簷滴
神々しいのは大好きです。
神へお披露目する行事の一つに弓を扱う類がある。
今、行われようとする光景はそれに当てはまるだろう。
場所は由緒ある神社の境内。
一片の傷もなく揃えられた板の間に朱色に塗りこまれた柱が並び立つ。
塀の外には滝が幾筋も流れており、ここが一般者立ち入り禁止なのも頷ける美しさであった。
僅かな静寂の後に一人の姫君が音もなく立ち上がる。
ひざ裏まで伸ばした、流水を連想させる見事な黒髪を保ち、八頭身だと思わせるほど顔が小さい。
白いフリルを付けた袖口に、たっぷりとした余裕を持つ薄いピンクのブラウスの上に白いリボンを乗せ、その色は袖口と同じ白。
そして下は朱色の袴に身を通した姫君が手に携える弓は袴のそれと同一であり、同じように神々しい。
音もなく歩を進めて姫君が所定の位置で立ち止まる。
体の向きは進行方向に向けたまま、首だけ動かして的の位置を確認する。
見る者全てを掴んで離さないと思わせる光を湛えた涼やかな瞳を細めた姫君。
的を外すことはありえないのだろう。
口元に微かな笑みを浮かべる姫君の表情は自然体そのものである。
さて、姫君は何時その姿勢を崩し、弓を構えるのだろうか。
個人の欲望を言わせてもらえればこのまま時が止まってほしい。
そう願ってしまうほど姫君の立ち姿は一枚の絵として完成している。
しかし、そんな思いなどありえないことは痛感している。
ゆえに私はこの瞬間を永遠に記憶するため今の情景を心に焼き付けた。
引用URL
http://seiga.nicovideo.jp/seiga/im2690327
題名:絵師
地に降りた姫君 梓弓 め〆




