六七一年 24・5 十一月九日
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「……はあ」
ため息なんて久しく吐いていなかったのに。
喧騒が肌に合わないと言うか、なんて言うのかな。
目の前にはかたかた震える河童と未だ意識を取り戻さない狐。
一匹は私を殺しかけて、もう一匹は全部の元凶を創りだした。
本当なら殺しても殺し足りないくらい憎くても良い筈なのに、なんだか凄く虚しい。
さっきまでは確かに憎悪があったのに。あった筈なのに。
欲望と憎悪に身を包んだ子達に囲まれていると自分のそれが酷く曖昧でちっぽけな気がしてやっぱり虚しい。
やっぱり馬鹿過ぎると一回りして怒る気も何処かに消えるのだと思う。
見れば七も何処となく虚ろというかやる気が無いというか。
周りの気迫だけ空回りして私だけ置いてけぼりにされた気分。
でも、皆も私が何か言うのを今か今かと待っている。なら、やることはやらなきゃね。
「ねえ、河童。貴女は番の男、居たのかしら?」
訊ねると、これでもかと首を縦に振った。
一回りして呆れてしまう。けど、これで素敵なことを出来るわね。
「じゃあ、一つ機会をあげるわ」
周りがどよめき河童が息を呑んだ。
「番が居たってことは、貞操の方はやっぱり守りたいのよね」
優しい声色で訊ねると、河童は縋るように首を縦に振った。
その素直さというか愚かさというかに内心失笑する。
「じゃあこうしましょう。貴女がお尻で達しなければ今後一切陵辱はさせないであげる。面白いでしょ? 尻子玉を抜くのが仕事の河童がお尻に一番大事なものを賭けるの。
皆は頑張ってお尻で河童をイかせれば、死ななきゃ何をしても許される権利をあげるわ。犯しても、達磨にしても、孕ませても、厠代わりに使っても、何してもいいわよ。
ふふっ、我ながら素敵な遊戯ね。制限時間は今から一刻くらいかしら」
勿論、河童に勝算なんてない。
数十体掛りで辱められれば生理反応で達するし、尻子玉を抜く河童は何の因果か天性的に尻が弱い。
一刻も攻められれば容易に達する。八百長試合も良いところだ。
何も愉快でも素敵でも無い。もうこの場に居るだけでどろどろと渦巻く不快な感情が爆発しそうだった。
「じゃあ、頑張ってね」
くるり、背を向けた。
獣欲の叫びと悲痛な唸りが、私の背中に届いた。
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そして壊された二匹に、夜明けは訪れない。
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「何だか……嫌な気分だわ」
私は酷く醒めてしまった。
これも奴の所為だと思った。奴って、勿論大枝だ。
ぼやきながら宮を歩く。
洞窟から発展させた作りだけれど、これはかなり凄いと思う。
多少じめじめするのは許容範囲。曲がりなりにも百を超える多所帯なのだから普通はもっと問題が起こる筈。
身体のカタチも思考も違う寄せ集めだし。
それを、住み分けと鬼というそれだけで卑怯な有利性に実績を組み合わせて纏め上げている。
指揮、鼓舞するのは大枝。切り込み隊長が星熊。伊吹は……便利な副官って立ち位置かしら。
ともかく鬼が三匹も群れてるのが先ずおかしい。個体数が少ないし私だって同族なんて数体しか今まであった事無かったのに。
それが同じ所でハレムを形成しながら群れとしてある。
そんなトンデモ連中、噂を聞いただけで近づく気無かったし近づきたくも無かったのに……何の因縁があったのかしら。
「仲間として魔窟に迎えられるなんて、ねぇ」
一番の問題はそれも良しとしつつある私が居ることなんだけど。
今思えば、朦朧としてた中で私を抱きとめたのは確実に大枝のだった。
声が聞こえて、包まれて。
瞬間私は思ってしまっていた。ずっとこのままで居たい、って。
安らいで、安心して、身を任せてしまいたくなって。
そして、雌の部分が疼いた。
生まれて初めて雄を意識したんだわ、冷静な部分がそう答える。
お山で目が覚めて、大枝の体温と汗の匂いを感じて、頭の中まで痺れてしまった。
とんでもない重症だ。というか大枝のがとんでもない。あんな些細なことで私に意識させるなんてとんでもない。
とんでもない、本当、とんでもないやつ。
だからなんと無く、あの河童に私は同情した。
非道なお遊びで言い渡したつもりだけど、それで好きな男だけを受け入れる場所のままで在れたらあの娘も、って思わなかったと言えば嘘になる。
弱い者を導きたいと思ったことはあるけど、こんな同情からの情けなんて初めてで。
やっぱりこれも大枝の所為ね。
大枝は私を気付かない内に改造してる。ふざけるなと怒鳴ってやろうかとも思ったけど普通に筋違いだし、何よりそれを嫌だなんて私がちっとも思って無い。
本当にどうしたらいいのかしら。
「……たし、ちょっと見てくる」
「ん。勝手にしやがれ、ばか」
ふと鬼娘たちの声が聞こえた。
なにやら星熊が若干むくれている様で、一度小さくぺこりとしてから伊吹がとてとてと駆けだした。
……どうしたのかしら。
あの伊吹の後をつけるのも悪い様な気がして、私はそのまま星熊のの横に座った。
伊吹が座っていた所為か、石肌がやんわり温い。
「気分のいい晩酌、とは成らなかったみたいね」
「……うるせ、華扇にゃあ関係ないんだ。ほっとけ」
一瞬だけ視線を向けると、星熊は不機嫌さを隠そうともせず余所を向いてしまった。
「ずいぶんなご挨拶ね」
「……」
「そういうの、らしくないわよ」
「……」
どうやら無視を決め込んだらしい。視線を合わせようともしない。
……仕方ないわね。
「大枝、盗られちゃった?」
「な、はあっ!? い、いいいきなり何言ってんのさ!」
耳元で囁くと露骨な反応。なんて素直で正直(苦笑)なのかしら。
どことなく微笑ましげな視線を向けている自分を感じながら言葉と身ぶり手ぶりで自爆を繰り返す星熊を眺めた。
「べ、別にあたしはそう言うの気にしてる訳じゃあ無くてだなっ! た、唯単純に伊吹のの方が付き合いも長いからその方が大枝のも気分悪い時には楽かなって思っただけだ
し! 別に悔しいとか自分ももっととかそんな事はっ」
「思って無い?」
「……お、思って……な…っ……」
「本当に?」
「…………思って、ます。はい」
なんだろ、可愛いのねこの鬼。
しゅんとなって、さっきまでの威勢はどこへやら、膝を抱えて小さく座りこんでしまった。
少しいぢめたくなった私の心理は至って正常な反応をしたんだなと思う。
「つまり、二人で酒を呑んでいたのにも関わらずどちらも大枝が気になって心ここに有らずな感じなっちゃって、でも星熊はなんとなく気恥ずかしかったりでその事を言い出
せない内に真っ直ぐにそれを言われてしまって何だか後から言うのは便乗するみたいで情けない気がして行きたくて仕方ないのに意地張っちゃって今此処でふてくされてる訳
ね」
「……お前、実は見てただろ」
「まさか。鬼ならだれでもそれくらい状況から分かるわよ。うじうじしてるとことか、不機嫌で私に八つ当たったとことか、それに色事には妙に奥手な星熊の性格とか纏めて
考えればね」
「容赦ねえよ……華扇は。あたしの傷抉って楽しいか?」
「凄く」
「……もういい」
がくりとうなだれてしまった。少し苛め過ぎたかしら。実際今私満面の笑みしてるだろうからなおさらね……。
「まあまあ、落ち込んでも良い事無いわよ」
「半分はお前の所為だ」
「じゃあ残り半分を解消しちゃいましょうよ」
「……どうやってさ?」
目を細め疑わしそうに私を見つめる星熊。
それに私は胸を張って答えた。
「今からでも突撃すればいいじゃない。『ごめん……来ちゃった……』的な最高の状況なのよ」
「……ヤダよ、そんなみっともない」
「馬鹿ね、見栄なんて捨てちゃいなさいよ。そんなんだから星熊は燻ぶったまま伊吹に差ばかりつけられるのよ」
自信なさげに呟く。視線を逸らしている辺りだめだめね。
恋は戦争ってこと知らないのかしら。
「うぐっ、で、でも」
「でももクソも無いわ。此処で動かないでいつ動くの!」
「今は伊吹のが行ってるし、それじゃなんだか悪いし……」
「遠慮なんて捨てなさいよ! あのねえ、そうやってる限り絶対に大枝は振り向かないわよ」
「確かに……」
ようやっと動く気になったのか、もじもじしていた態度を振り払い星熊は立ちあがった。
世話が焼ける、なんて思ったことは言わないでおきましょう。
「よっし、じゃあ行くか。あ、華扇は?」
「勿論行くわよ。何よりおもし……大枝がどうしてるかも気になるし」
「おい今面白そうって言いかけたよな。それが主だろお前」
「~♪」
「口笛じゃ誤魔化せんぞ」
「ささ、早く行きましょう。時は金なり善は急げ、よ!」
別に嘘は言ってないものね。それに大枝がどうしているか、夜這いにどんな反応見せているかって凄く興味をそそられる事に違いは無いし。
まあ半分は野次馬根性だけれどもね。それはほいほい口車に乗った星熊に責任転嫁。
そんな内心を知ってか知らずか、私はじとりと目を細める星熊の白い視線を背に受けながら歩いた。
その足音がそわそわとばらついていた様に聞こえたのは、絶対私の聞き間違えじゃ無い。
**
「……あ…………っん……」
暫く歩いて大枝の部屋に近づくと、聞こえてきたのは何だか心無し艶っぽい気のする小さな声。
「……やっぱ戻る?」
「いや、寧ろ見るべきだろ」
連れて来ておいてなんだけど、止めといた方が良かったかしら。
別に私は邪魔したい訳じゃ無かったし……。
何だか星熊は変に熱いというか意地張ってる気分になってるっぽいし。
あー、後が怖いわね。変なとこで悪印象持たれたくないし。いや、こんなこと嗾けた私が言えることじゃないのだけれど。
「戻った方がいいんじゃないの? 言い出しがこんな事言うのもあれだけど」
「うるせっ、女に二言は無いっ」
「……分かったわ。私知らないわよ?」
いろんな意味で。
「なんだよ、華扇は怖気づいたのかよ」
「む、怖気づいてなんて無いわよ」
「じゃあいいだろ。何か問題があんのかよ」
あ、私まで乗せられちゃった。私って本当バカ。
「好奇心は猫をも殺すってな。いたずら半分で嗾けた罰だ、最後まで付き合ってもらうぞ」
意外と星熊は冷静に言葉を吟味してた様ね。
それとも私の表情に出てちゃってたかしら……。
「表情だな」
「……ありがと、よーく理解できたわ。はあ……こうなれば死なば諸共って奴ね」
表情で簡単に読める鬼なんて何だかみっともないわね。
なんて今思っているのも星熊に気付かれてるのかしら。
「そう言う事だ。……っと、静かに」
その台詞が思考に向けたものなのか発言に向けたものなのか。
にやにやしてる辺り読めないわね……。
っと、そんなこと考えている内に、私達は大枝の部屋の前に着いていた。部屋は静かでさっきの様なほろ甘い声は聞こえないけど、偶に小さな水音が聞こえた。
何となく頬が紅潮してるわね。緊張と羞恥が混ざって夢見心地に近いふわふわした気分がする。
みると星熊はもっと酷かった。耳たぶまで真っ赤だ。どれだけ初心なのかしら……。まさか処女だったりするとか……? まさか、ねぇ?
「そー……っと、よ。そーっと」
「そー……う、うわぁ……っ!」
「随分とねちっこく接吻してるのね……。衣が涎でべとべとじゃない。って、何顔手で覆ってるのよ」
手のひらで顔を覆って隠す星熊の。勿論指の隙間からばっちり見ているけど。
「ちがうちがう、あれあれ。知ってはいたけど……改めて見ると……ごくり」
「……あ、あー。なるほどねぇ……」
指差す先には、大きくそそり立ったナニがあった。
……というか本当にデカいのね。服の上からしか見えないけど、あの盛り上がり方はちょっと……、ってくらいね。
というかアレ、伊吹に入らないでしょ。裂ける裂ける! 物理的に裂けちゃう! って感じ。
でも……。
「でもあれ、あたしなら、ごくり……」
「でもアレ私、なら、ごくり……」
あっ。
「華扇、お前もなのか……」
「あ、いや、つい、ね?」
「ちょっと向こうでゆっくり話し合おうか」
「え、ちょ、私もうちょっと見てたいんだけど……」
「だが断る」
それを最後にずるずると私は襟首を掴まれ引き摺られていった。
失言って怖いわね……。凄く後ろ髪引かれる思いの中、敢てこの後のことは考えないようにしながら私は引き摺られていった。
あー、濡れ場が遠ざかるー。なんてはしたないこと想いながら引き摺られていった。
**
「……やっと騒がしいのが行ったね」
「そうだな」
耳を澄ましながら遠ざかる足音に引き摺られる音を聞く。
そうやって腕の中の小さな伊吹のと一緒に一つ苦笑い。
すると、ぼくは何だか無性に不安になって、伊吹のをきゅっと抱き寄せた。
「わわっ……どうしたのさ」
「わからない。だけど、こうしたい」
「……そっか」
そうして伊吹のは黙ってしまった。
ただ、目一杯伊吹のもぼくを抱きしめ返してくれた。
その気持ちがどうしようもなく嬉しくて、だからぼくは伊吹ののふわふわした髪の毛に顔を埋めた。
先のとがった人間とは違う耳を小さく甘噛みすると伊吹のは、くすぐったそうにいやいやと首を振る。
そうやって一通り戯れ、終わると、不意にその薄い胸にぼくの顔は抱きかかえられた。
薄くも柔らかいその乳は鬼らしい酒や汗の混じった臭いと一緒に、甘くてふわりとした女の匂いがした。
「……大枝の」
甘い香りにぼくがぼんやりとしていると、伊吹のの手がぼくの頭を小さく撫でた。
「だいじょうぶ。 私は、傍にいるよ」
「あ……」
その手は何処までも──懐かしくて。
「私はうらぎらないよ。大枝のの隣にこれまでも、これからも、ずっと、ずぅーっと、いるよ。
だからもう、こわくないよ。さっきのことで、不安にならなくても、大丈夫なんだよ。
凄く強い鬼だけど、凄く弱い鬼。でも、それは全部大枝のだから。
私は受け入れて、大枝のと一緒に歩くから。だから、大枝のは一人じゃ無いよ。
──私は、ここにいるよ」
「ッッ、ぅ……く」
慟哭を無理矢理かみ殺す。
零れそうになった叫びを見せるのは酷く情けない気がしたから。ぼくのちっぽけな意地だった。男だから見せたく無かった。
なのに、その小さな胸は酷く優しくて。柔らかで穏やかに甘くぼくを包む伊吹のは変わらなくて。
かみ殺した筈の衝動は小さな嗚咽に姿を変えていた。
そんな情けないぼくを、やっぱり伊吹のは変わらず包んでいた。
そうして、ややあってぼくは漸く落ち着く。ぼくは真っ先に伊吹のの表情を窺ってしまった。
言葉を聞いても、情けない姿に呆れられていたり見放されていたりしているんじゃないか、と不安がよぎる。
「ね、言ったでしょ。私はここにいるから」
伊吹のは、変わらぬ微笑みのままでそこにいた。
それは可憐で可愛らしくて美しくて妖艶で艶っぽくて温かく優しくて。
つまりは、ぼくは伊吹のを押し倒した。
その瞳には一抹の不安も恐怖も感じられなくて、それはぼくを受け入れてくれた証だと思えて。
「いいのか?」
「今更聞くのは卑怯だよ。
……きて」
言葉は、もういらなかった。
**
「ふぁあ……おはよー」
「二人とも起きていたのか」
何だかんだと在りながら疲れて丑三つ時には寝ていた所為か、妙に早起きしてしまったぼくと伊吹の。
誰もいないだろと踏んで広間へと出たのだが、その予想はあっさりと外れた様だ。
「……なんか伊吹の、つやつやしてね?」
「これは、朝チュンしたっぽいし本番もやっちゃった感じかしら」
しかし一晩で星熊のがやつれた様に見えるのは気のせいだろうか。
一晩寝ても疲れが取れないのならばかなり拙いと思うが……。
反対に華扇は妙に元気溢れている感じで、こう落ち着きの無いそわそわが良く見られるような。
「星熊の、大丈夫か?」
「……大枝のに言われると二重の意味で大丈夫じゃねえよばか」
どうやら虫の居所が宜しく無いらしい。
「華扇は反対に元気そうだが……。何かあったのか?」
「そうね、情交って素晴らしいと思ったわ」
「そうか、それは良かったな」
「……それ態と言ってるの?」
「何のことだ?」
首を傾げたら叩かれた。何故だ。
どうにもぼくには不可解な何かが彼女達の間で起きているらしい。
妙に勝ち誇った様な表情を伊吹のがさっきから浮かべているのもそのせいだろうか。
「ふっふーん。あー、世界が変わるねぇ」
「……あら? 伊吹の、まだ貫通して無いじゃない」
「ふぇっ!? ど、どどどうしてそれがっ!?」
「カマかけたら見事に一本釣り出来たわね。だってさ、星熊。良かったわね」
「……ぷっ。そうかそうか、あれだけ雰囲気も場も整ってたのにそうかそうか、いやあ、残念だったねぇ」
「うぐっ!? べ、別に、そんなこといわれても悔しくないし、やむを得ない事情があるだけだし!」
「とかいってー。誤魔化そうったって、あたしには分かっちゃうんだよなぁ、たとえばー、そのちっちゃな身体とかぁ」
「う、うるせーっ! そ、そんなこと別にっ」
「で、大枝。実際のとこ挿れなかった理由ってなあに?」
騒ぐ伊吹のと星熊のを置いといて、華扇は妙に近い距離感でぼくの横へ来た。
悪い気はしないがなんだか座りが悪い。ぼくは早口で質問に答えて誤魔化す事にした。
「伊吹のに無理に挿れても裂けるだけだ。それじゃあ伊吹のは気持ち良くなれない。伊吹のも気持ち良く成らなきゃ意味が無いと思ったからだ」
「まあ。茶化すつもりが予想外に紳士的で驚いたわ」
「わー! わーっ! そ、そんなこと人に言うなよぉ! てか華扇、手前なんでちゃっかり大枝のに寄り添ってんのさ!」
「そうだ華扇! 手前結局そう来るのか! 裏切りだぁっ!」
「良いじゃない別に、それに昨夜は乱暴な星熊のあんなのやこんなのも受け止めてあげたんだから」
「……うわぁ。そういうのだったんだ星熊のって……あ、ちょっと近寄らないでください」
「あらまあ、くすくす」
「まあ個人の自由だし。ぼくはとやかく言わないが」
なんと言って良いのか分からないにも程がある。
と、星熊のがぼくたちの反応に頭を振って抗議して来た。
「皆酷っ!? なんだよあたしだけ損な役回りかよ!」
「諦めたら?」
「宿命よね」
淡々とした突き放す言葉にがくりと膝を突く星熊の。いやそこでそんな頼る様な目をされても……。
「犯すなら同意を得てからにしてくれ。さすればぼくは何も言わない」
「それすげえ色々最低だよっ!?」
「なるほど、既に相手は決まっていたのか? ややか? 真白か?」
「ややっ、呼ばれた気がしました!」
「ふぇぇ……死地に平然と飛び込むややが信じられないよお」
「呼んどらんわ帰れェっ!!」
なんだか混沌として来たなぁ……。
遠い目をしてふと見ると、伊吹のも華扇も妙に悟った様な顔をしていた。
なんだこれ。
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『十一月十日 快晴』
雨に討たれた所為か奴が本格的に体調を崩しました。これから病猫鬼の本領発揮です。
尤も、私に出来ることは殆どないのですが。
今朝から伊吹様がもう目も当てられないくらいでれでれで星熊様が世界の終わりで茨木様が青紫に腫れたお饅頭になったと思ったら茨木様と大枝様の距離も何だか近づいて
いる気がします。
そりゃあ同じ格のどちらも雄や雌として優れた存在が一緒に居れば当然の帰結だとは思いますし、危機を颯爽と救って頂いたらイロイロきゅんきゅんなっちゃうでしょうけ
ど……。
他の皆は当然の帰結だと既に慣れちゃってますが、私は……はぁ。
なんで私の身体は天狗なのでしょうか。なんだか最近嫉妬してばかりです。嫌な女になりたくないので気持ちを切り替えましょう、うん。
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次投稿出来るのかしら(迫真)




