常識の終わり
昼間のオフィス街。
営業先へ向かっていた私の足を止めたのは、先程私の隣を通り過ぎた二人の少女の存在であった。
近くでコスプレの催しが開催されていたのだろうか。
両方とも珍妙な格好をしている。
左側の少女は魔法使いをイメージさせるその衣装はとあるお伽噺に出てくる魔女そのものである。
黒のブラウスに黒のエプロンドレス、アクセントとばかりに白いフリルがあり、腰に大きなリボンを巻いている。
そして大きな魔女帽子をかぶって波打つ金髪を無造作に肩へ投げかけている魔女は右側の少女の肩に手を回し、親しげな笑みを浮かべながら何事かを語りかけている。
右側の少女も魔女に劣らず――いや、同等の奇妙な装いをしている。
フランス人形を等身大へ巨大化させ、魂を吹き込んだ立ち姿と表現した方が正しい。
人形が履く底が高い靴に、白いフリルのついた青色のワンピースを身に纏い、純白のショールを肩にかけている。
魔女と同じく金色の髪を肩口で切り揃え、赤色のカチューシャで止めた人形の頭は魔女と比べると小さいように思えた。
人形は魔女の囁きをどう思っているのだろうか。
残念ながらここからでは右側の少女の表情が見えないので詳しくは分からないが、肩に巻かれた手を除けないことから心の底から嫌悪しているわけではないだろう。
と、ここまで観察した私は突然悪寒に襲われて身震いする。
その異常というのは、どう考えても場違いな魔女と人形の組み合わせが、このビルが立ち並ぶ都会に違和感なく溶け込んでいる点である。
その証拠に私以外の誰もが二人に注目していない。
嫌な予感がする。
そう判断した私は足早にその場を立ち去ろうと踵を返すが。
「ちょっと、そこのあなた」
「私達を異常と見えるのか?」
残念ながらすでに逃れられない状況になっていた。
さて、振り返った先には一体何が待ち受けているのだろう。
少なくとも今までのまともな生活ではあるまい。
後悔と恐怖を胸に私はゆっくりと振り返った。
引用URL
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=730566
題名:絵師
Waltz Archlich




