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満月の歌
満月を背に歌を歌う翼の生えた少女。
まだあどけなさの残るその翼少女は満月の半分を隠す優雅な紫色の羽を持ち、その翼と同じ色の髪を羽がある特徴的な帽子で隠している。
そして長袖の白いブラウスの上に赤いワンピースを羽織り、左手を胸の辺りにおいて何かを歌っていた。
ここからだと遠すぎて聞こえないが目を閉じて口を大きく開け、楽しそうに歌う様子からとても良い唄なのだろうと想像する。
この時ばかりは満月が羨ましいと思う。
何せ翼少女は空高く浮かんでいるため、地を這う自分は彼女の歌を聞けないどころか近付くことも出来ない。
つまり今、翼少女の歌を聞いているのは満月だけなのだ。
その事実に嫉妬を覚えるが次の瞬間悟る。
それで良いのだ。
聞こえなくて良いのだ。
その翼少女は満月の如く万物からその姿を認められる存在。
ゆえに独占することなど許されない。
そう心に納得を付けた自分はため息を吐き、その場を後にした。
引用URL
http://seiga.nicovideo.jp/seiga/im2399455
題名:絵師
夜雀 サーズ