第8話 誠実の行商人
ローレンはアハハと快活に笑った。
「ところでお前たち、ここから先へは行くのかい?だったら手形が無いと困るだろう。俺が保証人となってやるから、一緒に役所に取りに行くってのはどうだ?」
「まぁ、あなたはなんて親切なの!」
リーナが感嘆の声を上げた。
「ふふふ、さっきも言ったろう。親切は商売につながるんだ。そうだな……『みすぼらしい老人に親切をしたら、その老人が実は大富豪で、後に大層なお礼を貰った』って話を知ってるだろう?親切は巡り巡って自分に帰ってくるんだ。世の中ってのは、そういうふうにできてるんだぜ。」
ローレンはいたずらっぽく二人にウィンクした。
「なんて素敵な考えなの……」
リーナはうっとりとつぶやいた。
サトリは少し不機嫌そうにローレンを見つめながら言った。
「でも、その話って、おとぎ話だよね。」
「そうさ。同業の連中もそう言う。でもな、坊主——長いこと商売をしていると、そういうことに何度も出くわすもんだ。商売は縁とタイミングがすべてなんだよ。覚えておくといい。」
「あなたって、誠実なのね!」
「あはは!『誠実の行商人ローレン』とは俺のことさ!」
ローレンは腹を抱えて豪快に笑った。
「ところで、お前たちはどこから来た?どこへ行くつもりだ?」
出会ったばかりの行商人に旅の目的を明かしてよいかどうか、サトリが思案しようとした瞬間——
「私たち、ノーマンズランドを目指してるの!」
リーナが即答した。
「リーナ!」
サトリが咎める。しかし、リーナは意に介さず続けた。
「ニンフを助けに行くのよ!」
サトリは天を仰いだ。ローレンは目を皿のようにしてリーナの言葉を聞いていたが、突然、にやりと笑い、こう言った。
「面白い話じゃないか。どうだい?役所に行く前に、宿屋でゆっくり詳しい話を聞かせてくれないか?」




