第7話 行商人ローレン
口論がエスカレートしていた門番とリーナ、それを見守るやじ馬たち。サトリも声の方を振り返った。そこには、荷馬車の御者台に座り、ニコニコと温和な表情でこちらを見ている男がいた。
「おいおい、はぐれちゃダメじゃないか。都会は広いんだから探すのに苦労したぞ。さあ、荷台に戻りな。」
優しい声だったが、どこか凛とした威厳が感じられた。サトリとリーナは戸惑いながらも、その指示に従う。二人が荷台に乗り込むのを確認すると、男は門番に話しかけた。
「迷惑をかけて悪いな。この子たちは俺の連れなんだ。すまんが、一緒に通してもらえないか?」
「おお、ローレンじゃないか! しばらく見なかったが、今度はどこで商売してたんだ?」
「ああ、東の方にな。珍しい品を仕入れてきたんだ。今度また見てくれよ。」
「おう、お前は律義な商売をするから信用できる。お前の連れってんなら、まあ通してやるか。」
門番は少し考えた後、手を振って見送りの合図をした。ローレンはゆっくりと馬車を進める。やじ馬たちは徐々に散っていき、検問所はいつもの落ち着きを取り戻した。
サトリとリーナは門番に軽く礼をしてから、御者台へ駆け寄る。
「あなたは誰? どうして私たちを助けてくれたの?」
珍しく遠慮がちに尋ねるリーナ。ローレンは笑みを含んだ声で答えた。
「俺はローレン、行商人さ。お前たちが困ってるようだったからな。助けたのが迷惑だったか?」
「そんなことないわ!」リーナは勢いよく首を振る。
サトリは腕を組み、何か言いたげだったが、表情を押し隠していた。
そんな二人の様子を微笑ましく見つめながら、ローレンは言った。
「お前たち、知ってるか? 親切ってのは、立派な商売になるんだぜ!」




