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墓標の前で ※オリジナル
人の、女性の一生の中で華となる場面はいくつもある。
ウェディングドレスを着た瞬間は文句なくその内の一つに入るだろう。
花開くその姿は見る者全てを見とれさせる魅力を持っている。
しかし、その花嫁姿も場面によっては酷く悲しく映ってしまう。
山脈に日が沈みかけの黄昏時。
残光を背に墓標の前でのウェディングドレスという姿に私は涙を誘われずにいられない。
腰まで伸ばした栗色のストレートヘアーをヴェールで止め、薄い赤色のバラを乗せている新婦。
真っ白な純白のドレスに身を包んだ新婦は右腕に肩を乗せ、左腕に花束のブーケを携えている。
エメラルド色の瞳に優しさと愛おしさを浮かべ、少しだけ口を開けている様子は墓標に語りかけているように見える。
墓標に刻まれている名は恋人か、両親か、それとも兄弟か。
その下に女性のどんな大切な人が眠っているのか分からないがこの光景を作り出した世界に対し、私は憎しみを覚えた。
引用URL
http://seiga.nicovideo.jp/seiga/im2661011
題名:絵師
wedding dress 黒じそ