4.デルフィニウム 「気まぐれ」
今回はいつもよりは少し長めかもです(●><)
でも、大体3000文字くらいなので、そんなに長くはない…はず!!( ̄  ̄;)w
良かったら読んでってください(*´∀`*)
桃色のデルフィニウム
君みたいな花
手をのばしても、どんなに焦がれても、僕をあざ笑うかのようにふわりと逃げてしまう。
それでも、嫌いになんてなれやしない。
結局は僕は君に夢中なわけで
あぁ
君は
なんて
残酷で、気まぐれで
それなのに、…
……
赤色の光がじんわりとカーテンの隙間から染み込んでくる。
カーテンを右にひっぱると、昨日拭いたばかりの窓から、綺麗な夕焼けが覗いた。
暗い部屋がやんわりとした赤に染まる。
先ほどまで降っていた雨のせいか、窓伝いに雫が下りていく。
その様をぼんやりと見つめていれば、近くに置いておいた携帯から最近流行っているドラマの主題歌が聞こえてきた。
手をのばし、携帯を開けば、画面に夕日が反射してキラリと赤く光る。
ベットに横になったまま、僕はメールボックスを開いた。
『今、暇?』
君だった。
微かな喜びが心に広がって、返信ボタンを押した。
いつもより早く指が動いていく。
『うん』
――――送信。
“送信完了”の文字を確認してから、携帯を閉じて、左手に握る。
一息吐く間もなく、また携帯から音楽が流れた。
急いで携帯を開く。
『じゃぁ恋話しよー』
まただ。
きっと、彼女は僕の気持ちに気づいている。
まだ、好きな人は言っていないけど、彼女に言ってしまうのもきっとそう遠くはないだろう。
『いいよ』
また送信を押した。
彼女とは、ずっと友達以上友達以上恋人未満の関係がずるずると続いている。
この中途半端な関係を終わらせたい反面、居心地のいい関係に安堵している自分がいるのも確かで。
そんな事を考えている内に携帯が鳴った。
『あのね、気になる人できたんだ』
えっ
彼女とは今までたくさんこういう話をしたいたけど、彼女本人が気になる人ができた事はなかった。
高揚感がふつふつとわいてくる。
赤く反射しているボタンの上を指が走る。
『誰?気になる』
送信しても、まだ胸は高鳴っていた。
ひょっとして、自分だろうか。
彼女と一番仲良いのは僕だし、他の男子と彼女が特別仲良くしているのはあまり見かけない。
前に、他の友達に、「お前らって付き合ってるの?」と聞かれた事だってある。
しかし、男子とはあまり親しくはないものの、彼女の事が可愛いだの気になるのだの聞いた事は結構あるわけで、油断はならないかもしれない。
…考えていると、携帯が鳴った。
慌てて画面を見る。
『秘密(笑)
でも、すぐバレちゃうと思う。』
すぐに自分だと確信した。
急いで返信する。
『じゃあ、僕の好きな人も教えるから教えて』
両想いだという自信はあった。
『いいよ、誰?』
すぐに彼女からメールがくる。
僕は彼女の名前を打って、送信した。
『幸田朱里』
送信ボタンを押した。
少しだけ、指が震えているのがおかしくてちょっとだけ笑う。
…近い内に告白するとは思っていたけど、こんなにも早く告白する事になるとは思わなかった。
落ち着かない鼓動、彼女から返信がくるまでの時間が妙に長く感じる。
両手に携帯を握って待ってみた。
遅いな、と思って時計を見たら、まだ1分しか経っていなかった。
まだか、まだかな
1分30秒経った。
まだ、こない。
1分45秒。
こない。
1分50秒になっても、こない。
少し不安になる。
気を紛らわす為にゴロリと回転して近くに転がっている漫画を手に取った。
それでも、チラチラと携帯を確認してしまう。
時計を見た。
もう3分経過している。
妙な不安が押し寄せる。
漫画なんて読む気になれなくて、どっかに放り投げた。
時計を見る。
3分17秒の経過。
そういっている間に3分18秒の経過。
祈るように携帯を握っていると、不意に聞きなれた音楽が流れてきた。
さっきまでの不安が霧散する。
受信中の画面にもどかしい気持ちが募る。
早く、早く、
画面が受信結果に切り替わる。
受信ボックスを見ると、そこには彼女の名前の変わりに、おなじみの会社のメアドが載っていた。
何だ…、宣伝メールか…。
がっかりして、また携帯を閉じた。
普段なら、1分でくる彼女からのメールが、今はもう5分も経過している。
不安がまた募り始めた。
……
彼女からメールきたのは、それから2時間後だった。
夕飯を食べ終え、まだかまだかと携帯を確認していると、着メロが鳴ったのだ。
急いで開いたが、先ほどの様に会社などからの宣伝メールかもしれないと覚悟しながら待っていた。
受信ボックスに彼女の名前が出た時は感動した。
『返信遅くなってごめん><
電源切れちゃって、充電してる間に、夕飯食べにいく事になっちゃって』
語尾には土下座を繰り返すサラリーマンの絵文字がついていた。
そこから空白が続いている。
画面を下に下に下げていくと、また文が見つかった。
『私の気になってる人も、坂本だよ』
それは、僕の名前。
不安が募っていた分、喜びは大きかった。
目の前が急速に晴れやかに広がっていく。
さっきまで暗くみえていた部屋が妙に明るく感じられた。
重くなっていた気持ちが、ふっと軽くなるのを実感する。
急いで、返信ボタンを押した。
『ほんとに!!じゃあ、付き合おうよ』
すぐに返信がきた。
答えは一つしかないはずだ、そう思っていたのに、違かった。
『でも、まだ気になってるだけだから、付き合うのは無理。』
え?
何で?
『付き合ってから好きになればいいじゃん』
『でも…何か、やっぱりまだわかんない。ごめん』
『何がわかんないの?』
『坂本の事が好きかどうか。』
『気になってるっていったじゃん』
『そうだけど、やっぱりわかんなくなってきた。ほんとに気になってるのかも、よく分かんない。こんなうちでごめん。』
『意味が分からん。どういう意味?』
『ごめん。でも、こんなうちを好きって言ってくれてありがとう。』
何でこんな文章なんだ?
これじゃあ、自分はフラれているようだ。
彼女のいいたい事が分からない。
少し、苛立つ。
『結局、僕の事どう思ってるの?』
『…わかんない』
意味が分からないのと、自分はフラれたという悲しみと、優柔不断な彼女の言動に対してのいらだちとで、胸の中がやけにモヤモヤして、携帯を閉じるとベットに投げつけた。
部屋にいるのがなぜか嫌になって、窓を開けてベランダに出る。
夕焼けは僕の気持ちとは裏腹に先ほどよりも鮮やかだった。
少しだけ湿気をはらんだ風が、顔にあたって気持ちがいい。
さっきのモヤモヤが少しだけ消えて、夕焼けを見ていると、携帯しか見えていなかった視界が広がっていく気がした。
ふと足元を見ると、この前母が買ってきたデルフィニウムという花が、僕を笑うかのように揺れていた。
―--…そういえば、この花、日本ではツバメにも例えられているんだっけな。
前に母がそんなうんちくを言っているのを思い出して、まるで彼女のような花だと思った。
思わせぶりな事を言ったりするくせに、肝心な所でするりと逃げていく。
それでも愛されるのだから、羨ましいものだ。
そう思いながら苦笑を漏らした。
自分も好いてる1人だというのに、こんな事をいうのも滑稽な気がして。
……
…部屋に戻ってまた携帯を開いてみた。
受信メールが一件。
『ごめんね、怒った?嫌いになんないでー><』
…こんな事を言われてしまったら嫌いになれるわけないのに。
『大丈夫、幸田の気持ちが整理できるまで、待つから。』
送信中の画面を見ながら、自分は自分で思っているよりも彼女の事が好きなのかもしれない、と少しだけ思った。
気まぐれに気持ちが変わってしまう君でも、やっぱり好きだから、僕は待つ事にしよう。
窓を閉めて、またベットに寝っ転がった。
六月の風に、デルフィニムが淡く揺れているのを見てまた苦笑した。
……
桃色のデルフィニウム
君みたいな花
手をのばしても、どんなに焦がれても、僕をあざ笑うかのようにふわりと逃げてしまう。
それでも、嫌いになんてなれやしない。
結局は僕は君に夢中なわけで
あぁ
君は
なんて
残酷で、気まぐれで
それなのに、
やっぱり僕は君が好きだ。
ここまで読んでいって下さり、ありがとうございましたっ