泣き叫ぶ声だった。
『自分』はまた同じ過ちを繰り返していった。あらゆる宗教において、禁忌とされる行為。
もう何度目になるだろうか。こうしてまた白いベッドで目を覚ましたのは。これは報われない贖罪の一環。
心を傷めた“ふり”をした知人が『自分』の顔を見ながら、上辺だけの安堵と涙を見せつけるのは、終わらない絶望の続き。
気にかけてくれる仲間がいるはずなのにひとりぼっちなのは、タブーを犯した罰。
ぐるぐると廻り、終わらない絶望。
人々の嘆きが鼓膜を震わせる。そこにいるのは、知人だけかもしれない。あるいは、じぶんとは接点すらない人々だけかもしれない。
啜り泣きは薄い和紙のようにか細かった。鉛のように重く脳を揺らした。雷のように荒々しく轟いた。
人々の嘆きは激しさを増していき、いつまでも消えることはなかった。
次第に大きくなってじぶんを苛む声たちだが、じぶんには届かない。
――いかないで。
伸ばした手が宙を掴み、願いが潰えた。
隣人は不治の病で死んだ。生きたいと涙を流しながら、『自分』を置いてたった一度きりで赦されていった。
『自分』が“繰り返す思考”を手放さない限り、『自分』は罪を背負う運命でなくてはならないのだろう。
喪失感と剃刀を握りしめながら、誰にともなく問う。
なぜ、『自分』は――
そんな世界の不条理。