1.1
「はい笑ってー。ほら、顔」
母はそう言いながら、僕を立て看板の隣に立たせて写真を撮る。
本当はこんなことしたくないんだが、と思いながらも何も言えずただピースをして耐える。終わるとそそくさと看板を離れ、意味もなくスマホを見る。午前九時過ぎだった。充分間に合う。
今日は高校の入学式。ここへは親の転勤の関係で引っ越してきた。以前までの自分だったら友達と離れたくない、と悲しんでいたが、転勤はこれで三回目なので大体こういうもんか、と慣れてきた。
下駄箱前に張り出されているクラス分けの紙の中にある自分の名前を見つけて、教室へ行く。一年二組だった。親と別れを告げ、階段を上り、教室に着いた。階段からすぐだから遅刻ギリギリの自分にとってはいいクラスだな、と思いつつ扉を開けると中にもうすでにいた二十人くらいが一斉にこっちを見た。同じ中学や地元の友達と話す者、緊張してただスマホを触っているだけの者、全員が僕を探るように見てきた。
黒板に貼ってある座席表を見る。一番端の列なのは良かったが、前から二番目だった。かばんを机にひっかけて一段落つこうとしたとき、先生らしき人が教室に入ってきた。
「あと十分くらいしたら体育館に移動して入学式始めるので、皆さん体育館シューズと必要な人は水筒を持ってきてください。」
それを聞いてみんな席について準備を始めた。それから五分もたたずに残りの人も全員来たので、再度先生の指示の元、体育館に移動した。




